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スノーフレーク

おはようございます。

お久しぶりです。

久々の投稿に緊張しております。

ちゃんと更新されてるかな?

今回はスノーフレーク視点です。

ギルバートの夫人のお話になります。

よろしくお願いします。


「シン!図書館に行くぞ!」


「閣下、執務はどうなさるので?」


「そっそれは…家名は一生ものだぞ!」


声が大きい!私の部屋と旦那様(ギルバート)との執務室まではだいぶあるのにここまで届くなんて…忍ぶ気あるのかしら?


私はカツンカツンとわざと響く様に足音をならして近づく…。


「静かに奥に気づかれる。執務はこれが終わればしっかり致すゆえ!」


「誠ですか?家名にかかりきりになって執務を疎かにする未来しか見えませんが?」


「そなた…良い性格になったな。マリーのドレス代で泣きついていた頃が懐かしいぞ。」


「ありがとうございます。」


「褒めておらぬ!」


だから声がでかいってば!

はぁー私の旦那様はどうしてこんなにおバカさんなのかしら?

真面目過ぎて一つの事にしか集中出来ないのよねー。同時に色んな仕事をさせても気を散らすだけだとわかってからは一つ一つ任せるように執事にも指示したのが正解だったみたい。旦那様の処理能力は悪くなかったもの。

あまりに優秀で早いものだから大公領の者達は余程王太子の責務が重かったのだろうと思っているようだったけど…。

理由はそうじゃないと思うのよねー。

ジャックは解ってて自分が関わる仕事に支障のある時だけ采配してたようで…ギルバートの実力よりもジャックの能力の高さの評価に目がいく様になっていたわ。


そんなことするからアレクサンダー陛下から嫌われるのよ。


「閣下?今の時間は執務室におられるはずではないのですか?」


「奥!?出歩いて大丈夫なのですか?何時産まれても可笑しくない時期なのですよ?」


「閣下?質問しているのは私ですが?」


話をうまくそらしたぞ!って顔に出てますよ。旦那様。


「アレクからあまり義姉上にばかりかまっていないで兄上に出来ることをしたら良いのではないですか?とアドバイスを手紙で貰ったです。義姉上も自由にしたい時があるでしょうからと…。家名をそろそろ決めて欲しいですしとも書いてありましたのです!はい!」


陛下グッジョブ!

執務が無い時は四六時中付きまとわれて…ゴホン。

サポートしたいと付き添って頂けるのは有難いのですが正直ウザイ…ゴホン。

悪阻とは辛いものなのだと聞いたから付き添います!と言われ私は全く悪阻が無かったのに旦那様が悪阻を肩代わりして下さった様で私が付き添う嵌めになり迷惑…ゴホン。


「それは素晴らしいですわね。この子の為にもそろそろ家名を付けねばならないでしょう。ですが、執務を終えてからでも遅くは無いのではないですか?」


「だが、せっかくのアレクのアドバイス…。」


「閣下、いい加減陛下と敬称をお呼びくださいませ。」


幾度と無く指摘しているのですが中々聞いてくれないのです。おバカさんも極まれりですわ。でも、諦めてはいけない!これからの人生がかかっているのだから。


「それは…アレクも兄上と慕ってくれていますし…。」


「当たり前ですわ。陛下は王とお成りです。何をしたとしても私達臣下はお諌めすることは出来ても咎める事が出来る者などこの国には存在しておりません。閣下とて同じこと。臣下となった身。弁えませんと。」


「っつ…。」


シュンと項垂れる旦那様。うん。可愛い。可愛いけどねー。


「閣下。閣下はまだ大公の地位ですから王兄と言わないまでもそれなりに認識してくれる貴族が多いでしょう。ですが…これから産まれる子等は公爵位。完全なる貴族位です。王族位ではありません。その子等が父である貴方の態度を真似て王子王女殿下方に不遜な態度を取れば取り返しがつかないのですよ。貴方はその事を身をもって知ったはずではないのですか?あの時…あの言葉は嘘だったのですか?」




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「今日からよろしくお願い致します。」


「よろしく頼む。」


私、エーデルワイス公爵が娘スノーフレークでございます。ギルバート大公閣下と婚約して一年後に式をあげる予定だったのですが、王妃殿下の病に端を発した王家のごたつきで領地にて小さな式をあげるだけにとどめて嫁ぐことになりました。

王妃殿下の静養中に盛大な式をあげるなど王妃殿下の騎士としてあり得ないので小さな式もいらない、婚姻証明書のサインのみで十分だと提案したのですが、大公の婚姻なんだから流石にダメだと父に説得されました。

別に王妃殿下からの私のことは気にしないで式をあげて欲しいとお手紙を貰ったからではありませんよ。

ちゃんと当主である父の意見を取り入れたのです。お手紙を読んでからですが。


我がエーデルワイス公爵家は騎士の家でございます。優秀な騎士の輩出に力をいれております。


騎士と言っても種類は様々です。

騎士団には剣術部隊、遊撃部隊、先行部隊、後方支援部隊、医療部隊、暗部もあります。

その全てにスペシャリストを送るべく教育することが我がエーデルワイス公爵家の仕事なのです。


剣術部隊は基本の騎士教育過程でもありますから全ての騎士が受けます。なんと言えば良いやら…手っ取り早く脳筋とすべく教育するのが長子組のお仕事。まぁ言うなれば洗脳?教育熱心?考える隙もない程?朝かから晩まで剣術とかけっこに明け暮れさせていましたわね。

国の騎士団は剣術部隊だけでも一番から十二番隊まであるから量産して送り出すには仕方ないのよねー。


その中で視野が広く剣術以外の技が巧みな者達をスカウトして遊撃部隊に教育するのが次子組の仕事。


教育過程の中で比較的性格が穏やかで対人扱いが長けていて料理や医療などの特殊分野に適正がありそうなのをスカウトして育てるのが先行後方支援、医療部隊を担当するのが末子組のお仕事。


暗部は特殊。当主直属で貴族家門ならば何処でも規模の差はありますが必ず存在します。ここの部隊は配属される事項もわかりません。私達公子ですら知らされずいつの間にか教育過程中に姿がなくなります。名簿からもいつの間にか抹消されているので追うことも出来なくなります。


国の騎士団でも教育過程はあるけどそんな人数は受け入れられない。あちらは近衛の育成もしなきゃだし…あの近衛は何と言って良いやら。別名闇の華と呼ばる儀式部隊なのですが、謎めいた部分が多かった為、その昔、暗部が探ったことがあったそうなのです。ですが、偵察に送った者達全員が行方不明に。数か月後、近衛で堂々と働いていたらしく…問いただすと暗が闇に勝てる筈がないとはっきり言われたそうです。しかも暗部の技を隠す事もせず魅せる技として使っているのだとか…。

コワイコワイコワイ!近衛には近づくべからず!!!

王宮の方々、近衛の教育は任せます!騎士の教育はエーデルワイスが頑張りますんで!色々無理なんで!を合言葉として受け継いでおります。

だからエーデルワイス公爵家が騎士の育成を担い、最優秀と良と凡を公爵家に残し、優秀と秀を国に送り出しているのですわ。


私は次女だったのですけれど…先行、後方支援部隊の教育担当だったわ。環境を整える事に長けている者達をスカウトしていたの…主にお馬さんのね!私、お馬さんが大好きで!遊撃部隊の馬を潰す作戦をどうしても容認出来なかったの。どうしたら怪我なく戦えるかばかり考えてしまって…馬がね。人間は二の次になってしまうのよね。お父様にそれは流石にあかんやろと怒られてしまって…。そんなに馬が好きなら強い戦馬作ってみろと外されちゃったわ。


いずれ公爵領内で寄り子の何処かに嫁ぎ、騎士育成を続けると思っていたのだけれど…まさか大公とはねー。ダークホースだわ!それはそれで美味しい!

しかし、何故後ろから旦那様はぴったりついてくるのかしら?


「閣下…出迎えて下さったのは嬉しいですが、邸の案内までは…閣下のお手を煩わせては女主人として示しが付きません。執務にお戻り下さいませ。」


「しかし…慣れぬところには一人には出来ぬ。私の邸宅の使用人等はそなたに厳しくしたりはせぬと思うが…」


「使用人が主に厳しく接すると言われますか?」


ビクッと肩を揺らす旦那様。はっとし頭を垂れる使用人達。


「いや!そんなことは…私には優しく真摯に使えてくれているが…その…前に住んでいた…その…女人には厳しくてな。」


ああ。なるほど。以前おられたマリ-ゴールド様のことね。おかしいわね、ここには愛妾ではなく婚約者として入られておられたはず…。ならば使用人達が子爵令嬢とは言え婚約者となればいずれ女主人となられる方。その方を下に見るのはあり得ないのだけど…。


「公爵家出身で既に閣下に嫁いでいる女主人です。である私にそのような事をする使用人等不要にございます。私が整理致しますので閣下はお気になさらず。」


「不要…整理…。辞めさせると言うことか!」


「何か?」


いやいや。何で怒ってるの?使用人が主人に楯突くのよ?部下と上司じゃ無いんだからあり得ないよ。そんなことから教育しなきゃならない使用人なんて居ないほうがましだし。


「私は罪を犯したが許しを受けて今、ここにいる。だから使用人にも許しを与えて欲しいのだ!奥にも簡単に切り捨ててほしくない!」


この人は根が優しすぎる…いや、違うなキレイすぎるんだ。裏を見ずに表ばかりを歩いてきたことがはっきりした。


「閣下は自分が許されていると思っておいでなのですか?」


「えっ…??」


「まぁ確かに。許してくださっている方が一人だけいらっしゃいますね。」


「王妃殿下であろう?わかってい…ます。」


私は首を横に振り否定する。王妃殿下は貴方を諦めただけです。許してはおられない。


「違います。アレクサンダー王太子殿下です。」


あの方だけは旦那様を許し、愛しておられる。

目を見開き驚かれる旦那様。守るべき弟に守られている何て思っていなかったのかしら?


「閣下。閣下が犯した罪とは何ですか?」


「婚約者ではない子爵令嬢と舞踏会で3回連続でダンスをしたことだ。」


「そうですね。ですが、正確には違います。前王妃主宰の陛下もご臨席された舞踏会でダンスをエスコートを任されたギルバート様がその社交界デビューの婚約者ではない子爵令嬢と3回続けて踊ったことですわ。」


首を傾げ全くわからないと言うような顔…あのダンス事件からどれだけ経っていると思ってんの!?

教えなかったのか…あいつ!!


「どう違うのだ?皆が婚約者以外と連続でダンスを踊った事をあげていたぞ。」


「ここでは子爵令嬢は関係ありません。むしろ下位貴族なので同情票が入ります。」


「え?」


「王太子という身分であり、右も左もわからない初心者の令嬢をエスコートしていたのは貴方です。エスコートをするということは紳士であると理解していなければなりません。知らなかった、教育が不十分だったでは済まされないのです。紳士でなければエスコートに名乗り出てはいけない。それだけ責任のある役目なのです。デビュタントのエスコートを任せるということは令嬢の親にとってとても神経質になるものだと聞いています。ですから私も王宮でのエスコートは慎重に選ぶようにと申し付けられていました。だから令嬢達は少しでも高位貴族の令息をエスコートに選ぼうとしますわ。そうすれば教育不足等ないと皆が知っていたからです。ですが、それをあなた様は打ち砕いた。王族でさえも信頼できないと証明してしまったのですから。」


ピカ!ドンガラカッシャーン!と背景が描けるような出で立ちの旦那様。


「私がマリーを巻き込んだのか?」


「そういう認識も無かったのですか!?どれだけ社交界に激震が走ったか…信頼も何もかも今までの根底が崩れ去ったのですよ?貴方に娘を嫁がせるなど奥方達が許すと思いますか?大事に育てていた娘を悪の道に悪びれもせずに引きずり込むのですよ。恐ろしくて出来るわけがない。しかも、マリーが王太子をそそのかした悪女の様に王家は世論を操作した。」


まぁ操作したのは陛下だけではない…のだけどね。しかし…本当に詰め込んだだけなんだな。駄目なことだけ。ため息がでるわ。

ギルバートが正気に戻って立派な王太子になられては困るもんね。

徹底してるな。クレマチス!


「私はそのようなつもりは無かった!」


「では、マリーゴールド嬢のお父上のヒアシンス子爵とお話はされましたか?」


「いや…母上の遠縁でマリーは母上が後見人だからって…。」


「デビュタントを采配する事とエスコートを探すことまでは後見人の権限かと思いますが愛妾にする事には流石にヒアシンス子爵に了承を得る必要があったとおもわれますが?実父ですよ?」


旦那様の顔色が悪くなっているが仕方ない。ここで終わるわけにはいかないのだ。


「たっ確かに…」


「少なくともヒアシンス子爵に連絡をすれば状況が解ったはずです。ヒアシンス子爵でも実の娘を愛妾に手放しでしたかったわけではないとデビュタントでのエスコートの不備に対する諫言があったでしょう。」


「ヒアシンス子爵に謝罪を…」


ノロノロと動き出そうとする旦那様。謝罪なさるのね。ちゃんと教えれば理解できる方なのに…。残念だわ。


「もう、無理かと。」


「何故だ!」


「ヒアシンス子爵は心労が祟って既に鬼籍に入られておられます。次期として教育を受けていた子爵嫡男であるマリーゴールド様のお兄様は、これまでのマリーゴールド様の教育不足の責任を取ると申し出られ爵位を返納し、平民となられ隣国に渡られたと聞いております。」


隣国で文官となられ不幸には見舞われずには済んでおられています。マリーゴールド様のお兄様は引き際が見事でした。自分の代で不幸の連鎖を断ち切られたのですから。


「私は…何て事を。」


「事実マリーゴールド様を被害者だと思っていなかったのでしょう?加害者だと思っていませんでしか?良くて共犯者?」


「…そんな…。」


「閣下は何をもって許されていると思われているのですか?少なくとも王妃殿下は閣下を許してはいらっしゃいません。マリーゴールド様を許し庇われていたのです。閣下を通り越してマリーゴールド様を許す訳にはいかないからそのように見えただけですわ。」


「私はついでか…。」


ははっと乾いたような笑いをする閣下。いや…拗ねられてもね。いい加減諦めなよ。

ずっと執着されていたら王妃殿下も気持ち悪いから。

それを旦那様にしなければならない私。

王妃殿下の騎士として受けた使命でなければなぁー。


「私は…私にはもったいない位の妻を娶った様ですね。貴女に釣り合えるように精進したいと思います。これからもご指導よろしくお願いします。」


旦那様は頭を下げてそのまま去って行った。

執務室に戻っていることを願う。

自分の部屋に泣きに帰った訳じゃないよね!?


「閣下も戻られた事ですし、執事長?使用人を集めて下さい。聞きたいことがありますわ。」


私が入れる下位貴族用の会議室に使用人等が集まっている。


私があえて踵を鳴らして部屋に入ると全員が一斉に頭を垂れた。

私を女主人だと全員が認めていると解る。


「皆、集まってくれてありがとう。単刀直入に聞きますわね。クレマチスの手下は誰?今の時点で申告すれば退職金と推薦書、五体満足、クレマチスへの送迎付きで帰してあげるわ。でも、この時点だけよ。後からでは難しいかもね。特に五体満足が。クレマチスはもう必要ないもの。エーデルワイスが大公を管理します。」


クレマチスに連絡してどうするかを聞く時間も与えませんよ。そのまま潜伏してろって命令されたら困るし、そう命令されていたヤツだけ残して排除すれば良いのだから手間が減るし、そういう密命を受けているものは優秀だから貰うだけよ。


150人要るなかで50人が手を上げた。


「スミレ、エーデルワイスに50人送る様に伝えてちょうだい。」


私はエーデルワイスからつれてきた侍女に声をかけた。


「承知致しました。」


「この100人の中で上級使用人は要るかしら?」


20人程手を上げた。どうやら執事長も残っているらしい。


「では、後程個別に面談しますわね。楽しみにしていて。執事長?貴方を含めた使用人の雇用にあたっての書類全て揃えておいてね。ああ、スミレを連れていって手伝って貰うといいわ。量も多いでしょ?」


「畏まりました。」


あらあら?執事長?手が震えているわよ?


「色々と改編があるから大変でしょうけどよろしくお願いしますわね。」


私はにっこりと笑って告げた。さて、何人逃げるかしら?



私は3ヶ月かけてゆっくり使用人を吟味した。

上級使用人の選り分けですからね、慎重にしないと。

じわりじわりと苦しめた訳ではないのよ?一人一人面接に時間をかけただけなの。

執事長を最後に残して上げたのだけど…やつれて見えるのは私だけかしら?


「執事長。名前は?」


「もう良いです。解っておられるのでしょう?以前の人生は捨て去りますからつけて下さい。」


「裏切りはあまり好きではないの。」


「では殺しますか?あの時名乗りでなかった時点で覚悟はなんとなくしてました。足掻きはしましたが諦めもあります。クレマチスからも助けは望めませんし。」


『そんなことはありませんよ。』


どうもーと軽く手を振りつつバルコニーから窓越しに挨拶してくるヤツがいる。

無視無視。そこ出入口じゃないしね。


「そう?それならば、どうしー」


コンコンコンコン!


『気づいてますよね??悪い話ではないので、中にいれてください!』


チッ。

私は窓を開けても良いと執事長に促した。

優雅に入ってくるジャックがムカつく。


「こらこら。大公夫人となったのですから品格大事に!」


「公爵なのにバルコニーから入ってこようとする人にいわれたくありませんが?」


「ご心配無く。後程正式に入り口から入らせて貰いますから。」


「他家の当主が連絡なしに他領に入るなど…正気ですか?」


「ギルバート大公閣下直々にお許しを頂いていますからねー。いつでも好きに訪ねて良いとね!妬かないで下さいよ?」


あ?おいこらエーデルワイスの騎士なめんなよ。


「相変わらずお元気そうね?ジャック。何しに来たのかしら?」


早く帰れ?


「そこの執事長が殺され無いようにお願いしに来たのですが…必要なかった様ですね。そちらにお任せしますよ。雇用契約も破棄しますので。」


「へー。雇用ってこちらで給金出していたのに大きく出るわねー。昔の恩を盾に掠め取っていただけでしょ?」


「執事として教育したのはうちですが?でも…まぁこれまでの勤めに免じて解放して上げます。好きに生きたら良い。自分で選んだのだろう?主人を。」


「はい。」


強く頷く執事長。私の前に跪き頭を垂れる。


「これより大公閣下、そして夫人にお仕え致します。」


「二言はないですか?」


「二心は抱きません。ですが、信頼は行動で示したいと存じます。」


「良いでしょう。これより貴方はシンクレアです。」


ぱちぱちぱち。

にっこり笑って拍手するジャック。短剣投げていい?


「見届け人の役目はこれで終わりですね。では後程。」


「二度目はありませんよ。」


「わかっています。貴女の事です。私が領に足を踏み入れた時点で知らされてしまうでしょ?包囲網が出来てしまう前にと急いだのです。」


では。と、ジャックは窓から去っていった。

はぁーとシンクレアが入れてくれた紅茶を飲んで心を静めていると…

私の部屋から絶対に遠い筈なのに声が聞こえてくる。


「ジャック!来てくれたのか!?」


どんだけ声でかいのよ。それとも声が良く通るとか!?


「はい。連絡も無く急な来訪で申し訳ありません。閣下が婚姻後どうされておられるか居ても立ってもいられず…来てしまいました。」


「そんなこと気にするでない私とそなたの間でなはいか!来てくれて嬉しいぞ。妃を呼んでくれ。クレマチス公爵がお祝いに来てくれたとな。」


旦那様!チョロすぎる!しかも、ジャックはお祝いに来たなど一言も言ってないですよ!

どれだけ御目出度い耳をなさっているのですか!

全く…どっちもどっちだな。

シンクレアに応接室でもてなすように申し付け、私は支度に。

いちいちめんどくさいけど貴婦人が普段着で客人の前に出るわけにはいかないのよ。

さっきのは客人ではなく侵入者だったらからね。

入浴して髪を結い上げる時間が無いから着替えと化粧直しだけにとどめ、応接室に向かった。


「久しいですわね。クレマチス公爵。」


さっきぶりだけどね。

私はもう大公夫人だからな。もう閣下とは呼ばんぞ。


「お久しぶりにございます。大公夫人。お元気そうで何より。エーデルワイス公も喜ばれておられるでしょうな。」


はいはい。


「ジャック!どれくらい滞在できるのだ?泊まって行かぬのか?」


「申し訳ございません。閣下。私にも待つものが居る身。用事が済めば戻らねばなりません。」


「そうか。仕方ないな。アリーに怒られてはか敵わぬ。で?用事とは?」


「催促に参りました。」


「何の…」


コンコンコン。


「何だ?」


ガチャ。


「失礼します。シンクレアです。至急お伝えしたいことが出来ました。」


「は?シンクレアって…執事長、そなたそんな名前だったか?」


「はい。大公夫人につけて貰いました。」


「名前って簡単につけられる物なのか?」


「シンクレア?伝えたいこととは?」


え?無視?私がおかしいのか?とぶつぶつと呟く旦那様を横目にシンクレアに問いかけた。


「恐れながらアレクサンダー王太子殿下よりクレマチス公爵閣下へ通信が入っております。」


「なっ!あれは…。」


ジャックは驚きの顔でこちらを見た。

でしょうね。昨日王宮に入ったばかりの新しい連絡手段を大公家がもっているとはジャックも考えていなかったのだろう。

包囲網よりもこちらを優先したからに決まってるじゃない。

私は既にギルバートの妻なのよ。

主から許しを得て小さくても式をあげ、誓いを立てた妻なの。

手出しはさせないわ。


「王太子殿下からとなれば速やかにお繋ぎしなければ。シンクレア、公爵を通信へ案内して。」


「はっ。」


国王陛下との通信後ジャックは挨拶もそこそこに素早く帰って行った。

旦那様はアレクからの呼び出しならば何をおいても答えなければなっ!笑顔で送り出していた。


「ところで奥。通信とは何ですか??」


今ですか!それで良いのですか!と思いもしましたが画策されたり、陰謀に巻き込まれたりしたとしても怒ったりせず、旦那様は受け止めて下さっている。それは王族として一つの才能だと思いました。

王族とは上に立つ人間の様で色んな物に縛られています。自由などあるはずがない。潔白な人ほど向いていないのです。


このかたは間違いなくルドベキアの王子として生きてきた方だと実感しました。


そして、旦那様を初めて可愛い人だなと思った。


次はギルバート大公視点です。

時系列が?…の部分はご都合主義と言うことでお願いします。

敬称、役職難しいです。

ブクマ、評価よろしくお願いします。

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