アマリリス
今年もよろしくお願いします。
ブクマ、評価、感想ありがとうございました!ランキングにまで乗せて頂くまで読んで下さり作者の心臓は喉まで上がってしまうかと…思っちゃいました!
お正月にもうすでに飽きつつあるので投稿致します。
まずは…誰視点!?と思われるでしょうがネタバレになるので今は言いません。
ただ、ガールズラブではありませんが、仲良しではあります。私はそんなつもりではない感じで書いたつもりなんですけど…。いちお、ご注意下さいませ。
今回の視点は四作追加となっております。
よろしくお願いします!
「ロデリア!リア!久しぶりー!私が言った通りだったでしょう?もう!あんなに言ったのに…処刑されちゃって。」
「うるさいわね!ギロチンよりかましでしょ!これでもなんとか回避しようと頑張ったのにー!リリーなんか暗殺じゃない!」
「私の事毒殺しといて良く言うわよ!憎んでは無いけどね!」
「当たり前じゃない!リリーに馬車事故なんて痛々しい暗殺の仕方できないわよ…。一瞬で死ねる毒使ってあげたわ。」
「ありがとう??確かに…痛いの嫌だわ。さすがリア!」
「あの…もう少し静かに…」
「「貴方は黙ってて!」」
「はい。」
ここは乙女ゲームの裏側。強制力が居る部屋である。いわゆるシステム管理棟だ。
そこに要るのは悪役令嬢の母親アマリリスと後に悪女と呼ばれる王太子の母親ロデリアである。
私達は腐れ縁だった。好きでずっと一緒くたにいたわけでは無い。
お互いに生家の身分が高すぎた為に当時は、まだ王太子だったマクシミリアンの妃候補としてずっと同じ教育を受けさせられたのだ。
ライバルであり、同志であり、友人だった。
最終的にロデリアが王太子妃に…マックスの妻として選ばれた。ショックだったが、リアに負けたのならば仕方ないかと思えた。リアを支えるのだと嬉しく…と思った筈だったのに、次の瞬間に出た言葉は全く異なる物だった。
「第二王妃なんて絶対に嫌よ。」
今思えば何故嫌だと思ったのか解らない。リアと一緒に居られて楽しかったし、マックスのこともリアの次だけど好きだったのだ。それに、あんなに血反吐を吐く位に王妃になりたいと教育を頑張ったのに…第一王妃になれなかっただけで、数年待てば第二王妃になれて…もしかしたら王太子を産める立場となれたかもしれないのに。
嫌だと思うように誘導されたのだと気づいたのは、単語しかしゃべれないヘラニウム侯爵に嫁ぎ、二言目には「坊っちゃまは!」が口癖の侍女長に嫌がらせを受けながらもシルクジャスミンを産んだ時だった。
「マジか!?」
乙女ゲームやん!私、あの悪役令嬢のお母さん役だったの!?ヤバい!これだと私…死んでまうやろー!しかも産んだばかりの可愛い我が子には冷たい周囲に血反吐の妃教育が待っているのだ。
不味い!と思ったが旦那様である侯爵にはあの侍女長がいる。あのばばあを除けて話せる状態ではなかった。
でも、いちお、釘は刺しておいた。
「旦那様。いつかあなた様は色んな事を後悔なさいます。見るべき物を見ず、知るべき物に蓋をした代償を必ず払う事となるでしょう。覚悟しておいて下さいませ。」
ヘクトルに釘を刺したはずなのに、次の日侍女長から
「あなた何を坊っちゃまに言ったのです!怯えておられます!私の坊っちゃまは繊細なのです!もう二度と近づかないで下さいませ!」
と仁王立ちで怒られた。鳥肌が止まらなかった。
直ぐにロデリアに手紙を書き、話をしたいと面会を求めた。ロデリアが私を殺すことは解っていたが、張本人の懐に飛び込んで見なければ何も解らないし、ロデリアがする事ならば…何か理由があるのかも知れないと思ったのだ。
ロデリアは直ぐにお茶会に呼んでくれた。
「リリー?久しぶりじゃない!ずっと手紙ひとつ寄越さなかった癖に!!急に何なのよ。子供産まれたって?元気なの?」
リアは相変わらずツンデレだった。可愛いわ。やっぱり、リアを支えていたかったわ。この子気が強いからちょっと勘違いされやすいのよね。
「まぁ。元気よ!全然問題ないわ!ヘラニウム侯爵はマザコンだけど!」
「ぶうっ!!全然問題なく無いじゃない!マザコンって…侯爵ってご両親は鬼籍に入られていたんじゃ無かった?」
リア?貴女王妃なんでしょ?紅茶吹き出すって…周りの使用人達も優秀だわ。ちゃんと見ないふりできるのねぇ。
「ああ!言い方間違えた。乳母コンプレックスね!ウバコンよ!」
「ああー。貴族の男子あるあるじゃない?陛下にもあるもの。ばぁやの言うことには逆らえないって奴よ。誰にでもあるわ。」
「「ねぇーー。」」
「まぁ。ヘクトルの事は良いわ!それよりも、私が今から話すことはおそらくこれから起こること。きっと信じられないかもしれない。でも、起こること。私もなるべく回避しようと頑張るけど…リアも頑張って逆らってほしいの。リアは誤解されやすいけど、周りを調整する力は私よりあるわ。私の認めた王妃は貴女だけよ。」
「リリー!第二王妃を断ったって言っていたから…私、てっきり嫌われたのかと…。」
「大好きよ!マックスやヘクトルよりも!」
「私もよ!」
私は全部話した。私の懸念はたぶん当たる。私はヘクトルに嫁がなければならなかったのだろう。リアとマックスを支えたいという、私の夢は叶わなかったけれど、シルクジャスミンを授かり、育てられた事は幸福だったわ。リアもいつか何かにからめとられるかも知れない。私のやっていることは…きっと…シルクジャスミンの力になる筈。それと、私の力にも!!
お願いします!できれば死にたくないんです!
「リリー。私には…信じることが…できないわ。私が…貴女を暗殺するなんて…陛下の側室を手にかける…そんな恐ろしいこと…。リリー!酷いわ!私がそんな嫌いなの!?貴女を信じていたのに!帰って!二度と来ないで!」
結果は…悪い方向に向いたようだった。さもありなん。友人に殺人者扱いされたのだから。私でも怒るわ。言うべきでは無かったのかもしれない。だけど…それからは家で鬱々としつつも可愛いシルクジャスミンに愛情をかけながら過ごした。
ある日、ウバコンを拗らせたヘクトルがやって来て言った。
「シルクジャスミンを第一王子の婚約者としたいと陛下より要請があった。」
文章を喋っている!?と驚きつつも…。やっぱり、来たかと思った。だって先日陛下のご側室が病死されたとの発表があったからだ。物語は着実に進んでいるらしい。
「お断り致します。私は妃教育でとても苦労致しました。我が子にそのような苦労をさせたくありません。他を当たってくださいませ。」
「いない。」
「断ってくださりませ。」
「解った。」
やっぱり、単語に戻っていた。幻聴?だったのだろうか??
それからは私はなるべくシルクジャスミンの側を離れず、外出もせずに侯爵邸で過ごした。
しかし、その日はやって来た。私は紅茶を飲み、血を吐き、倒れた。最後に見た顔は侍女長の青ざめた顔だった。不思議と苦しくは無かった。
「やぁ?目が覚めたかい?」
沢山の液晶画面がある。監視室の様な部屋だった。
「ここどこ??」
「ここは全ての強制力を監視する部屋。システム部屋だね。」
「貴方は?」
「うーん。初めて聞かれたなぁ。なんて答えれば良いのかな?強制力?管理者?プログラム?君が呼びたいように呼べば良いよ。転生者の悪役令嬢のお母様?」
「なるほど。じゃあ、ちっちゃいおじさんね。」
さっきから私に話しかけてるちっさいおじさんっていうか土偶ね。いや…埴輪か?。若干シュールだわ。まだ、ホネホネさん…骨格標本の方が良かったわ。
「強制力って呼んでね!」
「解ったわ!私はリリーって呼んでね!」
絶対に埴輪って言っちゃいそうだけどね!
「はあー。君。肝っ玉強すぎない?」
「良く言われるわ。ありがとう!」
「褒めてない!」
「私はなんでここに飛ばされたの?私なにかしたかしら?普通輪廻に戻って、また産まれなおす物ではなくて?」
「スルーかよ。確かに本来ならばまた新たな人生を始める事になるばずだけど…リリーはせっかく転生したのに…こんな死に方になってしまったから…。少し償いたくて…要望が無いか聞きたかったんだ。」
「そう。要望はまだ思い付かないわ。思い付くまで私…ここにいても良いかしら?」
「え?うーん。まぁ。魂を固定してれば…いいかな?僕が疲れるのだけど…暇だったし、いいか!」
「ありがとう!」
と言いくるめて十年が過ぎました。人の人生を眺めるって以外に楽しいものですわね。ヘクトル。ウバコンって言ってごめんなさい。自分が答えようとしてるのにあんなに被さって話をされれば単語になるよね。しかも、強制力2って表示されてるし…。
この数字がシステムの一貫らしい。この土偶に質問したら教えてくれた。
なんかが掛かっちゃってるらしい。だって外務大臣としてめっちゃスムーズに喋ってるもんね。私もそれだったのかしら?
しかし、ロデリア凄いな。強制力レベル10やん。
いっぱいいっぱいめぇいっぱいって感じだな。可哀想に。
自分の考えと少し違う事を言おうとすると変な笑顔になるらしい。ロデリアも抵抗してるのかもしれないなぁ~。
この、少しと言うところがみそらしい。本当に思ってないことはいくら強制力があっても言えないそうだ。
「私、マックスに嫁ぐの嫌だとは思っていなかったわよ!?」
と埴輪に抗議したが、
「後から嫁ぐのは嫌だったんでしょ?あの王妃と一緒に嫁ぎたいって思ってたって言ってたじゃん。」
「そこ!?」
なんとも嫌なところをつくシステムだな。
そんな時は…強制力の足をヒールで踏みましょう!
「痛い!痛いよ!これで何回目!?何度でも言うけど、そのヒール凶器なの!?」
そろそろかなぁ?
「ねぇ?ねぇ?聞いてる?僕の足エマージェンシーなんだけど!?」
私の娘は可愛いなぁ。こっちから眺めているだけ…物凄く拷問だったわ。あの妃教育に耐えるなんて…。
本人の頑張りは親として誇りでもあるけど…。見ていて辛かったわ。
でも、全てを…私は見ていたから。だから知ってるわ。シルクジャスミン。貴女の頑張りを。胸を張って踏み潰しなさい!全てを!
って思ってたけど、うん。心配要らなかったね!
めっちゃイキイキしてるわ。さすが、私の娘。
ふーん。マックスにも強制力1が出てるのねー。あんまり変わらないように見えるけど…?でも、自分の後宮なのに興味なさげだなぁとは思っていたのよねぇ。
王太子の3は、言わずもがな。自分の婚約者に冷たく接してしまう強制力かしら?それとも、あの子爵令嬢を優先する強制力?まぁ、どうでもいいわ。
「強制力ー。女性はリアと多少お付きの人達が強制力にかかってる位なのに、男性は多いわねぇ何で??」
「ヒロインの子爵令嬢が本人の都合良く幸せになれるようにだろう。男性には魅力的に見える様になっているのではないか?そして、女性には悪役になってほしい者だけが強制力にかかる。誰だって悪役になりたくないからな。」
「なるほど。そういえば男性の転生者は居ないの?」
「考えた事は無かったな。そういえば居ないな。」
「え!?ジャックは!?違うの!?」
「彼は違う。あれは自だ。それと、今のところ何人か転生者は居るが女性だけだな。」
「マリーゴールド嬢は?」
「彼女も自だ。」
「「すげぇなー。」」
と二人で感心したりして過ごしていたの。楽しかったわ。
そして、待ちに待ったその日は来たわ。
私の待ち人は毒杯を賜っていた。
「強制力ー。私ね、お願い思い付いたわ。」
「やっとかよ。長かったな!」
「強制力はさぁー?私の願い?解ってて聞かないフリしてくれたんでしょう?優しいのね。」
「ふん!」
「あの子の…ロデリアの魂を私にくれない?」
「それは、無理だ。人を殺している以上罪は償わねばな。」
「強制力のせいでも?」
「ああ。リリーの理屈で言うならばあのウバコンの張本人である、侍女長も救わないといけなくなるよ?」
「それは、ヤバいわ!ダメよ!罪は償わないと!リア達者で!」
「心変わりはえぇな!」
「私がリアに付いていくのは?」
「本来ならばダメだが、希望があれば叶えられた。以前の死んだばかりの魂だったならな。だが、リリーの魂はこちらに無理やり固定している状態を10年続けた。魂が償いに耐えられるとは思わない。一瞬で消滅してしまうぞ。」
「消滅は困るわ…せめて、リアが償いに旅立つのを見送りたいの。良いかしら?リアに話しておきたいの。少なくとも私は憎んでないって。だから、亡くなった側室と産まれてこれなかった幼い命には真摯に向き合って償いなさいって。正気に戻ったリアで罪を償って欲しいの。」
「君は優しいのか残酷なのか良く解らないな。希望を聞いたのは私だ。君の願い聞き届けよう。だけど、それで終わりだ。リリーも輪廻に戻るのだよ?解ったかい?」
「ええ。ありがとう。」
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感動?の再会を果たした私達は強制力の力を借りてお茶会を始めた。物凄く久々だわ。作法忘れてないかしら?リアってそこら辺厳しいのよね。
「マックス泣いていたのよー。貴女に振られて。」
「ぶっ。だってリアと一緒に妃になりたいってあんなに言ったのに叶えて貰えなかったのですもの!」
「しょうがないじゃない!そんなに王族にお金無いわよ。二人同時にってどんだけかかるのよ。リリーは俺よりリアが好きなんだぁ。ってうざかったわ。正直。否定もできなかったし。」
「フォローしてよ!」
「事実でしょ。一度も会いに来なかったし、手紙来たの私にだけだったし…。追い返しちゃったけど…。悪かったわ。忠告も聞かなかったし…。でも、だからかも…マックスが貴女の娘をギルバートの婚約者にするって言い張ったのは。」
「ああー。なるほど。私って罪深い女なのね…。」
「強制力さん。10年も良く一緒にいられたわね。」
「僕も正直なところ…何度か消してやりたくなりました。」
「ひどい!」
「って事で拗ねて貴女の娘のシルクジャスミン苛めちゃった。ごめんね。」
「許すまじ!」
「さっき怒ってないって言ったじゃない!」
「憎んで無いって言ったのよ。怒ってないとは言っていないわ。それに…それとこれとは別よ!娘に責は無かったでしょうが!?全くあんな天使を!天誅!」
ゴツン!
「痛っ!めっちゃ痛い!悪かったわ。これでもセーブしながらやってたつもりだったのよ!でもなんでか酷くなるの!授業は少ーしきつめ位にするつもりだったのに、ギチギチ、ガチガチになってるし、お手紙出せば上から目線の脅迫状…ゴホン招待状になっちゃうしー。そんなつもり無かったのにー。」
「「あー。御愁傷様。」」
「二人して同じ反応なのはなんでなの!?」
リアの穏やかな表情が見れて本当に良かった。彼女はこれから苛烈な旅に出ることになる。その一歩前でリアに力を少しでも与えられたのならばこの10年は意味があったのだと思える。
「リア。貴方はこれから罪を償う旅に出なければならないの。理由はわかるでしょう?私も一緒に行ってあげたかったのだけど…魂が持たないのですって。だから、輪廻に戻って待ってるわ。何時までも。何回でも輪廻を周りながら。何度でも。」
「解ってる…私は許されないことをしたわ。あの頃…あの時…の決断を思い出しても手が震えるの。何て事をしてしまったのだと。償うわ。どんな辛いことをでも受けます。罪を犯してしまった人達全員に謝りながら。貴方への分も。シルクジャスミンへの仕打ちも…ちゃんと償うつもりよ。ありがとう。リリー。貴方が親友で本当に良かった。リリー気長に待ってて!必ず会いに行くわ。」
「ええ!待ってるわ。」
いつかきっとまた会える。そう願って。
シルクジャスミン。私の娘よ。昔の事は…辛かったこと全て忘れて幸せになりなさい。
貴女を選ばなかった私の…母のことなど思い出さないで。
強制力さんと悪役令嬢のお母さんと悪女さんでした。
お母さんは、強制力さんに願えばヘクトルやギルバートの強制力を解く事も可能でしたが、選びませんでした。
なんか自分の意志が強すぎる親が多いな…。貴族って弱いものは守らないといけないけど貴族同士であれば容赦なし過ぎる気がする。