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10話【Side前編】シャルネラの疲労

「あなたはなぜこの程度の仕事もできないのですか? 公爵家に修行へ行ったミリアさんのほうがまだマシでしたわ」

「申しわけありませんメイド長……」

「私はメイド長として他にもやらねばならない仕事があるのです。あなたたちだけで掃除くらいは終わらせてほしいものですわ」


 ミリアがいなくなったため、伯爵邸に仕えている別の使用人へターゲットを切り替えた。

 だが、ミリアのようにうまくいかず、使用人たちに与えられている仕事をこなすだけで精一杯。

 シャルネラの仕事まで手伝えるほどの余力はなかったのだ。


「今後は、もっと早く終わらせられるよう努力することです」

「はい……」


 シャルネラはやりかけの部屋を全て使用人たちに任せ、自室へと戻る。

 すっかり身体が疲れ切ってしまい、汚れたメイド服のままベッドへ身体を投げ出した。


「あぁ〜もう!! ミリアさんのマッサージがない生活は辛いわ!」


 ミリアがアルバス伯爵邸を出てから一ヶ月。

 ついにシャルネラの身体にも影響が出はじめていた。

 ミリアからのマッサージもなくなって、シャルネラが今までの活発だった動きが鈍くなってきているのだ。


「どどど……どうしましょう! 私の美貌だったお肌のスベスベ感までもがカサカサに……?」


 仕事が多忙になった。シャルネラはそう思い込んでいるが、実際には本来やらなければいけない仕事を他人任せにできなくなっただけである。


「うぅ……まだ、十一ヶ月もあるわね……。なんとかしないと……」


 途方に暮れていると、救いの手のようにアルバス伯爵がシャルネラの部屋に入ってくる。


「仕事は終わったのか?」

「え、えぇ……。少々体調が悪くてですね。使用人さんたちが手伝ってくださっています。ほんとうにここの使用人さんたちは優しいこと」

「そうか。その割には浮かない顔をしているな」

「申しわけございません……。どうしても、ミリアさんのことが気になってしまっていて」

「よほど主従関係を大事にしていたのだな。よしよし、今日は新たな使用人を連れてきた」

「あぁ……助かります」


 ミリアの穴埋めとして、アルバス伯爵はしっかりと代わりの使用人を用意しようとしていた。

 だが、あまりにもことが急だったため、なかなか新人を連れてくることができなかったのである。

 最終手段としてアルバス伯爵が用意した使用人は……。


「一ヶ月だけの期間限定だがな。さすがに向こうから声をかけてくださるとは私も想定外だったが……」

「くださる? え……? アルバス様がそこまで敬う言葉を使うということは」

「アエル=ジュベナリーヌ第三王女だ」

「な……!?」

「驚くのも無理はない。使用人が足りなくて王宮へ要請を頼もうと思っていたのだがな。どういうわけかアエル第三王女が自らやってくださると名乗り出てくださったのだ」


 シャルネラは驚いていたわけではなかった。

 王女を道具として扱うことなど、さすがのシャルネラでもできないのだ。


「アエル王女も十二歳になられる。そろそろ使用人としての嗜みを実践する時期であろう。まさか、この家に招き入れることになるとは思いもしなかったが」


 アルバス伯爵も、王女相手となると緊張していた。

 だが、伯爵ともなれば、王家の人間が練習のために使用人として働くことも珍しくはない。


 最も一番困惑していたのはシャルネラだった。

 一人の使用人が部屋を覗き込み、アルバス伯爵がいることを確認した。


「主人様。伯爵邸に客人が起こしですが」

「うむどうやらお越しくださったようだ。シャルネラはここでしばし待っておれ」

「はい」


 シャルネラはアエル王女をどう扱えば良いのか悩んでいた。

 ミリアのときのように自分の分まで任せるわけにはいかない。

 マッサージも仕事外だから頼むこともできない。

 あくまでシャルネラが抱えてしまっている負担が減ることくらいしか思いつかなかったのである。


(仕事量は少しは分散できるし、まぁ良いか……。王女様と話せる機会なんて滅多にないんだし)


 シャルネラは疲れでしばしの仮眠をとる。

 アルバス伯爵が再び戻ってくると、すぐに目を開いてベッドから立ち上がった。


「シャルネラよ、待たせたな。王女様をお迎えした。ささ、どうぞお入りください」

「お初に……どうもはじめまして。アエル=ジュベナリーヌですわ」

「お初にお目にかかります。シャ、シャルネラと申します」


 アエル王女のどこかぶっきらぼうな挨拶を受け、シャルネラは違和感を覚えた。


「アルバス伯爵様。さっそくですが使用人としてのお仕事を始めたいと思いますが」

「到着早々でございますか? 少し休まれて明日から始めていただいても結構ですよ」

「いえ、すぐにでもやらせていただきたいのです」

「さすがはアエル王女ですな。では、こちらのメイド長シャルネラの指示に従ってお願いいたします」

「えぇ」


 アエル王女は、シャルネラのほうを見た瞬間、ニヤリと微笑んだ。

 シャルネラにとって、背筋の凍りつくような嫌な予感がしていたのだった。

ここまで一気に更新していますが、しばらくハイペースで更新を続けます。(ストックないので頑張ります笑)


『追放聖女のどろんこ農園生活 〜いつのまにか隣国を救ってしまいました〜』

の発売まで残り3日となったので、こちらの作品も更新頻度を上げています。

69話目更新しましたので、こちらも読んでいただけたら嬉しいです。


引き続きよろしくお願いいたします。

(この作品、略すときになんて書けばいいのかわからなくて、困っています。使用人クビ?丁寧使用人?ミリア?)

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