初授業
朝食後、アランと学園に向けて歩いて行く。
「あ〜頭を痛い。お酒は、控えよう…。」
如何にも調子の悪そうなアランに
「食事のワインで、それじゃ冒険者には向かないね。騎士団志望かい?」
ユウマは、訪ねてみた。
「イヤイヤ。希望は、治療師さ!」
笑顔のアラン。
「冗談は、止めてくれ。」
軽く聞き流すユウマ。
「なんで?なんで?」
アランが不満そうに態度を示す。
そんなこんなで教室につくと、既に殆どの生徒が席に付いていた。
席に名前が付与されてある。
…窓際か…。
当たりともハズレとも取れない。隣の席がキャンドラだからだ。
「おはよう。キャンドラ・フォン・メイダス侯爵孃。」
ユウマは、笑顔を向ける。当然ながら意図してやっているのだが。
「おはようございます。ユウマ様。いえ、ラゲット伯爵家ご子息様。」
キャンドラは、そう言うと顔を赤くして横を向く。
やれやれ、楽しくなりそうだ…………ユウマは、呆れていた。そして、席に座るとドア越しから覗く女子生徒にため息をつく。
カラン♫カラン♫カラン♫
学園の塔の鐘がなり時間を知らせる。
ガラッガラッ…ピシャ…コツコツコツコツ…トントン。
「おはよう。諸君。自己紹介をしておこう。私は、担任のルイザ・フォン・ハーベル。主に魔術と魔術構文を専門に教える…がここは、Sクラスである。メインは、実技だと思って構わない。当然ながら評価も実技が優先される。何か聞きたいことは、有りますか?無ければ、これからカードを配ります。前から順番に取りに来てください。」
ザワザワとしながら1人ずつカードを受け取る。
「このカードは、自動で授業の参加・不参加、授業の評価、テストの評価を表記してくれます。今、貴方達は、クラス20名中20位、学年180名中20位になっているはずです。そして、ランクはBになっているはずです。学年20位までがBランク。10位までがAランク。6位までがSランク。その後5位からナンバーズと呼ばれNo.5からNo.1まで評価されます。ナンバーズには、あらゆる特典が与えられ地下のダンジョンや規制区画の進入が許可されます。逆に21位になればクラス落ちしてAクラスになり順位によりB以下に成ります。」
「それでは、今から魔法の授業をします。特殊魔法教室まで移動してください。」
「やりましたわ。初めの授業が私の得意な魔法!ユウマ様、待ってなさい。直ぐに差を広げてあげますわ!」
キャンドラは、意気揚々とアルミスと教室を出ていく。
「やれやれ。魔法は、苦手なんだけどな〜。ねぇユウマ、コツって無いの?」
アランが面倒くさそうに訪ねてくる。
「何事も繰り返しの鍛錬だよ。有るとすれば、イメージの訓練かな?急に上手になる事なんてないさ。(ごめんね。在るんだけど教えられないよ。ふふふ。)」
ユウマは、気楽に他の生徒と歩いて行く。背中に嫌な視線を感じながら…。
…………クソッ。少し顔が良いからってチヤホヤされやがって、僕は、精霊術と魔術に秀でているので負けるはず無いんだな…………
ユウマの後ろから、害意を放つ少年。ズダン・フォン・ラガールドン。公爵家の御子息だが貴族の間では、カエル君と呼ばれており母ゆずりのエルフの緑の髪をオカッパにして、まん丸とした顔とお腹。ベルトでは、支えられずサスペンダーを使いスボンを穿き、短い脚に合わせた短いサーベルを携えている。小さい頃から、ユウマに対してライバル心を持ち、ガロンの葬儀の際にキャンドラに見つめられるユウマに爆発して王族として初めて学園に入り、無理を云ってᏚクラスになった男である。
魔法教室は、かなり広くボーリング場のような形で正面に魔鉱石で作られた円形の玉が置かれたレーンが5本並んでいる。
「それでは、5班に別れ、あの玉にファイアボールを当てて貰う。スピード、威力、正確性が点数で表示されるので競ってもらう。始め!」
ユウマが加工された魔鉱石を視ると、中心に衝撃を計測する機械と周りに結界が張られユックリと移動する枠が視える。つまり枠を中心に狙えってことだ。足元には、魔力測定装置が仕込まれている。
各レーンで詠唱が始まる。火属性は、この世界で産まれる全ての人間が持っており、魔力が低くても火起こし程度は、誰でもできる。
「しかし…相変わらず遅いな…。発動までにこれだけ時間がかかると魔法師団でも冒険者としても活躍する前に死ぬぞ…。」
心の声が漏れていた。
「確かにな。」
振り返るとルイザ先生が腕を組んで立っていた。
「83、102、126、74…はぁ〜。」
額を押さえため息をついている。
そんな時、
「ドコーン!!」
爆音と共に
「よーし!!」
と声が聞こえた。
見ると端のレーンでキャンドラが喜びアルミスとハイタッチをしている。
点数は、478点。
ルイザ先生の目が輝く。
「今年は、当たりか?」
続くようにアルミスも高得点を叩き出す。417点。
「よぉ。お次は、ユウマの番だよ。」
項垂れるようにアランが声を掛けてきた。
点数は、376点。悪くは無いと思う。あの魔力量からは、想像できない…。
何とも違和感を感じながら、如何するか考える。派手に放つか?抑えとくか?約1.5倍って所かと心に決める…。
位置に付くと目を凝らし、移動する目標を見据え右手を向ける。
「ファイアボール。」
凝縮された炎の玉が中心部に当たる。
「ボッ…ドドーン」
吸い込まれたような音と爆発音。
点数は…946点。
「あれ?」
ユウマが間抜けな声を出した。
「ど真ん中に当てたのか?! 初めて聞いた…」
ルイザ先生が成績表を落として立ちすくむ。
周りの視線も集まり止まっていた。
…………やっちまった?…………
「うぉー。流石、首席だ!凄いな、ユウマ!!」
声を出したのは、アランだった。
その歓声は伝染して拡がっていった。三人のヒンシュクを買う事になるが…。
もう、なろうでは書きません。
Good-Bye Peeping Tom