文化祭1
「瑠璃ちゃん、お願いしたい事があるのだけど、聞いてもらってもいいかしら?」
小百合が学校から帰ってきて、いつもの様に瑠璃は、小百合の部屋にいると、お願いしたい事があると告げられた。突然のおねがい事ということで少し困惑した表情をしつつも、どんな内容なのか確認する事にした。
「はい、内容にもよりますが、ボクに出来る事なら大丈夫ですよ」
「あのね、お願いしたい事なんだけどね、文化祭に来てほしいの」
「文化祭ですか?」
「うん、一緒に来てほしいのだけど、いいかしら?」
「文化祭ですか、はい、大丈夫ですよ」
「よかった。来週の休日にやるのだけど、その日でも大丈夫かしら?」
「え、来週にやるんですか、早いですね。休日に予定もないので、大丈夫ですよ」
瑠璃は、春の季節にやるのはめずらしいな、と思いつつ小百合がどんな事をするのか気になったので、聞いてみる事にした。
「お嬢様は文化祭でどんな事をするのですか?」
「私達はね、メイド喫茶をやるのよ」
「メイド喫茶ですか、いいですね」
瑠璃は、メイド喫茶をやると聞いて、小百合のメイド服姿を想像していた。シンプルなワンピースにエプロン姿のメイド服で奉公している様子を想像し、ニヤニヤした表情をしていた。
「んんー? 瑠璃ちゃんは、なにを想像してるのかなー?」
「あ、いえ、すみません。なにも、その、してません」
「想像した私のメイド姿はどうだった?」
「かわいかったです……あ」
「うふふ、よかったわ。実際に見れる日を楽しみにしててね」
「は、はい……」
瑠璃は、思考が見透かされていたことに恥ずかしい気持ちになり、少し俯いていた。
「それで、文化祭の事なんだけどね、参加してほしいのは、一日目だけなの。二日間開催しているのだけど、一日目は、親族や招待した人だけで、二日目は一般参加になってるから来場する人も多いのよ。本当はね、二日目も参加できたらよかったのだけど、今の私にはそこまでは出来ないかなって思ったから、無理を言って一日目だけ参加させてもらう事にしたのよ」
「そうだったんですね。でも、親族や招待した人って事は、一日目でも男性が来るのですよね? 大丈夫なんですか?」
「瑠璃ちゃんが側に居てくれたら、たぶん大丈夫だと思うの。今の私が男性と向き合う事が出来て、こうして前を向けるようになったのは、あなたがいてくれたおかげなのよ。だからね、瑠璃ちゃんが側に居てくれたら、私は大丈夫だと思ったのよ」
「ボクが側に居たら大丈夫ですか……」
瑠璃は、自分が側に居る事で役に立てている事に嬉しい気持ちになった反面、前の小百合は男性を見る事も避けていた、という事を思い出し、数は少ないとはいえ男性も多くいる文化祭に出ても大丈夫なのかと考えを巡らせていた。自分のおかげで前に向けるようになったと小百合に言われた事を思い出し、瑠璃は自分に出来る事、自分がして上げられるベストな事は、背中を押してあげる事なんだろうと思い、小百合の思いを尊重することにした。
「わかりました。ただし、一つ条件を出しても良いですか? さっきは行くと言いましたが、この条件を守ってもらわないと行けないです」
「条件? なにかしら」
「決して無理はしない事です。無理だと思ったらすぐに引き下がってください」
「わかったわ。私の事を心配してくれて、ありがとう。きっと、ううん、瑠璃ちゃんが側に居てくれたら絶対に大丈夫だって自信があるの。あの日からこんな気持ちは一度も無かったもの。……どう表現したらいいのか分からないけど、私の中にある、この初めての気持ちは、瑠璃ちゃんが居てくれたから生まれた気持ちなのよ。だからね、大丈夫よ」
それだけ信頼され、自信にも繋がっているという事で、瑠璃は力になれているんだと思うと再び嬉しい気持ちも沸いてきたが、不安に思う気持ちは完全に払拭できずにいた。
「そうそう、当日なんだけどね、瑠璃ちゃんは今着ているメイド服で参加してね」
「え? メイド服で、ですか? えっと……多くの人の前でメイド服姿でいるのは恥ずかしさもあるんですが、それよりも生徒さんよりボクが目立っちゃいませんか?」
「大丈夫よ、瑠璃ちゃんも『参加』してもらうのだから」
「えーっと、参加って見に行くってことですよね?」
「違うわよ。私と一緒にメイドをやってもらうのよ」
「え? ええ? でも、ボク学生じゃないですし、部外者ですし、さすがに先生も許可しないんじゃないですか?」
「それなら大丈夫。校長先生にも許可もらってきてるから。クラスのみんなにも瑠璃ちゃんが参加してもいいか聞いたら大丈夫だったから、あとは瑠璃ちゃんの答えを聞くだけだったのよ」
「え、校長先生だけじゃなく、クラスの人たちからも許可貰ったんですか? でも、さすがに男のボクが参加はまずいんじゃないですか?」
「それも大丈夫。校長先生にその事を言ったら、他の人に言ったら混乱を招くかもしれないから言わない方がいいと言われたから、瑠璃ちゃんが男の子だって知ってるのは校長先生だけになるけどね」
「それじゃあボクが男だって知ってるのは、校長先生だけで、他の人は知らないってことですか? えっと、お嬢様が通ってる学校は女子校ですよね? ホントに許可されたんですか?」
瑠璃は内心、この校長は大丈夫な人なのかと心底疑う気持ちが湧き上がっていた。
「うん、私が参加できるのなら許可する、と言ってくださったのよ。クラスのみんなも私が男性恐怖症だと知ってるから、私が参加できるのなら、協力すると言ってくれたの」
瑠璃は改めて小百合が男性恐怖症なのだと思い出していた。それなら今までの外部の人が参加するような行事はすべて欠席していた事になるのだ。そんな生徒が参加できるとなれば、校長が許可するのもおかしくは無いのだろうか……?
「でも、ボクが男だと知ってるのは校長先生だけなんですよね? もしボクの事がばれたらまずいんじゃないです?」
「それも裸になるような事がなければ大丈夫よ。校長先生にね、あなたの画像を見せたのだけど、校長先生も瑠璃ちゃんの事を見て、女性と間違えたからこれなら絶対にバレる心配は無いって言われたわ」
「そ、そうなんですか……」
たとえバレる心配は無いとしても、部外者の男性を学校の活動に参加させる事を許可した事に、困惑した気持ちを無くすことが出来ない瑠璃だった。
久しぶりの投稿です。
最初と最後の事だけを考えて書き始めたのですが、その中間部分をどう書こうか迷っていると遅くなりました。
今年中には終わる予定で書いていきます。




