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 リビングに向かって廊下を歩いていると、小百合に話しかけられた。


「ね、綾乃里さんを私の部屋に向かわせた人って誰だかわかる?」


「えっと、小百合さんのお母さんです」


「やっぱり、お母様なのね、今日帰ってくるなんて言ってなかったのに、ホント突然なんだから……」


 隣で歩く小百合を瑠璃は横目で見ていた。その表情は嬉しそうな、寂しそうな、複雑そうな表情に見えた。突然という事は、毎日帰ってるわけじゃ無いのか気になったので、瑠璃は聞いてみる事にした。


「あの、突然という事は毎日帰ってくるわけじゃないのですか?」


「ええ、帰ってくるのは月に1、2回くらいかしら。いつも仕事で忙しいからね」


「そんなに少ないのですね。それだけ少ないのは寂しいですね……」


「うん、小さい頃は寂しさもあったけど、今は慣れたから大丈夫よ。電話で話したりもするしね。それに、乙成さん達もいるからそれほど寂しくはないかな」


 話している間に、リビングの前の扉に着いた。瑠璃は自分が開けるべきなのかと迷っていると、小百合が扉を開けた。


「お母様、帰っていらしたのですね。どうして何も言ってくださらなかったのですか」


 開口一番、小百合は少し怒り気味な口調で陽子に言っていた。


「小百合、おかえりなさい。ごめんね、言わなかったのは、ちょっとしたサプライズみたいな?」


「もう、お母さんってば……それで、今日はこのまま居られるの?」


「うーん、居たい気持ちはあるんだけど、この後行かないといけないのよ」


「そっか……いつ出発するの?」


「夕ご飯は一緒にできるから、その時間までかな」


 親子の会話を小百合の側からそっと眺めていると、瑠璃は陽子と目が合った。


「そうそう、今の小百合を見た感じ問題なさそうだけど、綾乃里さんと話してみてどうだったのかしら?」


「ああ、それなら大丈夫だったよ。男性だって聞いた時は驚いたけど、近くにいても今までの様な事もなかったし」


「よかった。それを聞いてお母さんとっても安心したわ。これで、正式に決定ね! 改めて綾乃里さん、これからよろしくお願いね」


「は、はい! よろしくお願いします」


「綾乃里さん、長い時間付き合ってくれてありがとうね。詳しい事は後日中野に連絡してもらうから今日はお開きにしましょうか。中野さん、車の準備お願いしますね」


「はい、かしこまりました。では、綾乃里さん、外でお待ちしておりますね」


 そう言うと中野はリビングから出ていった。瑠璃はまだメイド服を来ていたので自分の格好を気にしていると


「綾乃里さん、着替えてもらわないといけないわね。美穂さん、お願いしますね」


「はい、かしこまりました。瑠璃ちゃん行きましょうか」


 瑠璃は別れの挨拶をして部屋から出た。乙成に付いて行き、最初に案内された部屋に入った。


「瑠璃ちゃん、お疲れさまでした。今日はありがとうね、これから一緒に働けるの楽しみにしているわ」


「はい! よろしくお願いします」


「それじゃ着替えるために服を脱ぎましょうか。私がやってもいいかしら?」


「だ、大丈夫です。自分でやってみます」


「うふふ、それじゃあ扉の向こうで待ってるから終わったら教えてね。服はその辺に置いてもらって大丈夫だから」


 そう言うと乙成は部屋を出た。瑠璃は着ていたメイド服のエプロンを外す。簡単に外すことが出来て、近くのソファーに置いた。次に服を脱ごうとしたが、どう脱げばいいか分からず戸惑っていた。このまま時間をかけて待たせすぎるのも良くないと思い、扉の向こうにいるはずの乙成に助けを求める事にした。


「あの、すみません、乙成さん、服の脱ぎ方分からないので教えてください……」


「ふふ、大丈夫よ。ここのボタンも外して、背中にあるファスナーも下ろすのよ。見えないから分かりにくいわよね。今回も私が手伝わせてもらうわね」


「はい、お願いします……」


 自分でやってみるとは言ったものの、出来なかったので手伝ってもらう事にした。瑠璃は少し恥ずかしい気持ちになりながらも、乙成が優しく答えてくれた事に嬉しさも感じていた。


「よし、これで大丈夫かな。少し丈が長かったから瑠璃ちゃんが働くときになる前に修正しておくわね」


「ありがとうございます」


「それじゃ、そろそろ行きましょうか」


 乙成に案内され、車の所まで付いて行く。車に乗る前に改めて乙成にお礼を言ってから乗り込んだ。車が発進した時に後ろを振り返ってみると、乙成が手を振っているのが見えたので、瑠璃も手を振って桜井家を後にした。


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