24話 ミリアの社交会編2
王宮の中央にある広々としたホール。
王族と最上位の爵位である侯爵の人間しか参加しないような社交会のため、人はそれほど多くはいない。
しかし、それ以上にテーブルには高そうな食事や飲み物が用意されている。
厳重な警備体制で不審者がイチミリも入るようなことは決してできないだろう。
シャルネラ様と、なぜかアルバス伯爵まで会場にいたため、声をかけようかと思った。
だが、その前にとんでもない大物から声をかけられてしまうのだった。
「おぉ、レオンハルト君の隣にいるということは、そなたがミリアさんか。アエルがいつも世話になっているな」
「おおおおおはつにお目にかかりますすす!! ミリアと申します。国王陛下自らご挨拶に来ていただけるとは……」
「あまり固くならずとも良い。そなたのおかげで飢えていた民がどれだけ救われたことか。当然その影響で王都自体も前より活気的になってきている」
「そ、そこまでのことをしたとは思っていませんが……」
話し相手が国王陛下ともなると、さすがに緊張してしまう。
しかし、国王陛下はニコリと微笑む。そのおかげで、少しだけ私は落ち着くことができた。
「詳細としては働きたくとも働けなかった者たちが、仕事を手に入れ王都に貢献するようになった。餓死してしまう者も減ったな。食べ物は大事にしなければいかぬなと勉強させてもらえたよ」
「これは全てアエル様のひらめきのおかげですよ」
「だが、そもそもの知恵を見せたのは君だろう。ミリアさんには感謝の意も込めてこうやって招待させてもらった」
「あ、ありがとうございます」
国王陛下ともなれば威厳のあるお方かと思っていたが、むしろ気さくに話しかけてくださり、緊張も幾分ほぐれた。
まさか国王陛下からお褒めの言葉をいただいてしまうなんて考えもしなかった。
横でレオンハルト様も満足しているような表情をしている。
「ミリアさんの情報は幾分国にも伝わっている。アルバス伯爵邸では大変な日々を送っていたようだな」
「やはり、それで陛下はあの者たちも招待したのですな?」
「レオンハルトはすぐ気がついたか。うむ。アルバス伯爵ならびにシャルネラ侯爵令嬢にはそれ相応の罰を与えねばなるまい。アエルにもひどい扱いをしていたようだから当然だがな」
アエル王女までシャルネラ様のスパルタ教育を受けていたのか。
公爵邸で修行を始めたことで気がついたけれど、シャルネラ様の教え方はかなり厳しく、よろしくないのではと思うようになった。
だから、国王陛下が罰と言ったことに違和感はなかったのである。
私のように鈍感な使用人がシャルネラ様の元で働いたら、きっと大変なことになるだろう。
その前に国王陛下はなんらかの手を打とうとしているのではないか。
「見てみよ彼女らの幸せそうな表情を……。これからなにが起こるかも知らずに笑顔を浮かべておる」
「なにをされるおつもりなのです?」
「ダンス披露宴のあと、最後に私自らが制裁を加える」
先ほどまでのにこやかな表情はどこへいったのやら。
国王陛下の威厳というよりも、怒り? どちらかは微妙なところだが、とにかく恐ろしい。
これはタダでは済みそうにない。
しかも、向こうもこちらに気がついたようで、シャルネラ様は笑顔でこちらへ向かってきた。
「私は一旦失礼する。ミリアさんとレオンハルトに良き一日を」
国王陛下がいちもくさんにこの場から去り、シャルネラ様との接触を避けることができた。
しかし、シャルネラ様はお構いなしに私たちの目の前にやってきたのである。




