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15話 ミリアのやる気がさらに出る

「失礼します」


 レオンハルト様に呼び出され、執務室へ入る。

 部屋にはレオンハルト様とアエル王女、そして執事のガイムさんもいた。

 この時点で、なんの話で呼び出されたのかが概ね理解できた。


「申しわけございません」

「いきなりどうした?」

「以後、食事担当のまかないに関しても、しっかりと調味料等を使わさせていただきます」

「…………? なんの話だ?」

「へ?」


 勘違いだったらしい。

 アエル王女からのアドバイスを昨日受けたばかりで、レオンハルト様の耳にも入っていたのかと思っていた。


「今回ミリアを呼んだ件だが、アルバス伯爵邸の件だ」

「とんだ勘違いを……」

「アルバス伯爵については今も引き続き詮索をしているが、シャルネラというメイド長に関して重大な問題があることがわかった」

「そうなのですか」

「「え!?」」


 私はびっくりして聞いてしまう。

 すると、レオンハルト様とアエル王女の声がかぶった。

 信じられないと言ったような表情を浮かべていたのである。

 ガイムさんは黙ったまま表情が雲わしい。


「アエルからの情報によれば、仕事を他人に押し付け、なおかつメイド長の仕事があまりにもひどい有様だと聞いていたのだが……」

「んー……」


 私はシャルネラ様のことはどちらかと言えば嫌いである。

 使用人業務の面で、休日なし、過酷任務、給金は減給、すべて私の仕事が遅いという理由で受けた罰だった。

 働くことは好きだから、しがみつく思いでなんとかしたいとは思っていた。


 だが、公爵邸で使用人の修行を二ヶ月間やってきて、シャルネラ様は酷い指導だったのではないかと少しだけ思うようにもなってしまった。


「ミリアよ、伯爵邸ではどのような指示や仕事を任されていたのだ?」

「ここでの三倍くらいの仕事量だったかな……と」

「「「な!?」」」

「ですが、私は修行としてここへ配属されているわけですから、仕事量なども免除されているのでしょう?」


 三人揃って、唖然としているようなさまだった。

 もう二ヶ月修行させていただいているのだし、そろそろ他の使用人たちと同じくらいで働きたいと思っていたから、良い機会だろう。


「ガイムさん、できれば、これを機会に本来の仕事量を与えていただけると嬉しいなと……。私、仕事が遅いことが弱点なので、もっと作業を増やしていただいてしっかり時間どおりに終わらせられるような訓練もしたいのです」

「残念ですが、そういうわけにはいきません」


 ガイムさんはどういうわけか笑顔でそう言ってきた。


「すでに公爵邸任務と同じ仕事をミリアさんはこなしているのですよ」

「え?」

「二ヶ月間見届けたうえで、はっきりと断言しましょう。ミリアさんの仕事のペースは、全くもって遅くありません」


 絶対にありえない。そのような目でガイムさんが断言してきた。

 アエル様とレオンハルト様も、そうだと言わんばかりの顔を浮かべている。


 伯爵邸では、今まで毎日のように仕事が遅いと言われ続けてきた。

 ところが、公爵邸に来てからというもの、遅いと言われることはなくなった。

 それは仕事量が少ないからであって、決して早く仕事ができているわけではないのだと思っていた。


 だが、三人がここまで真剣に言ってくれたおかげで安心できた。


「ありがとうございます。でも、早いわけではないと思いますので、スピードも上げられるよう今までどおり修行したいと思います」

「いえいえ、今のままで良いと思いますよ。丁寧かつ正確な仕事が一番大事ですから」

「はいっ!」


 なんて優しいのだろうか。

 なんだか今までよりもさらに頑張ろうという気持ちになれた。

 早く任務に取りかかりたいな。


「ミリアよ。今の会話で伯爵邸に関して概ねのことは理解できた。そちらに関しては私に任せてもらいたいのだが」

「えぇと、なにをしていただけるのでしょうか?」

「アルバス伯爵邸に残された使用人たちのことだ。そうだな? アエル」

「シャルネラさんは使用人さんたちに対して過酷な仕事を与え、乱暴な振る舞いをしてきました。おまけにアルバス伯爵もその行いを見てみぬフリをしているというか……。アルバス伯爵に関してはまだ調べる必要はありますが」

「そういうわけだ。だから、私はすぐにでも動くつもりだ」


 アルバス伯爵邸の使用人ルールとして、お互いに関与することなく個人個人でせっせと仕事をするような仕組みだった。

 これもシャルネラ様が決めたルールである。

 その影響で、私はあの伯爵邸の使用人たちのことは顔見知り程度で、名前すらも知らないのだ。

 いったい、レオンハルト様はなにをするつもりなのだろう。


「それともう一件、これはとても大事な話だ」

「はい」

「アエルから話は聞いている。ミリアよ、本当にキミには驚かされてばかりだよ」

「ななな、なにをですか?」

「ミリアの発想した料理のおかげで、王都はおそらく改善される。私はそうとしか思えぬのだ」


 それ以上はレオンハルト様もその件に関しては喋ってこない。

 なんのことだか、私には全く理解できないままだった。

SNSの作業枠で書き立てホヤホヤの更新です。

次の更新は夜になっちゃいそうです……。

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