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シルクジャスミン視点

悪役令嬢物を書いてみました。


私としてはこうかなと思いつつ書いております。


とても寒くなるようです。大雪の危険もあるそうですので、お気をつけください。

「ヤバイわ!!」


私は叫びながら目を覚ました。

天井は何度も見たことがある筈なのに見たことがないような…不思議な感覚。

壁画か!?と言わんばかりにキラキラの絵が施されている天井なんですけどね。

日本にはなかったわ…白が多いと言うか…シンプルと言うか梁?が天井であったりもする日本の物になれている私としては目がチカチカするけども…。


ベッドもふかふか。何でこんなに大きいのかね。端が遠すぎるわ。何人寝れるのよ!と突っ込みたくなる大きさ。


そう。私は貴族であり、しかも、王族は別として上から二番目の侯爵家の令嬢として16年生きてきた。母は幼い頃に亡くしている。5歳頃だっただろうか?それからは暖かい家庭と言うものからは遠退いた。冷たい空気の屋敷。父は単語しかしゃべれないのか?と言いたくなるような短い会話。父上至上主義の使用人たちとの付き合い…思い出しただけで吐き気がする。極めつけが唯一の防波堤であった母が亡くなって喪が明けた次の日には王族のごり押しで当時第一王子で現王太子の婚約者になってしまった。拒否権は無かったのだ。

幸せとはなんぞや?


そして、今しがた転生したのだと理解したばかりである。

物凄くメンドクサイ。というかもう一度気絶したい位だ。あと、一週間位寝ていても罰は当たるまい。

今まで1日も休むことなく妃教育を来る日も来る日も受けてきたのだから。10歳というまだ、まだ、子供の時期から。しかも、王族のごり押しでなった婚約者なのに、まぁ婚約者である王子は冷たい。名前もうろ覚えだ。何故ならば初対面で王子殿下と呼べと言われ名乗りもされなかったからである。


これで性格が穏やかな子に育つと何故思うのか??


私が転生する前にいた日本でそんなことを強要すれば虐待だし、子供の労働だ。しかもブラック会社張りの。実際に私が社畜のように働いていたブラック企業より酷いと思われるが。

転生しているのだから日本で私は死んでしまったのだろう。にわかに覚えていないが絶対に過労死だと思う!過労でふらついて事故死とかね!絶対そうだ!

へへーん。

過労がばれて会社が炎上しているに違いない!

ザマァ~。


と現実逃避をしている私に侍女のコデマリが泣きながら走り寄ってきた。


「お嬢様ー!目を覚まされたのですね!良かったぁー。お嬢様がこのまま死んでしまわれたらと…ご心配致しましたよ!」


うん。そう少しほっておいてほしかったな…。しかも、力強いな。しがみつく握力がものすごいんだけど…。本当に侍女??


「心配かけましたね。コデマリ。」


誰この人!?見たいな目を向けるの止めてくれるかな?まぁ。解るよ。神経質なご令嬢だったもんね。


「お嬢様!私の名前ご存知だったのですか!?」


知らないと思われてたのかよ。ヤバイな。知ってるに決まってるじゃん!未来の王太子妃なめんなよ!使用人の顔と名前を覚えるのは貴族としてあたりまえである。何故なら防衛の観点からでもある。

知らないうちに使用人が暗殺者に変わられたりするのです。

何度と危ない目にあってきた以前の私としては使用人と馴れ合わずだけど顔と名前が一致し、知らない使用人が身近に入ってこないようにと気を張っていたのだ。

だから、いつもピリピリしていたとも言える。

幼子になに求めてるんだよ!!


「当たり前じゃない。知ってるわよ。ただ…怖かったの。色々とあったから…裏切られるのも嫌だったし…。ごめんなさいね。」


私は素直に答えた。そして、謝罪も。だって実家だけは味方ばかりにしておかないと疲れるわ!ずっと警戒していた以前の私は疲れきっていたし…やり方がわからなかったんだよね。大丈夫!これからは私が一番の私の味方よ!大切にするわ!私を!


「お嬢様…。申し訳ありませんでした。そうですよね。安心して心を開くなんて出きるわけがありませんよね。」


コデマリは項垂れてしょんぼりしている。可愛いな。

私、美少女美魔女大好物なんです。ご心配なく愛でルダケデスヨ~。

取りあえず頭撫でとこ。よしよし。


「コデマリの事は信頼しているわ。ずっと言えなくてごめんなさいね。これからも支えてくれるかしら?」


ぱわぁ。と笑顔でうなずくコデマリ。カワユス。


「もちろんです!」


「ありがとう。私どれぐらい寝てたのかしら?それと何で体調を崩しているのか…覚えていないのよ。教えてくれるかしら?」


「お嬢様…」


お可哀相に…とまたうつむいちゃったわ。カワユス。

頭を再度撫でているところに


ドバタン!!


「ゼェゼェ。ゴホッゴボッ。」


大丈夫か?


「ゴホッゴボッ。ゼェゼェ、ヒューヒュー。」


ヤバくね?父様は喘息持ちなのかしら?

私はコデマリに耳打ちした。内容を聞いたコデマリは急いで走って用意をしている。

そして、私は今正に私より侍医が必要な父親に声をかけた。


「お父様。落ち着かれませ。こちらにお掛けください。いつも走ったりなさらないのに無理して走るからですよ!」


私は隣に座った父親の背中をさすり、ゆっくり息を吸うように促した。目を見開きながら私の顔を見てうなずくお父様。あら。意外にカワユス。

え?美少女美魔女では無かったのか?って私、美しい者全般大好物のようですわ。

そう想っているとコデマリが近づいてくる。


「お父様。こちらを。ハチミツ入りミルクティーでございます。ゆっくり湯気を吸い込みながらお飲み下さいませ。コデマリ。これで咳が落ち着いたら甘い飴を持ってきてくれる?」


せき止めの民間療法の一種だ。ハチミツは咳止めの成分が入っているし、蒸気は喉に善い。飴は喉を潤してくれるからここまですればおさまるだろう。


咳が落ち着いてきた。驚く程の効果にお父様もコデマリもお父様に付いてきた執事長も侍女長も呆然としている。


「シル。ありがとう。病み上がりの娘に気を遣われてしまうとは情けないな。すまない。大丈夫か?」


あら。更にビックリお父様は文章がしゃべれたらしい。そらそうだ。外務大臣を担えるのだから交渉やらが得意でなければ出来まい。


「はい。ご心配をお掛け致しました。もう大丈夫ですわ。お父様も大丈夫ですか?」


そして、名前も思い出したわ。コデマリもお嬢様としかよばないから…私、シルクジャスミン=フォン=ヘラニウムでございます。父はあー。ヘクトル=フォン=ヘラニウムだった気がする。


「ああ。すまないな。年甲斐もなく走ってしまったよ。お前が昏睡状態に入って3日だ。侍医は大丈夫。ずっと精神的にはり詰めっぱなしの寝不足がたたっての過労だと怒られた。寧ろ黙って寝かせてやれとな。近づくなと言われて…。」


ナイスアドバイス!侍医!私ももう少し眠っていたかったがな。

しかし…あんなに冷静沈着。顔面膠着状態が常だったお父様があまりに人間に見えるのは何故かしら??

私も精神が落ち着いて色んなものが見えるようになったとか?


「お父様。コデマリにも聞こうとしていたのですが…私、気を失ったこと事態覚えていないのです…教えていただけますか?」


可哀相にとつぶやきながらお父様は続きを話してくれた。


「王妃殿下にシルが呼ばれお茶会があったことは覚えているか?確か3ヶ月前に。お前はあれから可笑しくなっていった。全く笑わなくなったし、ちょっとの事でイライラしてな。どうしたのかと私も心配になって調べたんだ。その茶会にはもう一人令嬢が呼ばれていた。王妃殿下お気に入りの子爵令嬢。しかも、最近平民から養女となったばかりらしい。」


あー何か段々思い出してきた。王妃殿下の遠縁で行儀見習いの為に王宮に召し出したと紹介されたのだ。何故か王太子殿下がぴったり寄り添って。しかも、もう一人の幼馴染みの殿下の護衛騎士ジンでさえも側に付いていた。

スッゴクシルクちゃん傷ついたんだよねー。見たこと事も無いような優しげな笑顔をその令嬢にむけるもんだから。二人の幼馴染みは自分である筈なのに…。思い出したら腹が立ってきたな。


「王太子殿下までその令嬢を気に入り、3ヶ月間ずっとその令嬢の面倒ばかり見ていたらしい。お前と政務をほったらかして…。まぁ。王太子という役職は半端な覚悟では出来ないものだから、癒しもちょっとしたサボりも成人する前の期間ならばと目溢されていた。」


「へぇー。」


すごく冷たい声が出た。私には休みや癒しなど無かったのに。あいつには許される訳だ。それに、皆知ってたんだ。知ってて私の気持ちは無視されたわけね。なるほど。


「だが、先日舞踏会で王太子殿下はあろうことかその子爵令嬢のデビューだからとエスコートを努め、ファーストダンスもその子爵令嬢と踊り、セカンドだけでなくサード迄子爵令嬢と踊った。」


「ああ。思い出しましたわ。その場で悲鳴を上げて私は倒れたのでしたね。」


限界だったのだろうな。しかし、この見たこと聞いたことのある展開。平民上がりの子爵令嬢。王太子、婚約者の侯爵令嬢、護衛騎士といえば!

絶対乙女ゲームだ!!やったこと無いけど!ノベルならば任せなさい!

そして、私は悪役令嬢だな!土台ならばバッチリだもんねー。ならないほうが可笑しいわ。

今までシルちゃん頑張ったのね。

ゲームのタイトルやら内容もしらないからどうしようもないが…これから私が婚約破棄されたり、国外追放されたりするわけね。

浮気したアホ達の為に。こんなにも努力してきた私を踏み台にして。

あははは。こっちが踏み台にしてやる!!


「そっそうだ。その場には陛下もいらっしゃってな。さすがの王太子の有りようにお怒りになり、王太子はそのまま謹慎となった。シルの療養も王宮でとお話があったが私は辞退させてもらって連れ帰ったのだ。お前も望まないだろうと思ってな…。」


お父様?顔汗酷いですわよ。え?私の顔も青筋が酷い?あははは。それは当たり前かと。しかも、本当によくしゃべりますわね。


「連れ帰って頂いたことは有難かったですわ。もう二度と王宮には参りたくありません。いいように使われるのはもう、うんざりなのです。王族にも、お父様にもですわ。お家に迷惑がかかると申されるのであれば勘当でも修道院に送るのでも構いません。お父様の気が済むようになさって下さいませ。」


「シル!そんな悲しいこと言わないでくれ!」


「では、婚約解消の手続きに入ってくださいませ。」


「それも出来ない。他に王族に嫁げる貴族令嬢がいないんだ!今回の事で更に人数が減ってしまった。あと乳幼児くらいしか残っていないんだよ!それに今さら王太子妃教育なんて無理だよ!」


「だから?」


「っつ…。」


「お嬢様!お父上に向かって」


「使用人風情が主家らの話を遮るとは何事か!母上がおられない以上ここの女主人は私だ!侍女長がでしゃばることではない!」


皆の顔が強ばる。父様でさえ指摘され初めて気がついたというような顔だ。


「シル…。」


「お父様にもはっきり言っておきます。奥向きは私が取り仕切るのが筋というもの。使用人を束ねることは女主人の範疇。どうかお口出しはなきように。私に王太子妃の勤めを果たし続けろと仰り、貴族の義務をなせと仰るのであれば権利も下さいませ。」


「解った。シルの言う通りだ。道理だな。」


「では、執事長。侍女長は即日解雇。紹介状も書かない。但し、長年の勤めに免じて退職金は出してやりなさい。荷物をまとめ次第屋敷から辞すように。」


「そんな!坊っちゃま!」


お父様は首を横に振るのみ。当たり前である。親子の情より貴族らしさを娘に求めたのだ。自分の乳母ぐらい切り捨てられなくてどうする。しかも、この女。私のお母様が気に入らず、女主人のお母様の意見など聞いていなかった。なくなったあとは似ている私のこともずっと冷遇していたのだ。しかも執事長も見て見ぬふり。


「執事長返事は?」


無いならば次はお前だぞ。と暗に告げる。


「畏まりまして。」


「そんなー!!」


他の使用人に抱えられながら元侍女長は連れていかれた。


「後任の任命は後程私が選定する。執事長。私の執務室に使用人名簿をおいておきなさい。リストには執事長。そなたの名も入れておきなさい。」


別にあなたをそのまま長としておくとは言っていないし、その気もない。


「畏まりまして。」


「侯爵。あの元侍女長の所在を探してずっと面倒を見るなどと周りに示しがつかない事はなさらないで下さいませね。」


「…っつ。解った。」


私は侯爵と呼んだ。すでに父ではないのだと告げたも同じである。心が痛い。でも、もう引き返せない。私は戻りたいと告げたのに…。


「それと私が妃となることは理解致しました。殿下の思いも。ですが、全てをきくわけには参りません。」


「当たり前だ!」


「子爵令嬢を愛妾とするのならばよしと致します。そして、殿下が迎えられるのはその愛妾のみ。第二王妃や側室は放棄していただきたいのです。」


「殿下の後継はシルが産む子のみとするわけだな。」


「はい。それがのめるのであれば私は王族に嫁ぎます。愛妾ですので、私が運営する後宮費から捻出する必要はありませんしね。王太子殿下自身に払っていただいてくださりませ。それと侯爵が寄付するのは私個人もしくは、後宮に援助して下さい。間違っても王族に援助なさいませんように。」


「解った。シルの言う通りにしよう。」


「ありがとうございます。侯爵。」


父を辞めた侯爵は項垂れながら私の部屋を出ていった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




あれから1ヶ月が過ぎた。私は王太子が条件をのむまで絶対に王宮には出向かなかった。

王太子が怒って侯爵を連れて侯爵家に出向いて来てたけどね。


「家をお間違えのようですわ。王宮までおくってあげて下さりませ。侯爵。ああ。それと貴方のお母様とお友達であった当家の元侍女長はこちらを辞しました。その足で王宮に向かったようですがーもしかして当家からの紹介状もなく、解雇された侍女を後宮にて雇われていたりなさいませんよね?心配ですわー。そんなことをするなど王族が侯爵家に何か含みでもあるように感じられますが?」


もう、あの侍女がこちらの情報をそちらに流すことはないし、流していたことも知っているよと脅してみたらーあら面白い。王太子の顔色真っ白。侯爵の顔色真っ赤。


「王太子殿下?詳しくお聞きいたしたいことが出来ました。お時間いかがですか?」


「奇遇だな!侯爵!私は今用事を思い出したぞ!早く帰りー。」


侯爵は首根っこを掴みつつ馬車へ王太子を連れていった。アホだな。

それからは王妃殿下から圧力強めの招待状が来ていたが、王妃殿下の前で体調を崩したばかりですし、お茶会は怖くて行けませんと侯爵に訴え、侯爵から王様に王様から王妃に断ってもらった。

お前のバカ息子をまず、どうにかしてからこっちに声かけろや!政務滞ってるらしいぞ!


王太子が条件をのむことが決まり、全員が書類にサインした。ほっとしたが、私はちゃんと理解できているか解らない所には嫁げないから関係者全員の前で書類を読み上げて欲しいと頼んだのだ。


だから王宮に皆が集められた。出席者が結構多い。

王様でしょー、王妃に王太子に護衛騎士。その護衛騎士のパパさんの騎士団長。私に侯爵だ。第三者として宰相閣下とその補佐の人ちゃんと記録を取ってくれるって!王宮に勤めている人がまともで良かったわ。


「皆揃ったな。では始める。」


「お待ちください!」


おい!あの護衛騎士どうした。バグったのか!?王様の言葉を遮ったぞ。


「お前は何を考えているのか!陛下の御前で!」


ゴツンと護衛騎士の頭が鳴った。


「不敬な事だとは解っているさ!でも今でないといけないんです!陛下!お願いします。」


「陛下。私からもお願いいたします。あの子は王太子が幼い頃から支えてくれた者です。我が息子も同然に可愛がってきました。あれだけ必死なのです。話を聴くぐらいよいでしょう?ねぇ?私の可愛い娘シルクジャスミン?」


おぉ。スッゴいな。鳥肌たったぜ。鳥肌。


「?何故私の意見が必要なのでしょうか?全ては陛下の御心次第。私は陛下に進言できる立場にございません。」


お前の娘何ぞ願い下げだ。


「まぁ。そのようなことを…私のお茶会のお断りは陛下からでしたよ?貴方のおねだりでしょ?」


「まさか。陛下は私のような者のおねだりなどで意見を変えられる方ではありません。強いて言うならば侯爵のおねだりではないのですか?」


「そうですね。私が陛下におねだりしました。」


「侯爵!気持ち悪い言い方するでない!」


「陛下もお人が悪い。あんなに可愛くおねだりしましたのに。」


「まぁ。侯爵のおねだりですかー私も見たかったですわ。」


陛下と私と侯爵は和やかに話をしていたけど、王妃と王太子と子爵令嬢はピリピリしているな。蚊帳の外だもんね。


「冗談はこれくらいにしよう。王妃の陳情もあったゆえ発言の機会を与えるがこれだけだぞ。努々忘れるな。」


騎士団長の顔色が悪いな。まぁ。だよねー。息子のしようとしていることを考えたら絶対やってほしく無いんだろうな。言い聞かせてはみたんだろうけどね。


「陛下!お願いです。騎士の誓いを立てさせて下さい!」


「ほう。その方の騎士の誓いとな。もう、そんな歳か。その方の剣技はこの国一と聞くまた、一軍に匹敵するとな。その方に誓いをたてられるのであれば名誉なことだな。相手は誰ぞ?」


おい!昔の幼馴染みやい!間違うなよ!空気読めよ!さっきから王様の目が笑ってないからね!


「陛下にそのように仰っていただけて光栄です。」


わーめっちゃ笑顔だわ。あの脳筋くん。わかってないよー!王様は一軍に匹敵するっていってるよ!警戒対象だって!


「私は身分など関係なく、優しく、儚げで、か弱い女性を全力でお守りしたいのです!私の剣を捧げたい。何者からも守りたいのです。」


騎士団長。あの脳筋息子は諦めなさい。こっちを睨みながら何者からもって言っちゃってるからね。私、王族になるのよ?理解してる?

それに私はまだ、何にもしてませんよ?


「ほう。長年の支えてきた王太子ではなく、そこの王太子の愛妾にしか過ぎない子爵令嬢にか?」


「はい!」


「そうか。二言はないな?」


「はい!私は彼女に一生の騎士の誓いを致します。」


「マリーゴールド嬢はいかがいたす?誓いを受けるのか?」


「はい!喜んでお受け致します!」


王妃も王太子もうんうんと喜んでいる。良かったわねー。とよしよし撫でている位だ。


「あいわかった。ジン。王太子の護衛騎士任務をこれより解く。マリーゴールド嬢の専属騎士とする。」


「「ありがとうございます。」」


「宰相。侍医らを呼べ。ジンの左腕を切断させよ。」


「畏まりまして。」


「なっ!?」


「何故ですか!」


「騎士が腕をなくせば致命的ではないですか!」


「陛下!いくらなんでもあんまりですわ!何故そのような…」


四人が一斉に喚き始め、抗議を始めた。あの脳筋くんに至っては剣の鍔に手を掛けている。

陛下はちゃんと言ってたでしょうがジンの剣技は一軍に匹敵するって。ジンが陛下か王太子に誓いを立てていたらなんの問題もなかった。だけど、愛妾でしかない、ましてや子爵令嬢が持つには過度な戦力だ。御しきれない場合を考えたらゾッとする。利き腕ではないのだから十分な処置だろう。なんの柵もなく騎士となれるとでも思っていたのだろうか。

私は走って陛下と四人の間に割って入った。庇うかのように。


「何をしているのですか!陛下の御前で剣に手を掛けるなど!謀反でも起こすおつもりか!?」


私は叫んだ。手を広げて陛下を守る。

侯爵はそれに続き。私の前に出た。


「それに陛下のお下知に意見が出来るのは手続きを踏んだ臣下か王太子殿下のみです。それを…政務に口を出されるおつもりですか!王妃殿下!」


侯爵が声をあらげる。


「衛兵!入れ!愛妾の専属騎士ジンを捕らえろ!」


宰相が扉の前に控えている兵士を呼ぶ。


衛兵にジンは捕らえられた。衛兵達も一瞬戸惑うような表情だ。当たり前だ。一時間前まで尊敬する騎士団長の息子であり。実力も申し分ない王太子の護衛騎士だった筈なのだ。それが何故?と問いたいのだろう。騎士団長は首を横に振りそれを一蹴させた。


「陛下。僭越ながら申し上げたい議がございます。小娘の浅慮と思われても構いません。」


「なんだ?」


「そこの愛妾の護衛騎士ジンは騎士爵しか持っていません。また、誓いの相手にその愛妾を選んだ時点で騎士団長は勘当と廃嫡を選択した筈です。陛下の御前であった為に言えなかっただけかと…」


横目で騎士団長を見ると騎士団長も頷いていた。


「でしたら、その時点でジンは平民ですわ。責任を貴族並みに求めることは酷かと。」


「平民であればこそ不敬罪が問われるのでは無いのか?」


「陛下はこの機会のみ許すと仰っておられました。でしたら、このジンの不敬は最初から…。」


「なるほど…では、こやつの罪は何ぞや?」


「それを決めることは私の分ではございません。私は王族に嫁ぐものとして陛下が仰られた不敬の部分や貴族の部分にのみ意見を述べているのみですわ。」


「成る程。」


「こやつは私の命に意見し、勝手に剣を抜こうとし、暴れた様だ。牢に放り込んでおけ。」


「御意。」


ジンは引っ立てられていった。まぁ。処刑にはなるまい。腕は切られるだろうが…。利き腕は残るのだからどうにか生きていける筈。


残った3人は呆然としている。何故こうなったのかまるで解らないという表情である。


「さて。申し開きはあるか?」


「…。」×3


「無いのか。…全く何故其方達はそこまで増長できたのか理解に苦しむな。謀反人の可能性がある。貴族牢にでも放り込んでおけ。手枷をしてな。衛兵にも注意して配置せよ。金を積まれて逃げ出されては叶わんからな。連れていけ!」


「御意!」


「ヘラニウム侯爵、シルクジャスミン嬢、すまなかったな。本来ならばそなたへの謝罪の場であったのに…。これから後始末をせねばならん。色々決まれば邸宅に使者を送るのでそれまではどこにも行かずゆっくり過ごして欲しい。」


はいはーい。余計なことを言わず、謹慎してろってことですね!喜んでぇー。


「畏まりまして。」


私は教育の全てをぶちこんだ渾身のカーテシーをして王宮を辞した。侯爵も一緒に帰ろうとしていたが宰相に捕まっていた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


私は邸にてそれはもう自由にゆったりと幸せな3ヶ月を過ごした。16年生きていて一番と言って良い時間であった。外野のことなど全く気にならないし、寧ろ忘れていた。


そんな頃使者が侯爵とやって来た。


「久しぶりだね。シル!やっと帰ってこれたよ!」


「ええ。久しいですわね。侯爵。」


居なかったの?とかなりビックリした。確かに邸の皆は何も言ってなかったけど…帰ってきてなかったなら言いようが無かったのね。私もきかなかったしー。


「宰相様がご使者でございますか?豪勢ですこと。」


「私では不服でございますか?」


「まさか。身に余る光栄ですわ。」


「では、この度の沙汰を説明させて頂きます。」


「はい。」


「平民となっていたジンは左腕の切断後辺境の森にて苦役を五年努めることとなりました。もうすでに王都を出て辺境へと向かっています。騎士団長自ら護送していったので、まぁ大丈夫でしょう。左腕が使えなくても。」


うん。知ってる。騎士団長からお礼のお手紙があの後から来るようになり、今では文通する仲なのだ!

私のフォローのお陰で処刑されることなく、更正の機会が得られたと喜んでいた。護送中に自分がしたことの罪をこんこんと諭すつもりだと意気込んでおられたので安心している。


「それから愛妾であったマリーゴールド嬢ですが、おとがめなしとなりました。陛下から許可があって受けた騎士の誓いでしたので…最後の陛下の命に異論を唱えた事は罪ですのでそこは社会奉仕活動を行うこととしました。まぁ。新着のドレスを何枚か我慢すれば良いことですので。罰になるかは解りませんが…補佐が絶対罰になるから大丈夫!と叫んでいましたので信じることとしました。」


うん。なるだろうね。ドレス作るのも着るのも好きだもんね。あの子。その才能を別に向ければ良かったのに。仕立て屋を開くとかね。


「王太子殿下ですが、諸々の罪が重なり…地位が危ぶまれましたが、王妃殿下が全て被ると仰せになりましたので王太子殿下はそのまま監視付きと再教育で現状維持となりました。」


他に王位を継げる者が居ないもんねぇー。だからこそあそこまで上から目線で何もかも好き放題出来たとも言える。


「全ての罪を被られた王妃殿下…いえすでに地位を剥奪されていますので何とお呼びすれば良いのか…ご実家の侯爵家に戻られ、毒杯を賜り、ご実家の墓地に埋葬されておられます。」


すでに故人になられていたとは…スピードが速すぎない?もうちょっとほら。王太子の未来を考えたらとか言って療養に送って離宮で静かに亡くなるとかあるじゃん!


「毒杯に驚かれていますか?当然ですよ。彼女は。まぁ。叩けば埃ではなくゴミが出まくりでした。陛下や王太子が庇える範囲を優に飛び越えておりましてね。私からも謝罪を。シルクジャスミン嬢の母上様を亡きものとしたのは彼女でした。宰相として気づかず今の今までこの状態の王族を捨て置いたこと申し訳ありませんでした。」


「そうですか…薄々感じてはいたのです。あの前侍女長の仕業でしょうか?」


「はい。実際に毒を盛っていたのは先日解雇された侍女長でした。」


侯爵の顔が歪む。自分の妻を信頼する乳母に殺されていたのだ。しかも、それを知らず、ずっと側においていたのだから…まぁ。いかに家のことに感心がなかったかってことよね。自業自得よ。


「そう。」


「陛下より伝言がございます。」


宰相様の言葉に私は立ち上がり頭を垂れる。


「さすがシルクジャスミン嬢。しかと教育されている。ですが、今回は大丈夫ですよ。これは公的な物ではありません。公的に王族からの賠償は侯爵にされますので…ですから座ってお聞きください。」


「はい。」


「シルクジャスミン嬢には謝罪してもしたりない程の罪を犯したにもかかわらず、朕を身をもって守ろうとしてくれた。褒美をとらせたい。何か願いがあれば言って欲しいとのことです。」


「私の願いは最初から決まっております。」


うんうん。と侯爵が頷いている。宰相様の顔は悔しそうだ。


「そうですか…。そうですよね。これだけ教育され、能力、容姿、胆力に申し分ないお方を手放すのはとても惜しいですが…。」


「陛下に嫁ぎとうございます!!」


「「はい!?」」


「シル!何てことを言うんだ!あんな歳の過ぎたおっさんにーー」



「ヘクトル。シルクジャスミン嬢がお話し中だ。遮るな。」


宰相様がニッコリと侯爵の口を塞ぐ。あっこれ瞬時に計算したな。さすが優秀だな。そして、計算した結果私の意見に賛同したほうが利益が高いと踏んだらしい。


「歳の過ぎたと仰いますが侯爵と同じで、四十にもなっていないではないですか!十分でございますわ。見目も良く、私としては王太子殿下よりも好みです!子守りはうんざりですわ。それに、侯爵もいい加減後妻をお迎えになり、子をなして下さりませ。私は侯爵家を継ぐ気はございません。どうして母が亡くなったのかお分かりになったのでしょ?侯爵に悪いところが無かったわけでは無いですが、侯爵のせいではなかったのです。反省し、次に生かせば良いのですよ。私。ずっと弟妹が欲しかったのです。お父様!」


長年の妃教育の上で今度は後継者教育とか拷問だっつうの!お父様こそ当主の仕事せいや!


「シル!」


嬉しいような困るような表情のお父様。

ビバ!お父様譲りの可愛い弟妹!出来たら絶対に可愛がるし、お父様への恨みはハンカチに包んで棚にしまってあげましょうかね。


「ですが、これでは陛下へのご褒美にしかならない様な…。」


ちょっと複雑な表情の宰相様。実はこの人も独身者である。女性の裏の裏まで見すぎて女性嫌悪になってしまっているらしい。一部を見ているだけの視野の狭いおバカさんだ。


「でしたら、私がお父様と宰相の奥さまを見つける権利を頂きとう存じます。」


「シル!」


「シルクジャスミン嬢!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「お母様ー。お花あげるー。あっ!あげますー。」


私の可愛い長男がお花を持ち走って駆け寄ってきた。

とても可愛い。今年5歳だ。でも、何故だろう。5歳の子供になのにあざとさを感じてしまうのは…。アレクの将来に幸あれ。

その後ろからは愛しい旦那様。うん。美しいわ。


「まぁ。アレクありがとう。とても嬉しいわ。キレイねぇ。」


「うん!父様と摘んだんだよ!あっ摘んだんですよ!へへへ。」


うん。可愛い。あれはあざとくない筈よ!母が息子を信じなければ!アレクは礼儀の指導が少しずつ入っている。まずは言葉使いからだ。私はちょっと寂しさを感じながらも褒めた。


「アレクは教えを守ろうとしているのですね。偉いですよ。それに、間違いを気づいて自ら訂正しているとは頑張っていますね。」


「はい!」


「体はどうだ?シル。」


「陛下。大丈夫ですわ。侍医も問題ないと言っております。」


「そうか。良かった。シルが私の側で笑っていないとどうも調子が出んな。」


「まぁ。陛下ったら。甘えん坊ですこと。」


「とうさまはあまえんぼうなの?ぼくといっしょ!」


次男のニックが嬉しそうに旦那様の足元に駆け寄る。旦那様は愛おしそうに頭を撫でてニックを抱き上げる。ニックは今年で三歳だ。


私の願いは聞き届けられ、陛下に嫁ぎ王太子妃を飛び越えて王妃となった。

あの王太子は反対し、一人吠えていたようだが、皆がサインした書類には王太子妃となるではなく王族に妃として嫁ぐと書いてあったので問題はなかった。

お父様も陛下に圧迫面接をしていたようだが、陛下は何とか耐えたらしい。

私は自粛の方向が良かったが…醜聞を跳ね返す目的もあり、盛大な結婚式をあげた。

旦那様はとても甘く。それはもう優しく愛して下さった。顔は好みではあったが、ここまで私も旦那様を愛しく思うことが出来るとは思っていなかったわ。それに、相性が良かったのか長男を直ぐに授かり、次男も。いまは3人目を妊娠中である。

継承権問題はキレイに無くなった。

本来の系譜の王太子には妃が居ない。元々私しか嫁げる女性が居なかったのにあれだけのことをしたのだ現れる訳がない。しかも、側室も放棄しているので下級貴族等も手を上げられないときた。そうなると王太子の子供は生まれない。愛妾が居るじゃんと思われるかもしれないが愛妾は契約愛人なのだ。子は出来ないように()()()()()

そうなると次代が!?となるが安心してください。アレクにニックまでいる。それに、アレクがかなり人間ホイホイなのだ。次代も明るいと国全体に活気が戻っている。

私は可愛いアレクの手を引き、大きくなったお腹をさすりながら、ニックを抱いて先を歩く旦那様を追いかけた。


「お前が何故ここにいる。」


旦那様の冷たい声に子供達が驚く。私は直ぐに乳母に目配せし、アレクとニックを預け、先に戻らせた。


「父上に謁見を申し入れたのですが、却下されたので…理由を聞きたいと思いまして。」


「ここは後宮である。王太子であろうとも私の許可なく入ることは禁じられている筈だ。もうそなたの母は王妃ではない。直ぐに立ち去れ。」


「ですが!」


「くどい!私は政務をセーブし、王妃の出産のサポートしておるのだ。そう、秘書官から聞いたであろうが!」


「たかが王妃の出産の為に政務をー」


おい。こっちを睨むなや。私はお前より上だぞ?

挨拶も無しかよ。


「王妃をたかがとな!高々愛妾の為に政務を疎かにした者の言葉とは思えぬな。しかも、上位である王妃に対して挨拶も無しとは…こやつの教育はどうなっているのだ!全く解っていないではないか!」


周りのお付きに檄を飛ばす陛下。

しっ痺れる!めっちゃカッコいい!私の旦那様。

私は旦那様の腕にそっと寄りつつ


「陛下。カッコいいですわ。早く私達の家へ戻りましょう。こんなかっこいい旦那様を他の女性が見たら惚れてしまいますわ!」


早く戻らねば!私は腕を引っ張った。

陛下は仕方がないなぁと言う表情をしてエスコートをしてくれた。

私は陛下のエスコートを受けながら王太子の横を通り抜けた。


後ろからの羨んだ目線を無視して…。

ギルバートを許し、嫁ぐのだけは作者としては無理でした。


ギルバートにも理由はあったのです。シルちゃんには伝わることはないですが…それが次に解ります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 大変に面白かったです! [一言] 〉許し、嫁ぐのだけは無理でした。 これで元鞘と言われる方が恐ろしいのです(;^ω^) 細かい事情はこれから判明するのでしょうが。 少なくともシル嬢目線から…
[一言] シルクジャスミン、行動力おばけですね!!
[良い点] 不思議な作品ですね! スッキリと勧善懲悪がなくて、めちゃくちゃな美形とか、際立ったヤンデレとか、魔法や、チート等の派手なお約束もない。 のに、ジワる……!! え!これ、どうなんの? え!こ…
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