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仕事二日目


 朝日が昇る頃、瑠璃も目が覚めた。前日に乙成がマッサージしてくれたからだろうか、すっきりとした気持ちで起きる事が出来た。今日は朝食前からメイド服を着て本館へ向かう事になる。朝の支度を済ませた瑠璃は本館へと向かった。


 朝食が終わり、各々ばらばらに行動していった。瑠璃は、前日に言われた通り三ツ泉に教えてもらう事になっていたので、三ツ泉に付いて行った。


「それでは、今日の仕事を始めましょうか」


「はい、お願いします」


「今日やる事を説明しますね。前日に乙成さんとやっていた事に似ていますが、内容は少し違っていて、3階の廊下から掃除していきます。廊下の掃除が終わり次第、3階から各部屋を掃除してきますね。そして、午後からは別館の方を掃除していきます」


「別館も掃除するのですか?」


「ええ、別館もお嬢様達が利用する事もあるので、業務時間内に掃除をするのですよ」


「それでだったのですね。てっきり本館だけかと思ってました」


「それでは早速ですが、掃除を始めましょうか」


「はい、3階の廊下からですよね」


「ええ、上からやっていくので行きましょうか……ひゃっ」


 変な声が聞こえたと思ったら三ツ泉が倒れていた。特に段差もない場所で転んでいたので、瑠璃は一瞬何が起きたか分からなくて呆然としていた。


「……あ、だ、大丈夫ですか?」


「だい……じょうぶ、です」


 そう言いながら三ツ泉は立ち上がった。そして、何事も無かったかのように歩みだし、階段を上り3階に着いた。


「さて、掃除を始めましょうか。……ちょっと待っていてくださいね」


 そう言うと三ツ泉は階段を駆け下りていき、少しして上がってきた。手には何かを持っているようだ。


「お待たせしました。今日使う道具を1階に置いてきてしまったので、持ってきました。それでは、改めて掃除を始めましょうか」


 そのまま掃除を開始して、滞りも無く午前の掃除が終わった。瑠璃は三ツ泉が転んでいた事が気になって、三ツ泉を見る事が多かったが、特に痛がる様子もなく大丈夫そうな姿に安心していた。そして、昼食が終わり、別館へと移動した。


「それでは、本館と同じようにこちらも3階から廊下の掃除をしていきましょうか。道具はここに入って――」


 ドンッ、と音がしたと思ったら三ツ泉が自分で開けた扉にぶつかっているのを瑠璃は見て少し動揺していた。


「だ、大丈夫ですか?」


「ええ、大丈夫です。慣れていますので」


 慣れているから平然としているのか、と思った瑠璃だったが、慣れているという発言に疑問を持っていた。もしかしたら三ツ泉はドジっ子なのではないかと思った。瑠璃は三ツ泉にまじめで完璧そうな印象を抱いていたので、少し親しみを持つ気持ちを持ち始めていた。まじめでドジっ子は良いな、と思いながら掃除をしている時に、三ツ泉を注視していると、目立ったドジはしていなかったが、転びそうになってはいたりした。さらに、くしゃみをした時に周りを気にせず豪快にしていた様子を見て、自分を隠さない姿を見て更に親近感を持った瑠璃だった。


「そろそろ時間なので、瑠璃ちゃんはお嬢様の所へ向かってくださいね」


「はい、行ってきます」


 瑠璃は、自分の使っていた道具を片付け、小百合の部屋に向かった。前日の事もあり、緊張はほとんどせずにノックをすることが出来た。部屋から返事をする声が聞こえたが、前日の時より声が柔らかい感じに聞こえた。扉が開き、小百合の表情を確認した瑠璃だったが、前日の様に硬い表情ではなかったので、安心していた。部屋に招き入れられ、瑠璃はソファに座った。


「今日は昨日と違って表情が硬くないようなので安心しました」


「そうね、昨日は意識しすぎてたのもあるから、緊張してしまっていたのだけど、昨日に綾乃里さんと話せた事があったから、今は大丈夫よ」


「よかったです。そういえば、思ってた事なんですが、いつもはこの時間に勉強していると言ってたのですが、今の時間は勉強しなくても大丈夫なんですか?」


「んー、中間試験も近いから、やっておいた方が良いことはいいわね」


「え、それならやっぱりやっておいた方が良いのではないのですか?」


「その分は夜にやってるから大丈夫よ。それよりも今の時間は綾乃里さんと話をしていたの」


 小百合にまっすぐと見つめられ、話したいと言われた瑠璃は、嬉しさと恥ずかしさが入り混じって動揺していた。瑠璃の顔がどんどん赤くなっていき、少しの間静寂が訪れた。


「……えっと、その、綾乃里さん、今日は何をしていたの?」


「あ、はい、今日は、三ツ泉さんに教えてもらいながら掃除をしてました」


「三ツ泉さんに教えてもらっていたのね。三ツ泉さんはまじめな人だけど、見た感じは堅そうな性格に見えて近寄りにくく思うかもしれないけど、そんなことは無いから、思い違いが無いようにしてもらえると嬉しいわ」


「はい、最初はそう思う所もあったのですが、今日一緒にいてそうじゃないと思ったので大丈夫です」


「よかったわ。今日どんな事があったか聞いても大丈夫かしら?」


「今日する事を聞いて、その場所に向かおうとしていた時なんですが、その時に三ツ泉さんが転んでいたのを見てしまったんです。心配した気持ちはあったんですが、表情もほとんど変わらず平然としていたので、その時はクールな印象も持ってました」


「ああ、やっぱり転んでしまっていたのね」


「その後に自分で開けたドアにぶつかった時に三ツ泉さんが慣れていると言ってたので、やっぱりそう言う事はよくある事だったりするのですか?」


「そうね、集中しているとだ丈夫だと言っていたけど、気を抜いていたりすると、転んだりする事もあると言っていたわね」


「前からだったんですね」


「ええ、だからいつも集中している事が多くて表情も硬いようになっていたりして、性格も堅いように見えるのでしょうね。私も最初はそう思ってたところもあるけど、すぐにそうじゃないって接していて分かったのよ」


「集中している事が多いのは、想像するだけでも大変そうです」


「そうね、三ツ泉さんに聞いてみた事もあるのだけど、本人は慣れたから大丈夫と言っていたわ」


「慣れているなら大丈夫なのでしょうかね。他には、教えてくれる時は、表情は硬いままでしたが、優しく教えてくれましたし、周りを気にする事がない感じで豪快にくしゃみをする姿を見て親近感がわきました」


「うん、三ツ泉さんのそういう所が私も好きなのよね」


 その後もたわいの無い話をしていると、夕食の時間になった。夕食後、自分の部屋に戻った瑠璃は、お風呂に入りながらふくらはぎを揉んでいた。今日の事を思い返しながらゆったりしている。明日はどんな事をするのだろうと思いに馳せながら眠りについた。


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