アレクサンダー国王
アレクの視点です。
追加としては最後となります!
久々に長くなってしまいました。
よろしくお願いします。
「だから成人したその日に余に会いに来たってこと?」
「「はい。」」
久しぶりに会った妹達はそれはそれは美しく真のしっかりとした女性に育っていた。
「余は君たちに自由を与えてはきた。でもそれは王女としての勤めをいずれ果たしてくれるだろうと思ってのことだ。君たちには不憫な思いもさせてしまったからね。」
父上の…前国王陛下のベルとレースに対するなさりようは言うなればギル兄上への仕打ちよりも酷い。あれでも初めから息子と認め、愛してはいたらしいからね。私としては愛と言えども前に自己をつけよーね。と今でも思っているけど…。
ベルとレースに至っては娘として認めていなかったのだから愛も何も父ですらなかったのだ。私はそれを側に居ながら諌める事も止めることも出来なかった。出来たことは父上の睡眠への誘いを隠蔽する事とその間にアリーに託す事だけだった。
まぁ、そういう後ろめたい部分もあって父上の譲位後も王女宮で暮らす事を強要せず、両親の暮らす領地で過ごすことを容認してきた。
それなのに成人するにあたっての謁見でこれとは…。母上の養育はどうなされたのだ??
王妃を退いたとはいえあまりにも甘すぎる。
「陛下からのご恩情により両親の元で暮らせていたことは理解しております。王女としての勤めが王家に連なるものとして何よりも大事なことも。」
「わかっているならば…」
「私はホワイトレースフラワー王女としてではなく一民として市井におり、後ろに控えております庭師ルイフォードと一生を共にしたいのです。その為ならば何を犠牲にしても構いません。私の持つ領地、財、縁ら全てを王家にお返し致します。」
「縁もか?」
自分の言っていることが理解できていないに違いない。縁もということは両親、兄弟、姉それだけでなく、双子のベルフラワーとの縁まで捨てるということになる。それに全て財まで返したら王女として贅沢に過ごしてきたレースが生きていけるとはどう考えても無理だ。着替え一つままならないだろう。
「はい。」
それなのに間髪いれずに答えが帰ってきた。ベルはそれを平然と聞いている。レースは頭を臥せたままで微動だにしない。双子だからかこの二人には私達には入り込めない絆があると聞き及んでいたが…?
「ベルそなたはそれで良いのか?妹が家族の縁すら切ると言っておるのだぞ。」
「構いません。こうなったレースは止められませんし、阻んで恨みを買う方が疲れます。」
「疲れ…る…?」
どういう意味かな?
「ご心配無く陛下。私は自分の責を放棄する気は毛頭ありません。ベルフラワー王女として陛下に従い、王家の為、王族としてまっとういたします。やる気のないレースの事は捨て置いて下さりませ。反対し、王族に籍をおかせ続けてもこちらが割に合わない目に合わされるだけでございます。」
「割に合わない?」
「ベル!失礼ね!そんなこと…しそうな気はしてるわ!」
「「…。」」
ベルと後ろに控えているレースの相手と言っていた庭師が可哀想な物を見る目でレースを見ている。なるほど付き合う方が疲れるタイプなんだな。レース…。
「くっ。あははは。あい分かった。ベルからの陳情もあったゆえ考慮しても良い。こちらとしてもそろそろ良い時期かと思っていたところだしなー。では覚悟を見せておくれ。」
「「何なりと。」」
二人の揺るがない表情を確認して後ろにいるもう一人の当事者に声をかけた。ここに寄越すぐらいなのだから人となりは確認されてはいる。私の手元にある彼の経歴は、まぁ興味の沸くものばかりだったがな。
「ルイフォードと申したか?」
「お声かけ頂き恐悦至極にございます。御尊顔を拝し…」
「堅苦しい挨拶は良い。ルイフォード、レースと同じ覚悟がそなたにはあるのか?」
「はい。」
顔色はかなり悪いが迷いのない返事だった。
「では、生涯不妊となる薬と仮死となる薬をルイフォード、そなたが作れ。レースよ、全ての縁を切ると言うのならば未来の家族の縁も切って貰う。生涯不妊となる薬と仮死状態になる薬はレースそなたが飲むのだ。薬をのみ、王女として死を迎えた後はルドベキアにいて貰っては困る。家族の縁も切ると言ったのはそなたはだ。国を出る様に。そして、ベルよ、そなたはその全てを見届け、余の命を執行せよ。」
「御意。」
「陛下の命しかと承りました。」
「っつ…。畏まりました。」
ベルとレースはあまり驚いていないな。予想の範囲内だったのだろう。レースが子などなせば災いとなるに違いない。国すら危うくなる。当たり前の処置と解っているのだろう。でも、ルイフォードは違うようだ。体が震えている。薬師として体を害する様な薬を作り伴侶となる人に飲ませなければならないのだ怯えるのは仕方ないが…この者本当にロデリアの暗殺者だったのか?
「怖い話はここまでにしよう。国王としての顔はここまで。ここからは兄として話すよ。」
「「アレクお兄様…」」
「レース?伴侶を得られたことおめでとう。全てを捨ててでも良いと思える相手に出会えることは稀な事はだよ。お互いを大事にしなさい。ベル?あまり気負い過ぎないで良いよ。うちのニックとアリーは王子王女として確かに使命を全うしてるけど好きなことにも全力だからね。ベルは何かに追われているように見える。少し…外の世界を見ておいで。」
「外の世界…?私は王女として国に」
「うん。固い!兄弟姉妹の中で一番真面目何じゃないかな??少しはニックとアリーとレースに分けて欲しい位だ。ベルはあまり会うことがなかったはずだけど…ギル兄上に似てるのかもしれないね。」
「っつ…。」
いろんな感情が入り交じった様な顔をして俯くベルの背中をベルがさすっている。そんなにギル兄上に似てるは嫌だったのかな??悪いことしたな…。私は母上とニックは父上とアリーは半々かな?に似ていると言われることが多い。全部が全部じゃないけどね。ニックの様に私はねちっこくないし。
「国ばかりにいたらその国の常識が当たり前になりやすい。一歩でれば滑稽としか言い様の無いものでもね。私は王家とルドベキアの常識が可笑しいとラムとティアに教えて貰っているよ。だからね。ベル、君にもそれを教えてくれる人を見つけて欲しい。ルドベキア王族初の留学生としてこれから3年で3か国回っておいで。その3国には君と年の合う世嗣ぎがいる。」
「私に選択肢を下さるのですか?」
「うん。でもごめんね。3つしか用意出来なくて…。」
「十分でございます!!」
「良かった。その3つの中ならば誰を選んでも大丈夫だからね。ベルがこの人ならと思う人を選べばいい。選べないと言うならばルドベキアに足りない物はこれだと感じる所から探すのでも良いよ?」
「アレクお兄様…ありがとうございます。」
私はベルに微笑みかけてレースへと目線を移した。
「レースはニックが提督として赴いた新大陸に行く気はないかい?」
「新大陸でございますか?」
「うん。ニックがあちらの植物を調べる為の人材を探していてね。ルイフォードは母上が専属として抱える程の庭師何だろう?実力は十分だ。君たちを知るものはニックと数人の側近だけだし、住むところとしても一番安全だろう?新大陸へ赴く為の準備や手続きは私が援助しよう。」
「アレクお兄様…」
うん。可愛いね。私の妹達は。兄としての気持ちだけでは無いんだけど…。母上の逃亡先候補を潰しておくと言う意味合いもあるんだけどー。言わぬが花だよね?
「可愛い妹達の成人の門出だ。兄として贈り物だよ。受け取ってくれるかい?ベル、レース?」
「「はい!」」
「それからルイフォード?」
「はい。」
そんな小さくならなくても…怒られたワンちゃんみたいになっちゃってるな。
「私の可愛い妹を奪っていくのだから幸せにならないと困るよ。」
「必ずレース様を幸せに致し」
「君もだ。」
「え?」
「君の生い立ちは調べさせて貰ったよ。君には私の民としての幸せを与えてやれなかった。すまなかったな。」
「陛下はまだ生まれる前の事です…。責は」
「それは違う。王家の代々の政治のせいならば受け継いだ私の責となる。ルドベキアの闇を全て取り去る事は出来ないかもしれないが…君のような不幸が少しでも減るように努力すると私の義弟なるのだ。約束しよう。」
「ありがとうございます。義兄上。」
「ベル、レース、ルイ。幸せにおなり。」
「「「はい!!」」」
可愛い妹達と義弟の笑顔を見られた。うん。満足。
後は…。
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「陛下?どうなさいましたの?」
「え?ああ。すまない。久しくガーデンでのお茶などしていなかったからな。呆けてしまったよ。」
今日は第一王妃プリムラと第二王妃ブルバディアと後宮での久しぶりのゆったりとした時間を過ごしている。
「何時も慌ただしく政務に追われておられるのですから物思いにふけられても誰も責めませんわ。ただ私達は…お疲れなのではと心配しただけですの。」
二人の妃はそれはそれは仲が良い。もう、姉妹なのでは?と思うぐらい意志疎通が素晴らしい。今もブルバディアがプリムラを庇うようにフォローしている。
いや?私だって解ってるからね。そんなことで怒ったりしないから。
「ああ。解ってるよ。何だか月日の流れが早いなぁって思ってね。ギル兄上からは先日スノーフレーク義姉上の懐妊の知らせがあったし…自分の妃に敬語で接している兄上は見たくなかったけどね。アリーの子も無事に生まれたし、ジャックにそっくりだったから少しざまぁと思えたしね。ニックも正式に提督としてと新大陸に無事に着任できたしね。ジル殿下と結婚してからは手紙もあまり来なくなったけど。」
「アレク?拗ねてるの?」
「陛下は本当に兄弟を大切にされておられますわね。私の故国ではあまり無い感覚ですわ。兄弟姉妹はライバルでしたから。」
「…。違うよ。皆幸せになれたのなら良かったと思っているんだよ。私の手の中に居なくてもね。」
ラム?ティア?なんでそんな暖かい目で見てくるのかな?
「父上ー!ラム母上ー!ティア母上ー!見て下さい!剣をまだ練習用ですが、訓練のために受けました!」
息子のディックが走りよってくる。ティアが産んだ第一王子のロデリックだ。後ろからはディックを見てくれていた第一王女のアリスが追いかけてきている。
第一王女のジャーマンアイリスは既に後宮を出て王女宮で過ごしているが第一王子のロデリックと去年生まれた第二王女のウィンターコスモスのウィンの面倒を今日1日ティアの代わりに見てくれると言ってくれたので任せている。三人とも仲良しだ。
後宮は運営はラムが後継者の育成と外交はティアが受け持っている。何故ラムの仕事が少ないのか。それはラム個人が数学者としての仕事を多数受け持っているからだ。
初め第一王妃が個人で仕事を受け持つ事に否定的な意見が多かったが、王妃の空模様という可愛らしいと思われていた情報提供が国の災害を著しく減少させたと言うことが全国民の心を鷲掴みにしたからだ。
それに国の第一産業である農業にもこの天気予報は重宝された。今やルドベキアの専属産業として発展しつつある海運業としても切り離せない情報となっている。
海運業は新興貴族などの柔軟なものが多いが、農業を支援する貴族等は、保守派が多い。その貴族らもこの世論は無視できなかったのだ。
私は母上の言葉を思い出す。
«数学は社会を変える力があるの。だから王家が保護すべきと思ったのよ。»
«彼女ならば自分でいくらでも功績を用意するでしょうからね。»
私は王となって初めて母を畏怖した。未来を見通しているかのような広い目とどんな小さな声も聞き逃すことの無い長い耳。母を守る無数の盾と剣。母を見れば見るほど彼女は王の様だった。様であって違うのだと思えたのは母が何にも執着していない心が見えたからだ。
母は幼い頃から両親や周りの大人達の手助けなく一人の能力と努力だけで踏ん張り続けたのだ。しかし、その努力さえも王家と実父とぽっと出の子爵令嬢らのお花畑達に潰される所だったのだ。
母の絶望は海よりも深かっただろう。
その時に母の心の一部は壊れてしまったか死んでしまったのではないかと私は思っている。
自分かそれ以外の認識しかないのではないかな。
そうでなければ説明がつかない。
人はあんなにも自分がいなくても良いと思える状態を作れるものだろうか?
人とは誰かに必要とされたいものではないのだろうか?
父が…前国王陛下があんなにも執着し、独占したがった理由も解る。そうしなければ母はある日突然居なくなってしまうのではないのかと不安だったのだろう。誰にも執着しないと言うことは誰も大事にしていないのと同義だ。
だから父は最後まで母を選び続けた。母を失わない為に。
国よりも身分よりも夫を選んだ父を息子としてだが、私は尊敬している。
父と国王としては全然ダメだったけどね。
「ディックは剣術の授業を始めたのか?」
「はい!父上!でも、剣術の授業だけではありませんよ。ちゃんと礼法や地理、歴史の授業も受けています。」
ディック、目をそらしながら答えるでない。好き嫌いが解りやすいな。まぁ授業も始めたばかりだこれからだな。王族は好き嫌いを作ってはいけないのだ。弱点を作ると同義だからな。と思っているとティアは清々しい笑顔でディックに声をかけた。
「ディック?父上の目をまっすぐ見て答えなさい。誠実さは美徳ですが我々王族には必要ありません。自分の好き嫌いを他人に悟られてはなりません。家族であろうともです。」
「…はい。母上。申し訳ありません。」
しゅんとしてしまう。息子。でもここで息子を庇うわけにはいかない。もう次期の教育は始まっているからだ。
「ディック?ティア母上はディックの為に注意をして下さっているのですよ。次から気を付ければ良いのです。家族の前なのですからたくさん練習して失敗して学べば良いのです。」
「はい!父上、母上、姉上。ご指導ありがとうございます!精進致します。」
アリス。有難い。良い娘に育ったな。ディック達はアリスに連れられて部屋に戻っていった。
彼女がディック治世を支えてくれれば我がルドベキアは安泰なのだが…公爵家は母上の御子にしか目がないからな…レースとベルが居る限りありえないだろう。
そう思っていると…ラムが口を開いた。
「アレク。王様になってから元気ないね。唯我独尊のアレクはどこにいっちゃったのかな?」
こめかみがピンっとしてしまう。どういう意味かな?私は我が儘な王子だったってことかな?ラム?
「元気が無いのはアレクじゃないわ!アレクはにっこり笑って腹黒いことをしなきゃ!結局何の功績もたてられなかった癖に偉そうな公爵家何てボコってやればいいのよ。お義母様の能力のおこぼれで優位にたててる気になってるだけじゃない。」
腹黒って…そんなはっきりと言っちゃうのはどうなのかな?ラム。いくら無駄な会話が嫌いだからってもう少し包んでくれるかな?
「…。ベルとレースは私の権利の内にはいるのだろうか?私はあのこ達のために…なにも」
あの時、私に出きることは王宮から出してアリーに預けてあげることだけだった。妹達の為に出来ることはまだあったかもしれないのに…。
「陛下。王子王女の進退、婚姻は王の持つものですわ。お義父様とお義母様方は退位に際してベル殿下とレース殿下の権利を手離されておいでです。誰も犯すことの出来ない物です。公爵家はそれを…前王妃殿下の姿の前に目が雲ってしまっていますわ。」
「ラム、ティア。ありがとう。吹っ切れたよ!うん。私、王になってから大人しすぎたよね?戴冠まではとか体制が整うまではと思っていたけど~もう、王になってだいぶ経つし、嫡男も居るし、これからも生まれるだろうし心配いらないよね?」
はーなんかスッキリしたよ。愛する妻たちとのお茶会ってほんと癒しだよねー。
そう思っていると妻たちが私を前に内緒話をしていた。
「やりすぎたかなぁ?」
「いえ。生き生きされておられるのですから良いのではないですか?」
この後も二人と楽しくお茶会を続け、楽しく休暇を過ごした。
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「陛下!陛下!聞いておられるのですか!?」
「え?ああ。すまない。あまりにも可笑しなことをほざく輩がいるもんだから余は間違った所に迷い込んだのだと脳内で処理していたのだよ。」
「何ですと!?」
2公爵の驚きの顔とジャックのこいつどうしちゃったの?とした顔を見れるのは面白ろかったけどね
。
「まぁまぁエーデルワイス公落ち着かれませ。妹殿下を急に亡くされたのです。陛下とて人の子通常の精神ではおられますまい。我々も熱くなりすぎているのですからな。」
「しかし、ラベンダー公よ。我々を輩呼ばわりしたのですぞ!」
「確かに。陛下?口が過ぎるのではないですか?」
私はレースの逝去に伴い、3公爵との話し合いに応じた。っていうか別に呼んでも無いのに押し掛けて来たんだけどね。
口が悪いとかジャック、お前にだけは言われたくないが?
「レースに起こったことは不幸なことだった。まだ成人したばかりのこれからと言うときに…我々もまだ悲しみ、レースの弔いをしていたいのにベルの嫁ぎ先の話をとはいささか先走りすぎではないのか?」
「そっそれは…。」
「陛下もおっしゃった様にベルフラワー殿下は成人しておられます。嫁いでいても可笑しくない年齢であるのに婚約者すら決まっていない。」
「それを言うならばアリスは?」
「「えっ!?」」
「ジャーマンアイリスはベルやレースよりも早く生まれている。数日違うだけだがな。成人した王女と言うならば何故アリスの名が上がらぬ。よもやお前達3公爵の中でアリスは王女ではないと申す訳ではあるまいな。」
「まさか。我々公爵家がそのような王族軽視をするはずがありません。ジャーマンアイリス王女殿下も去年生まれたウィンターコスモス王女殿下も大切な王族でございます。ラベンダー公もレース殿下の逝去で混乱しておられるのでしょう。」
ジャックが直ぐにラベンダー公のフォローに入った。なるほどあくまでもそちら側としてジャックは出席しているようだ。ならば別に遠慮は要らないな。
「ならば問題ないな。アリスかウィンを降嫁させると約束しよう。」
「は?」
「なっ!」
「え?」
「何を驚く。公爵家に誰を降嫁させるかを決めるのは余である。ベルもアリスもウィンもまだ婚約していない。先代もお決めになられなかった。ならば私が決めるのは当たり前であろう?」
ラムのおすすめ通りにっこり笑って腹黒い事言わないとね。期待は裏切らないようにしないと。妻たちに飽きられたくはないからな。
「ベルフラワー王女殿下はどうなさるのですか?国外に嫁がされるので?シルクジャスミン様の側を…」
「クレマチス公。幼い頃からベルはそなたの領地で世話をしていたから可愛がっているのは解るが、お前の妹ではあるまい。王族の婚姻は余の権限だ。公爵ごときが指し出るな。」
「っつ…申し訳ありません。ですがお母上であらせる前王妃殿下はこの事をご存知なのですか?」
「何故母上の意見を聞かねばならぬ。前王妃の内政干渉を余が許すとでも?母上もばかにされたものだな。」
ジャックの顔が朱色に染まる。この顔!見たかった!
「それとも我が血は要らぬと申すか?」
「「「滅相もございません。」」」
「そなたらの意義は血を繋ぐとこのはずだ。我が父、先代の血は既にクレマチスに入っているし、ギルバート兄上にはエーデルワイス公の二女スノーフレーク嬢が嫁ぎ大公妃となり後継も生まれる。新しい公爵家は父の血だ。繋ぐことを目的としておるには父の血が入りすぎておるのでは無いのか?それなのにより多くの血をと求めると?しかも我が血ではなく、父の血をか?」
「「「…。」」」
「それにそなたらに借りがあったのは父と兄のみ。余にはない。降嫁を願うのであればこちらにも利が必要な筈だが?それは何処にあるのだ?」
「「「…。」」」
「クレマチス公。そんなにベルを降嫁させたいのであればお前がアリーと離婚するか?」
それまでシンクロして顔を横に降ったり沈黙したりしてた3公だったがジャックが動く。
「陛下の意向に従います。エーデルワイス公には今回は見送って貰い、ラベンダー公にジャーマンアイリス王女殿下かウィンターコスモス王女殿下の降嫁を考慮していただければと思います。王家への利はラベンダー公が見合うものを差し出すでしょう。」
すぐ、ラギるじゃん!エーデルワイス公の魂が抜けかかっているのジャック見えてるかな?
「王宮から陛下のお母上と妹御を逃がすようにお手伝いしましたことは利となりませんか?」
ラベンダー公は苦々しい顔をしながら訴える。何を搾りとられるのか恐々としているのだろう。
「え?あれは母上とアリーに味方したんじゃないの?余は何も聞かされていなかったしー。見返りが必要ならば母上とアリーに言ったら?あっでも二人は悲しいかもねー。見返りを求めた救済だったのかってねー。」
「…。(プシュー)」
「悪魔だ。」
「魔王だ。」
エーデルワイス公の魂完全に抜けちゃったみたいだね。
「うん?何かいったかな?」
「コホン。いえ何も。我が公爵家に何をお求めで??」
「理解してくれて嬉しいよ。ラベンダー公。では、王立の孤児院を作る予定何だ。数ヶ所ね。人材派遣とノウハウを教えてくれるかな?」
「派遣ということであれば給金は公爵家負担と言うことですかな?」
「うん。そういうことだね。」
「…畏まりました。王女殿下の降嫁の栄誉を得たいと存じます。叶いますならばブルバディア第二王妃殿下の御子であるウィンターコスモス王女殿下を賜りたい所存。」
「第二王女を望むと?」
「はい。跡継ぎとしている公孫とは年が離れますができればこれからを見据え新しい血が必要と存じます。大切にお迎え致しますのでご一考下さい。」
「さすがはラベンダー公。理解が早くて助かるよ。あっ!そうそう。クレマチス公。宰相としてきいてね。王立の孤児院の話をアリーにしたらクレマチス公爵夫人として寄付したいと言っていたよ。母上も援助して下さるそうだ。義姉上である、スノーフレーク大公妃も是非協力させて欲しいとね。」
「貴婦人方がこぞって賛同する孤児院です。王立となるのであれば宰相として私が力を振るうのは当たり前の事。ラベンダー公の協力も得られるとなれば失敗などありえません。」
「それは良かった。補佐としてアリスを付ける。鍛えてやっておくれ。」
「ジャーマンアイリス王女殿下をですか??」
何で俺が?って顔に出てるからね。ジャックさっき怒られたばかりなのに少しは謙虚って言葉をしらないのかな?
「うん。できればディックの補佐をアリスには期待しているんだ。クレマチス公がアリスを教育してくれるのならば先程の母上をバカにした発言はアリーにも母上にも黙っててあげるよ?」
「喜んで承ります。立派な宰相にして見せます。」
ジャック?そんなに仰々しく胸に手を当てて宣言しなくても言わないよ。約束を守ってくれれば。
「うん。楽しみにしてる。じゃあ話は終わりだね。そこで呆けてるエーデルワイス公を連れて帰ってくれるかな?」
この数時間でものすごく老けてしまったエーデルワイス公が不憫だった。後で何か精のつくものを贈ってあげようかな?
はぁーものすごく面白かったなぁ~。
エーデルワイス公爵は娘をギル兄上に嫁がせているのだからそもそも姉妹のベルやレースを求めるのは可笑しいよね。ラベンダー公爵は孤児を支援している公爵が隣国とはいえ他国の血を嫌ったりしたら可笑しいしね。そんなにベルやレースを求めるならばアリーと離婚するかい?ってジャックに言った時の顔はすごかったぁー。
なんでも自分達の思いどおりになるなんて思わない方が良いよね。
って思っていたけどそれは私にも言えること。
少しは母上に勝てたかな?
ルドベキアの発展において語られる国王の名前はマクシミリアン国王、アレクサンダー国王、ロデリック国王だろう。
その中でもアレクサンダー国王は王立孤児院の設立や女性の政治参加に於いて礎を築いた人物だ。
平民への教育はマクシミリアン国王の時代から始まっていたが、孤児院の設立で平民への教育が更に広がり国民の識字率や生存率は大幅に上がった。ロデリック国王の時代では王姉であるジャーマンアイリス王姉殿下がルドベキア初の女性宰相に就任しているがその教育に尽力したのは他でもないアレクサンダー国王であったと記されている。
女性の爵位相続も今は当たり前だが、アレクサンダー国王の代に法が改正され可能になったのだ。
アレクサンダー国王はルドベキアの黄金期を迎えるにあたって必要なものを全て知っていたのでは無いかと言われている。
アレクのざまぁ回でした。
アレクは書いててとても楽しかったです。
読んで下さりありがとうございました。




