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19話 ミリアのドレスを作る

「私、いったいなにを貢献したのでしょう?」

「廃棄品の有効活用だ」

「全く心当たりもありませんが」

「先日、余った食材を使って料理をしてアエルに食べさせただろう?」

「はい」

「アエルがそこでピンときたようでな。貴族界隈などで余らせて捨ててしまうような食材を全て集め、王宮の調理師に作らせてだな。その出来上がった料理を飢えに苦しんでいる貧民街の者たちや貧民層の民たちへ提供するようになったのだよ」


 言われてみれば、私が作ったあまりもので作った料理をアエル王女が興味深く見てくれていた。

 すごく良い有効活用するひらめきをアエル王女はするなぁと尊敬する。

 だとしたら、やはり私がドレスショップへ足を運ぶのはおかしい気がした。


「アエル様のアイディアですから、私でなく彼女がここへ来るべきでは?」

「ミリアの料理方法をアエルが見ていなければ今回の案はなかった。ゆえに、ミリアのおかげでもある。国を管理している者として本当に感謝している」

「あ、ありがとうございます……」


 うーん、まだ実感がわかない。


「ミリアには具体的にどうなったか言ったほうが良さそうだな。まず、貧民街の餓死者が激減している。職につけなかった民たちは栄養を取り入れたことによって再び仕事に復帰できるものも出てきた。ゆえに、王都全体の活気が上がってきているのだよ」

「知りませんでした……」

「この功績を称え、ミリアに次の社交会への特別招待が来ている。私の伯父、国王陛下から直々の招待だ。ドレスショップでミリアにピッタリのドレスを新調したいのだよ」


 話がおおごとになっていた。

 次の社交会ってたしか侯爵以上だけで集まる最も品位の高いもので、王宮で行われるやつだ。

 もちろん、私は一度も参加したことはない。


「さぁ、中に入りたまえ」

「は、はい」


 レオンハルト様が当たりまえのように手を差し出してきた。

 無意識にそのまま左手を彼に預ける。


 その瞬間、私の心拍数は大変なことになってしまった。


 ♢


 ドレスショップの中は、何人もの警備兵がいて、厳重警戒がされている。

 警備兵たちはレオンハルト様の顔を見ただけですぐに深々と頭を下げ、『奥の部屋へどうぞ』と言って私たちを案内してくれた。

 レオンハルト様の顔の広さを改めて実感する。


 レオンハルト様と私に深くお辞儀をしてくるのは女性店員。


「これはこれはレオンハルト公爵様。本日はどのようなごようでしょうか」

「彼女にピッタリのドレスを仕立ててほしい」

「かしこまりました」


 オーダーメイドで作っていただくようで、当然私はあるものが気になってしまう。

 キョロキョロと見回すが、それが見つからないのだ。


「どうした?」

「いえ……。あの、いくらほどするのかなと思いまして」

「金は気にすることなどない。今一番大事なことは、いかにミリアに似合うドレスを作ってもらえるか、だ」


 なんという優しい言葉をかけてくれるのだろう……。

 これ以上断ろうとすれば、むしろレオンハルト様の顔に泥を塗ってしまうような行為になりかねない。

 ここは素直に作ってもらうことにした。

 ただし、今後もっともっと公爵邸に貢献できるように頑張る!


「まずはこちらのお方の寸法を計らせていただきます。申しわけございませんが」

「あぁ、分かっている。ミリアよ、遠慮をすることなく、自分自身で良いと思えるような注文をしてくれたまえ。私はしばらく外で待っている」

「はい、ありがとうございます」


 レオンハルト様が店から出ていき、私は女性店員によってありとあらゆる身体のサイズを計測された。


「とても良い身体をしていますね。お肌も艶がありますし、元が綺麗ですからドレスを着用したら美しさがより一層増すことでしょう」

「そんなこと言っていただけたのは初めてです」

「いえいえ、お世辞ではありませんよ。ピンク色の綺麗な髪、こがね色とピンク色が混じった大きな瞳にスタイル抜群の顔立ちも胸も……。よほど毎日肌のケアなどをしていたのでしょう」


 公爵邸に来てからというもの、毎日お風呂に入ってから顔のケアを欠かさないし(やるように指示されている)、使用人たちの美容マッサージもしっかり受けている。

 アルバス伯爵邸にいたときは地味すぎだと思っていたが、こんなに変化するものなのかと自分では気がつかなかった。

 使用人さんたちが一生懸命美容に関して教えてくれたおかげである。

 褒められるのは嬉しいが、それよりも使用人たちに感謝したい。


「髪色が綺麗で目立ちますからね。お顔の良さを際立たせるために、白もしくは青を基調とした色がよろしいかなと私個人としては思いますが、いかがでしょうか」

「むしろ、お任せしても良いでしょうか? 私はドレスのセンスはありませんし、プロに任せたほうが良い物が出来上がりそうな気がします」

「嬉しいお言葉をありがとうございます。では、長年の経験を駆使してぴったりのドレスを提案いたしましょう。お客様のような綺麗なお方のドレスを作れるなんて、私自身も楽しみであります」


 女性店員がニコニコしながらそう言ってきた。

 こういうお店だったら、お任せしたとしてもわざと高額になるようなことは絶対にしないはずだ。

 信頼問題に関わってくるし。


 どのようなドレスにしてくれるのか、だんだん楽しみになってきた。

本日、『追放聖女のどろんこ農園生活 〜いつのまにか隣国を救ってしまいました』が発売されました。本屋さんに行く機会がありましたらぜひ探してみてください。

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