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それぞれの思いと晩餐


ピッコリは、この王立学園が作られた際に生み出されたルームドーラーだった。今からおよそ120年も前の話だと言う。当時は、戦前と言う事もあり入寮者が溢れ活期に満ちていたが80年前の開戦に、生徒が減り魔力エネルギーの枯渇しかけたピッコリは、眠りに付いたという。最後の主人は、ガロンお祖父様だった。


それから、内緒の話をして部屋の管理をピッコリに任せる事にした。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

その頃、厨房ではマリアナが手際よくコースを作りながら、

「今年は、厄介な連中が入って来たものだわさ。一癖も二癖もある男の子に、稀代の魔法少女、そして何と言ってもガロン伯爵の孫か…」


顔には、笑顔こそ浮かべてはいるが、その胸の内は混沌としたものが渦巻いている。経験による未来予知にも似た鋭い勘である。

当然ながら、ルームドーラーの魔力は感知しており、そこがユウマの部屋だということも把握している。


「さて、今年はどんな始まりになるのかしら。ふふふ」

軽く、お玉を回したあとエルフ特有の緑の髪を靡かせていた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「首席の座は取られましたが、私が1番であることは、間違いありません。明日からの授業で教えて差し上げましょう!」

青い瞳にブロンドのツインテール。部屋着にしては、高価な服装に身を包んだ少女が発すると控えていた黒髪の少女が紅茶を出して頷く。


「お嬢に勝る資質の御方など現れるはずも御座いません。偶然に運が重なり伯爵様のお孫様に当たっただけで御座います。ユウマ様も2年前とは、雰囲気が変わられてましたが相変わらずの美少年…」


ギラッ。と青い瞳に睨まれ言葉を止める黒髪の少女。


「貴方の主は、私キャンドラ・フォン・メイダスです。お言葉には、気をつけなさい!」


「畏まりました。御無礼を働き申し訳ございません。お嬢様。」

膝をつき頭を下げている黒髪の少女。名前をアルミス・クインテルと言い、代々メイダス侯爵家に仕えてきた侍女である。今回のキャンドラの入学に伴い世話係として入園し同じ部屋でお世話をしている。

当然ながら、部屋は別なのだが起床してから寝るまでの間は、お世話をしてきた。今回、ガロン伯爵の孫が入寮するとの噂を聞きつけた、キャンドラのお世話をする為に付いてきたのである。


アルミスは、同じ年のお嬢様のお世話をするに当たって、幼い頃から勉学に励みキャンドラを支えて来た努力家である。


「私は、ユウマ様なんか如何でも良いのですわ。深く勉強に励めるように入寮を選んだのですから!」


顔を赤らめながらも違う(てい)を話すキャンドラをお盆を抱え下を向き笑みを零すアルミス。


「その通りで御座いますね。軽く喉を潤しましたら食堂へと参りましょう。」

表情の見えぬメイド服のアルミスに


「わかったわ。」

と紅茶をゴクンと飲み、姿見で衣服を確かめると部屋を出ていく。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ふぅ〜、あれは厄介だな。流石に正面切っては、無理があるし、かと言って他に手があるかと云われると辛いな…。暫く様子を観て行くしかないね。あの腰の剣は、ダンジョン産のレベルCランク…。他の生徒からしたら、ただの鉄の剣なんだろうけど付加能力があって間違いない。レア・S・Aと上から5番目…ガロン伯爵の遺産だろうけど…あ〜ヤメた。食事に行こうっと」


真っ暗な部屋のベッドから飛び起きるアラン。


「おっと、出来ればコイツを…。」

胸元の巻物を拡げるとアイテムが一つ出てくる。1ミリ程度の針。


【隠密の針】(ランクEの魔物レッドビーから偶にドロップする針で魔力を発生し本来、主食のランクFのキャタピラー系の魔物に刺し何処に居るか感知することができる。)


まさか、巻き物の文字がアイテムに変わるとは、誰もおもわないよね…。しかも、古代東帝国語なんて。ニヤリとするアラン。


この巻物もレア・アイテムボックスであった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「さぁー、皆んな揃ったし、毎年恒例の入寮を祝う夕食を始めるさね!」

木のダルマジョッキにエールをなみなみと注ぎ掲げるマリアナ。


寮生のまえには、豪華な食事が並べられワインも注がれていた。


「マリアナさん。今年に限ってワインなんて…。如何なものでしょう?」


メガネをかけた真面目そうな生徒が異見を述べる。


「ま〜、あんた達平民には習慣が無いかもしれないが今年は、貴族から入寮してきた者も居る。貴族の世界では、食事中の飲酒は当たり前なのだわさ。」


弱り目で寮長らしき少年を説得するマリアナ。


「あら?皆さんは、飲酒のご経験が無いのですか?」

正面が偶々、ユウマの席と云うことも有り軽く口に含み、味わう様に飲み込むキャンドラ。続くようにユウマも軽やかに口に含む。


「へぇ~。カッコイイね。俺も!」

アランが真似して飲む。とても違和感なくスムーズに…。

「美味しい!流石、インディゴ産の銘酒だね!」


「おや?私は、産地まで言った覚えは無いわさね。」

マリアナが横目でチラッと見るが


「適当ですよ。あはは。有名だしそれしか、知りませんし!当たってました?」

笑顔で笑うアランに誰も警戒しない。それどころか銘酒と聞いて、皆んな次々に初の飲酒に挑戦する。


初めてのアルコールが良い加減で回ったのか、皆んな笑顔で談笑し美味しい料理を平らげていく。


女子生徒たちは、ユウマを見ながら耳打ちしたり笑顔で微笑んだりとアピールしていたがキャンドラとアルミスは、見てみぬふりを貫きながら男子視線をウンザリと交わしていく…。初日の夕食兼歓迎会は、楽しく終了したことにしよう。


「ユウマ〜。俺は、もう駄目だ〜…。」

赤ら顔で如何にも酔っ払いのアランに


「やれやれ、グラス2杯くらいで…。ほら、捕まれ。部屋まで送ってやる。」

右肩を貸し出し、支えながら歩くユウマの左肩口に針を差込み


「いや〜、流石に貴族様はお強いですね。あはは。」

何食わぬ顔で酔っ払いを続けるアラン。


この状況で感知できた者など誰一人としていない。キャンドラを始めアルミスにマリアナさぇ…。


部屋の前まで来ると

「ここでいいか?ゆっくり寝なよ!じゃぁな。おやすみ。」


「おぉー。ありがと。おやすみーあはは。」

と部屋に入っていくアラン。


階段口で寮長に対面したユウマは、軽く背中を叩き

「お疲れ様でした。おやすみなさい。」

と声をかけ部屋へと上がって行く。


ほろ酔いの寮長は、

「おぉ。おやすみ。」

と返事をして部屋に入りベッドで横になる。


「さぁーて、寮長の部屋は、2階の角部屋。然程、精度の良くないレッドビーの針なら誤魔化しは効くだろう。それよりも、バックについてるのが誰なのか?コチラからも仕掛けてみるか…」


部屋に入りベッドでピッコリを優しく撫でながら、魔力を分け与えるユウマ。銀の指輪を見つめながらアイテムを選定していた。







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