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14話 アエル王女のひらめき

「なるほど……。さすがは噂で聞くミリアさんですわ。そのような方法があったのですね」

「アエル様、なにかご指摘もいただけると大変ありがたいのですが……」

「ありませんね」

「えぇ?」

「私も料理に関しては五つ星のシェフから直々に習っていました。作り方に違いはあれど、なにも言えることはありませんよ。見ているだけでおいしい料理ができあがることもわかりますし」


 私のお母様の教えがこんなに評価されることは純粋に嬉しかった。

 欲を言えば、その先を勉強したかったのだが……。


「あ! でも! ひとつだけ」

「はいっ! 是非ご指南を!」

「食材の使い方が少々もったいないかなと思いました。もちろんおいしい部位や栄養価の高い部分を厳選していることはわかりますが、こちらの余った食材を廃棄してしまうのはもったいないかと……」


 アエル王女が別の皿に載せている野菜や肉を見ながらそう言ってきた。


「あ、そちらはこのあと別の料理に使うんですよ」

「え!?」

「捨てるなんてもったいないですから。捨てる部分を使ってスープや煮込み料理にしています」

「ま、まさかそれをレオハルも食べているのです?」

「いえ、こちらは私が個人で食べています。料理として提供できない部分も、料理の仕方によっては食べられますから」


 もちろんちょっとはおいしい部分だって食べたいなという気持ちはある。

 だから、ほんの少しだけ処分しなければならないような箇所におまけを付け加えているのだ。

 これで栄養も摂れるし、無駄な廃棄をしなくて済むから一石二鳥である。


 アエル王女が驚いたような目をしながら、皿に載せている食材をもう一度眺めた。


「公爵家の料理ルールは先ほど確認しましたが……。料理担当の使用人は好きなものを食べられる日だとなっていましたが、まさか……、ミリアさん。食材に気遣って自らこのような残骸物を!?」

「もったいないですからね。作ってお腹に入ればそれで良いかと」


 大きくため息をはくアエル王女。


「今日は、私はこちらのミリアさんが食べるほうも味見してみたいのですが」

「え、さすがにこれを王女様が食べるわけには……」

「どうぞその呼び方はやめてくださると……。いえ、もしかしたら私の中で新たなひらめきが生まれるかもしれませんので、是非とも食べさせて欲しいのです」

「わ、わかりました。アエル様がそうおっしゃるのならこちらも準備させていただきます」


 いったい、アエル王女はなにがひらめきそうなのだろうか。

 私には良くわからなかった。

 彼女が食べたいと言ってくれているのだから、しっかりと用意はしようと思う。

 だが、大丈夫だろうか少し心配だ。

 実のところ余った食材で料理しているものに関しては、私個人で編み出した料理であって、お母様から伝授されたものではない。

 したがって、普段用意しているものよりもクオリティが低いと思っている。

 だからこそ、アエル王女から今度こそアドバイスをいただけるのではないかとワクワクもしていた。


 ♢


「ふぅん、さすがにメインの料理と比べると味自体は劣る部分があるとは思いますが、それでもおいしいですわよ」


 メインの料理を食べていただいたあと、調理場にて余った食材で作った料理を、アエル王女に試食してもらった。

 アエル王女ははっきりと物事を言ってくださるようで、劣ったりダメだったりしたらちゃんと指摘してくれそうだ。


「おいしくするために入れるべき調味料が少ないですね」

「今日はアエル様も食べられるということで、普段よりは入れました」

「普段はもっと少ないのです?」

「調味料は高級品ですから、あまり公爵邸のものを無駄遣いしたくありませんし」

「はぁ……。最近知り合ったどこかの誰かとは全くの真逆発言を……。そこまで遠慮しなくても良いと思いますよ」


 私はあくまで修行をさせていただいている状態である。

 なるべく迷惑や負担をかけさせたくはない。

 とは言っても、しっかりと栄養価のある部分もほんの少しもらっているし、これで十分である。


「良いですか? 私は今日ここに使用人として配属されたばかりでこんなことも言うのもどうかとは思いますが……。ミリアさんは素晴らしい料理を作れる立派なおかたです。だからこそ、使うべき調味料は使いましょう」

「は、はい。良いのでしょうか」

「そんなこと聞いてくる使用人は初めてですね。少なくとも王宮にはいませんよ。ほんとうにミリアさんは謙虚すぎると言うか……」

「主人様のご負担になりませんか?」


 ただでさえ、服や仕事のメイド服、そして化粧品類やマッサージクリーム、あらゆるものを無償で使わさせていただいているのだ。


「レオハル本人の前では絶対言ってはいけませんよ。ある程度はお金も使わねばならない立場でもありますから……」


 それは知らなかった……。

 シャルネラ様から、できる限り節約するように命じられてきていた。

 食事はあまりものなどを食べる毎日だったし、掃除の雑巾なども、ボロボロになっても使い続けろと言われていた。

 だが、よくよく思い出してみると、シャルネラ様が使っている掃除道具は綺麗であったり、食事もアルバス伯爵と同じものを食べていたような……。


「申しわけございません」

「謝る必要などないですよ。ところで、ミリアさんが作られたこの余り物で作るレシピ、詳しく教えてもらいたいのです」

「全然構いませんよ。でも、アエル様が食べるのですか?」

「いえ。もっと大きなプロジェクトを思いついてしまいまして」

「へ?」

「ひょっとしたら、ミリアさんの料理のおかげで王都に住む人たちを救うことができるかもしれません」

「はい?」


 私の節約レシピで人を救う!?

 全く想像もつかない。

 アエル王女はなにをしようとしているのだろうか。


 アエル王女の笑みが、私の期待を膨らませてきた。

お昼の更新手動にしようと張り切ったら昼寝してしまい、こんな時間になっちゃいました……。

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