13話 ミリアとアエル王女
「アエル=ジュベナリーヌと申します。使用人として一人前になりたくこちらで仕えさせていただきますので、どうかよろしくお願いいたします」
アエル王女ではないか!
私は社交界のときに顔をチラッと見たことがあったが、直接お話することは初めてである。
それは私だけではないようで、使用人たち全員が緊張した表情を浮かべていた。
レオンハルト様と執事のガイムさんだけは平然としている。さすがだ。
「ふふ……、ここではどうぞ私のことは王女だと思わず、一人の使用人として接してください」
「アエルは王宮で掃除や料理を幼少期から鍛えていたのだがな、どうしてもそれ以外のところでもやりたいそうで、ここに来てもらったのだよ」
「レオハルさんのところなら大勢の使用人様がいらっしゃいますし、勉強になるかと思いまして」
アエル王女は挨拶のときから私の顔をチラチラと見てきているような気がする。
レオンハルト様の従姉妹だそうで、どことなく彼の面影もあるし顔立ちも整っている。
金髪のレオンハルト様に対し、アエル王女は銀髪の長い髪で、やはり綺麗である。
しかも、色は違えどエメラルド色の綺麗な瞳は、女の私でも魅了させられドキッとしてしまうほど可愛らしい。
さらにさらに、好奇心旺盛でとても謙虚だとも思った。
さぞ、人気が高いだろう。
挨拶が終わったころには使用人たちの緊張も幾分か解れていたようだ。
「ミリアさん、ですよね?」
「はい、ミリアです。お初にお目にかかります」
顔合わせが終わり、今日の担当である厨房へ向かおうとしたら、アエル王女様から声をかけられた。
そういえば、昨日レオンハルト様から言われていたことを思い出した。
おそらくアエル王女がスパイというお仕事をしていたのだろう。
しばらく、アエル王女は私のことを、じーーーーーーーっと頭から足元までを眺めてきた。
やがて、ニコリと微笑んだ。
「ミリアさんのことは、レオハルさんから話は伺っていました。ものすごくおいしいごはんを作るそうですね」
「全てお母様から伝授されたことをそのままやっていまして」
「素晴らしいですわ! ここへ来たら、私も一度食べてみたいと、ずっと楽しみにしていました」
アエル王女は十二歳と聞いていた。
目がキラキラと輝いていて、本当に楽しそうにしていることが分かりやすく伝わってくる。
純粋なところが可愛いなと思ってしまうし、そう言われて嬉しかった。
お母様に再び感謝したい。
「ありがとうございます! ちょうど今日は私が夕食の当番ですので、ご用意いたします」
「やったぁ。楽しみにしていますね」
アエル王女って料理が大好きで、王宮主催のパーティーのごちそうなどを準備することもあるのだと聞いたことがある。
王宮主催のイベントに出す料理を任されるくらいなのだから、相当な実力があるはずだ。
こういうとき、私の好奇心が抑えきれなくなってしまうのであった。
「アエル王女様……もし、よろしければですが……」
「私のことはアエルで良いですわよ」
「めっそうもございません。せめて、アエル様と……」
「うーん、まぁそれでも良いです」
「アエル様、料理しているところを見ていてくださいませんか?」
「え? むしろ良いのです!?」
アエル王女がワクワクしたような雰囲気を表情と身体で表現していた。
なにを考えているのかがわかりやすい。
「ご指摘いただければと思いまして」
「うーん……私がミリアさんに料理面で指摘できるとは思いませんが。でも、なにか気になったら言いますね」
「ありがとうございます!」
「私こそです。ミリアさんの作り方を参考にしたいと思っていましたので、作っている過程を間近で見られるのは好都合ですわ」
アエル王女を連れて調理場へ向かった。
アエル王女はワクワクしているようだが、それは私も同じである。
アエル王女からいっぱい教えてもらって、もっともっと上達できるようになりたい。
夜中、連載中限定の検索をしたら、総合日間ランキング1位になっていました。
ありがとうございます。




