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第一話 プロローグ

……昔の幼い時の記憶………


「お主、これが見えるかの?」


「うん!」


「ユウマ、お主は大きくなったら何をしたい?」


「おじいちゃんみたいな、冒険者になりたい!」


「ガッハハ。う言うた。流石は、儂の孫じゃ。その願い叶うじゃろう。」


「ねぇ。早く絵本の続きを読んで。勇者さんは、どうやってドラゴンを倒すの?」


「待て待て…………勇者は光り輝く細い剣を掲げると空から光が降り注ぎ……………」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜



それから、約8年も過ぎた頃であった。


豪華なキャノピーベッドに横たわる老人。側には息子や娘、その夫や妻と孫達が周りを囲み、遠巻きに執事・侍女が列を揃える。その中には孫のユウマの姿もあった。


「儂にもそろそろ、お迎えが来たようじゃ…。ラインハルトよ。後は任せたぞ。家督は、お主に任せる ゴホッゴホッ…。」


「御父様、安心してお任せ下さい。伯爵家の名に恥じぬ働きを致します。」


長男のラインハルトが目を潤ませ答える。


「遺産分けは、全て長男のラインハルトに任せるが決して争うでないぞ…。そして、これだけは、ユウマ…おるか?居るなら来い…」


「はい。お祖父様(じいさま)ここに居ります。」


銀髪にやや細身の少女のような少年が側に寄り添う。


「お主にこれをやる。お主の役に立つであろう。他の物は、欲しがるな…。これさえあれば、夢が叶うのじゃからな…。」


そう言うと、枕元から銀色の指輪を取り出してユウマに渡した。


歪な形にくすんだ銀の指輪。ユウマは、両手で受け取り頭を下げ退いた。


目には、涙が溢れているが嗚咽を漏らしてはいない。大好きなお祖父様…。昔の決意が沸き立ってくる。冒険者になる…。


それから数時間後、親族関係が見守る中、ラガール王国・伯爵 ガロン・フォン・ラゲットは息を引き取った。


訃報は国王から各貴族に伝わり、臨終から7日後、盛大な葬儀が執り行われた。


元Sランク冒険者から身を起こし、軍事において功を奏して伯爵まで上り詰めた漢の最期であった。


〜〜〜〜〜〜〜


葬儀の後、ラインハルトが正式に跡を継ぎ伯爵になり屋敷で親族と話をしていた。


「やっと逝ったな。あのクソ親父。」


ワインを飲みながら、弟妹と話すラインハルト。


「兄さん、遺産はどうするのよ!」


「あなた、私にも遺産を譲って下さいね。」


妹や妻、弟達から声を掛けられる中、いそいそと鍵を取り出すラインハルト。その顔は、笑みに満ちている。


「わかってるさぁ。さぁ、行こうか!宝物庫へ!」


やや大きな屋敷の地下にある宝物庫。嘗て、ガロンが世界を旅して手に入れたお宝が眠る場所。そこには黄金に輝く剣や鎧を始め、宝石等が綺麗に並べられており、古文書等も並べられていた。


「コイツは、スゲー!王家にも、これ程の物は無いだろう!!」


ラインハルト達は悦び、あっちこっちの品を手にとっては褒めちぎり、誰が所有するかで揉めていた。そんな親に混じり、子供達も騒いでいる。


「おい!ユウマ。お前の指輪を見せてみろ!」


ラインハルトは、ユウマの指輪を手に取ると光に照らしたり振ったり

叩いたり擦ったりしたが、どう見ても銀貨1枚程度のボロの指輪にし

か見えない。


「ふん。ほらよ!」投げ捨てながら呟く。


「お前は遺言通り、それだけだ。いいな!部屋に戻ってろ。」


「はい。」


ユウマは指輪を握りしめ、宝物庫を出て部屋に戻る。そしてベッドに腰を掛け、指輪を()()する。鑑定結果は、【マジックボックス・レア】と出た。


祖父ガロンだけが能力の遺伝を知っており、ユウマの為に遺した遺品。その小さく変哲の無い指輪には、宝物庫を遥かに凌ぐ貴重な宝が隠されていたのである。




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