18話 ミリアは高級ドレスショップへ連れていかれる
「おぉ……今日の馬車はなんと煌びやかな……」
「前回は買い物だったし、あまり目立つわけにもいかなかったからな」
レオンハルト様においしい店へ連れていってもらう。
前回同様に、レオンハルト様の手を借りて馬車へ乗りこみ、出発した。
私たちが乗る馬車の前には単騎で馬に乗っている護衛が先導している。
食事へ行くだけでもこれだけのことをしているのだから、さすが公爵だと思う。
しかし、今回は私もその一人になってしまっていて良いのだろうかとも思ってしまった。
「私のためにここまでしていただきありがとうございます」
「気にするでない。むしろ、これは私、レオンハルトのためだと思ってくれて良い」
「あぁ、ご主人様も外の料理をたまには食べたいと思うことがあるのですね」
「……少々意味合いは違うが……。まぁ良い。ミリアと一度、こうやってゆっくり話ができる機会が欲しいと思っていたのだよ」
なにか使用人絡みで相談したいことでもあったのだろうか。
でも、それは執事のガイムさんやメメ様にするだろうし、私のような修行に来ている人に聞くようなことでもないはず。
だとしたら、なにを話したいのだろう。
「それにしても……」
「はい?」
「ミリアが日に日に魅力的に感じる……」
「はいっ!?」
「いや、すまぬ。ひとりごとだ」
恥ずかしさのあまり、到着するまでの間、無言が続いてしまった。
レオンハルト様は、いつもとんでもないタイミングでとんでもない発言をすることがある。
そういうところも、だんだんと好きになっているような気がしていたため、余計に恥ずかしかったのだ。
♢
「ごちそうさまでした」
「幸せそうに食べていたな」
「それはもう、満足でしたので」
食事は最高だった。
別の場所でいただくものは普段と違う味を楽しめるし、見ず知らずの作ってくれた人に感謝もしたい。
また新しいレシピもなんとなく浮かんだし、さっそく試してみたくなる。
店を出て再び馬車に乗り動きだす。
「ところで最近は、ミリアが独自に作って食べているものとやらに、調味料を使っているのか?」
「はい。ありがたく使わさせていただいております。もちろん、必要最低限にはしていますが」
「そうか。ミリアは遠慮する傾向があるから心配だったのだよ」
「いえいえ、十分すぎるほど色々なものを提供していただいていますから」
衣食住、そして美容グッズも使い放題という特典付きだ。
おかげで、私の食生活や普段着る服、さらには顔のメンテナンスまで全てが充実している。
「実のところ今日はこのあと、もう一箇所付き合って欲しい場所があるのだよ」
「あ、はい。どこへでもついていきます」
高そうなお店でたくさんのごちそうをいただいた。
しかも、全てレオンハルト様が支払いをしてくださった。
私がお花を摘みに行っているうちに……。
お礼というわけもないが、レオンハルト様が行きたいという場所にはとことん付き合うつもりだ。
だが、馬車が向かった先は……。
「ここだ」
「ここは、ドレスショップですよね。貴族界隈ご用たしの……」
「そうだよ」
あたりまえだろうといった感じで言われてしまった。
「ご主人様の服でしたら隣の紳士用のお店では?」
「いや、ここに用がある。ミリアのドレスを仕立ててもらおうと思っているからな」
「はい!?」
いやいやいやいや、それはおかしい。
この店って王都の中でも一番高いオーダーメイドのドレスショップである。
庶民の稼ぎでは入店すら断られるほどの場所で、社交界でも王族や侯爵あたりの身分の方や大富豪の貴族のみがこの店で作ったドレスを着用しているらしい。
「黙っていてすまないな。ミリアの性格から考えて、直前で言わなければ絶対にここへ来ようとはしなかっただろう?」
「それはそうですが……。そもそも、どうして私などにこの店のドレスを?」
「……今後、『私など』と自分自身を過小評価するのはやめてもらいたい。ミリアには今日まで黙っていたが、キミの知らない場所で王都に絶大な貢献をしてくれていたのだよ」
「へ!?」
そう言われてみれば、最近使用人やガイムさんからなぜか、『おめでとう』と言われていたっけ。
なんのことか聞いても流されていたが、もしかしたらこのことだったのかもしれない。
しかし、私はなにをしたのかさっぱりわからないのだ。
寝坊したので、朝の更新できませんでした。




