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2 ガチャ無常

《UR確定ガチャを使用しますか?》


「いえす!」


 意気揚々と答える俺。

 さあ、何が出てくる!?


《URサモンカード、クイーンフェアリーを獲得しました》


 んん!?

 サモンカード?


 首をひねった瞬間、メニュー画面に説明が浮かび上がってくる。


『サモンカードとは、描かれた魔物を召還することができる使い切りのマジックアイテムである。召喚された魔物は十分ほど召喚者の指示に無条件に従うが、以降は提示された代価に納得できないと即座に居なくなってしまう。

 ログボガチャ産の場合、同じカードを五枚集めて『合成』することで特殊な半生物のテイムモンスターとして従えることができるようになる』


 切り札としても強力だけど、その真価は五枚集めてテイムモンスター化してからということか。


「って、単発アイテムかよ……」


 いざという時の切り札を手に入れたと言えば聞こえはいいが、レベル一で武器も防具もなくまともに戦闘ができない状況ではパワーレベリングすらままならないぞ。

 ちなみにクイーンフェアリーは複数属性の魔法を扱えて、攻撃に補助に回復にと万能な働きをしてくれるという、URに恥じない強力な性能を持っているようだ。

 だからこそ余計に一回という使用制限があるのが痛い。


「それだけに一回だけっていうのが辛いよなあ……。対価を用意できれば延長もありみたいだけど、今の俺には差し出せるようなものは何もないし」


 フェアリーということで定番の好奇心旺盛な性格であれば、元の世界のアイテムを渡せば居残ってくれたかもしれない。

 が、着の身着のまま拉致られた感じだから、交渉に使えそうな物は何一つ持っていないんだよなあ。


「やばい。もしかして詰んだか……?」


 天使さんたちの手伝いをするどころか、生き残ることすら危ういのでは?


「ログハウスの周りを確認しようかと思ってたけど、これは先にログボガチャを回しておく方がいい気がしてきたぞ」


 タレントやスキルが獲得できれば今度の指針になるかもしれないし、武器とかが手に入れば散策が楽になるかもしれない。

 サモンカード?知らない子ですね。


「メニュー画面」


 いつの間にか消えていたメニュー画面を呼び出して、相変わらず主張の激しいログボガチャの文字をタップする。

 後から分かったことだが、口に出さなくても頭の中で思うだけで出現させることができた。人前じゃなくて良かったぜ……。


《本日分のログボガチャを回しますか?》


「……い、いえす」


 この結果次第では行動できる幅が大きく変化することになる。そのことに一瞬返事を躊躇してしまうが、明日になれば再度チャンスはあると思い直して、ガチャを回すことを決意する。


《Rタレント、発明の閃きを取得しました》


 永遠にも感じられた一瞬が過ぎ去り、アナウンスが流れた。


「お?……おおう!天使さんの予想当たった!本当にタレントも入ってたよ」


 ランクは一番下のレア()だけどな!


『物づくりにおける才能。その範囲は広く植物や動物の育成にも好影響をもたらす。また、基本的な原材料の知識も得ることができる』


 それでもクリエイト系全般に加えて採取の類にも効果があるときた!


「凄いな……。どんどんアイデアが浮かんでくるぞ」


 まるで泉の水が湧きだしてくるかのように、武器や道具、薬などの消耗品に至るまで様々な設計図が頭の中で引かれていく。


「やったぜ!これで勝つる!それじゃあ、後回しにした周辺の調査でも始めるとするか!」


 先ほどまでとは打って変わって、意気揚々とした気分でログハウスの外へと向かったのだった。


「なんて思っていた時期が私にもありました……」


 それからおよそ一時間後、俺は小屋のど真ん中でガックリを項垂れていた。

 いや、取得できた発明の閃きが有用なのは間違いないのだ。鍛治や調薬といった特定分野に特化していないことも汎用性があって使い勝手が良い。

 基礎的な部分だけとはいえ材料の知識が手に入ったことも大きな前進だ。


 が、しかし。これだけで全てが好転していくなんて都合のいい展開は起こらなかった。


 まず材料となる素材がない。

 次に加工するための道具や設備がない。

 そして最後に、物づくりをする腕がない。


 物は試しとばかりに転がっていた石でナイフを作ろうとしてみたのだが、出来上がったのは辛うじて尖った部分のある石ころだった。


「スキルがないことがここまで影響してくるなんて……」


 ただ、スキルは反復訓練などで習得できる可能性があるのが不幸中の幸いだったな。

 どのくらい繰り返して積み重ねれば習得できるのかが分からないという、致命的な欠点もあるけれど。


 訓練と言えば、魔法の訓練も必須なようだ。

 実は周辺調査で一回りした際にログハウスの裏手に倉庫を発見していた。どうやら天使さんたちが用意してくれたもののようで、中には非常食も……、長くなりそうなので詳しい話は後日にして今は本題を進める。


 その食糧庫の中にメモが置かれていたのだが、そこには「こちらの世界で生きていくために絶対に魔法の習得が必要だ」というありがたい助言が記されていた。

 どうしてそんなおかしな場所に置かれていたのかは謎だが、G関連で色々と制約があったか何かなのだろう。


 それはともかく異世界出身の俺ではあるが、こちらの世界に連行された際にやはり心身が適合化されているそうで、タレントやスキルがなくともマッチくらいの火を発生させたり――持続時間もマッチ程度とのこと――、一口分の水を生み出したりすることができるはず、らしい。


 確かにそれができるのとできないのでは、ただの日常生活ですら難易度が大きく変わってくることになる。

 助言の通りぜひともできるようにならなくてはなるまい。ついでに、そうやって普段使いしている内にスキルを習得できるかもしれない、という下心もあったりする。


「やらなきゃいけないことが目白押しだな……」


 まあ、時間があったところで変に思い悩むだけになりそうだし、体を動かしていた方が建設的か。


「あ、建設と言えばかまどとかも作らないといけないのか」


 薬品や何やらを煮込む際に必要になるし、何より料理にはなくてはならない存在だ。生活以前の生き残るためにも早めに作ってしまいたい。


「タレントのおかげで作り方が分かるのは助かるな」


 元の世界でなら検索で代用できるから、便利になったとは言い難いのだが。

 結局この日はかまどに使えそうな石や粘土を見つけることに終始し、魔法の訓練どころか確認すらできないまま夜を迎えることになったのだった。


「いやあ、こんなことで異世界を実感することになるとはなあ……」


 独り言ちる俺の視線の先にあったのは巨大な月だった。

 どれくらい大きいのかというと、


「直径が一メートル、まではいかなくても八十センチくらいはあるか?」


 真っ直ぐ伸ばした先の掌に十分隠れてしまう元の世界の月とは大違いである。


「しっかし、これだけ大きいのに明るさは元の世界と変わらないっていうのが解せぬ」


 開けた場所を歩くくらいなら楽勝なのだが、一歩建物の中などに入るとなると途端に光量不足となってしまう。

 つまり食糧庫で晩飯になりそうなものを物色するには暗過ぎるのだ。


「かといって俺の魔法では豆電球の代わりにもにもなりゃしないし」


 かまど作り、正確にはその準備に気を取られてしまい、すっかり挑戦することを忘れていた魔法の発動だが、拍子抜けするほどあっさり成功していた。

 もっとも、火魔法は火花が散る程度で水魔法は指先が濡れたくらい、光魔法に至っては愚痴った通り豆電球の代わりもならないという体たらくである。


「練習あるのみなんだろうけど、実用化までの道のりが遠い……」


 自力でスキルを習得できるよりも、ログボガチャで獲得する方が早いような気すらしてしまう。

 こんなことで努力が必ずしも実を結ぶとは限らないことを実感することになるとは。かといって怠けてもいられないのが辛いところである。


「はあ……。晩飯も用意できそうにないし、アホなことを考えてないで寝るか」


 気が付けば異世界という怒涛の展開を超えた最早意味不明な展開だ。気が付かない間に心身共に疲れがたまっていてもおかしくはない。


「明日は明日の風が吹くってな。願わくば風邪をひいたりしませんように」


 こうして俺の異世界生活初日は幕を下ろすのだった。

 ベッドどころか寝具の一つもないことに気が付いた俺が頭を抱えたのは、この十数秒後のことである。



〇今回のガチャ結果

UR確定ガチャ    91 クイーンフェアリー(サモンカード)

初日分ログボガチャ  24・19(R) 発明の閃き(タレント)



名前  : 

種族  : ヒューマン

レベル : 1

ギフト : ログボガチャ

タレント: R発明の閃き

スキル : 

所持  : URクイーンフェアリー×1


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