出来ることを
『サフィーが占い屋さんを明日からやるよ!お店の名前は"アイルサフィア"、場所は"ヘーメルオースト"の前!みんな来てね!』
フロウの耳に、その場にいないはずのサフィーの声が聞こえました。
「あら、あの子の声が」
「……オズルの魔法だ。あたしはこういう魔法は苦手でね」
ナルとフロウは、まだ談笑を続けていました。
「オズルは元からの素質がよくてね。あっという間に魔法を覚えてしまったよ。オズルは想像力も豊かだ。魔法使いに一番必要なものは、もしかしたら想像力かもしれない」
「あら、知らなかったわ」
ナルはそう言って笑った後、少し考えて聞きました。
「ねえ、フロウ……自分よりも上の魔法使いがいるって、どんな気分?」
それに対して、フロウも少し考えて言いました。
「——そうだね。まず、素直に尊敬するよ。あたしには出来ないことが出来るんだから」
ナルはそれを聞いてうんうんとうなづきました。
「でもね、自分を卑下することはないさ。あたしはあたしが出来ることをするだけだからね」
そう言って、フロウは笑います。
「オズルはあたしやあの子が出来ない魔法を使う。あの子はあの子が得意とする魔法を使う。あたしは人を癒す魔法が得意だから、それを使う。それでいいのさ」
「素敵ね、フロウ」
「そう?」
「ええ。ところで……」
ナルは首を傾げます。
「"あの子"って、ユリアのこと?」
フロウはその問いには答えずに、「また来るよ」とだけ言ってヘーメルオーストを去りました。
家に帰る途中、フロウは道端で転んでいる男の子を見つけました。
「大丈夫?もう泣かなくていいんだよ」
フロウはそう言って男の子を立たせると、癒しの魔法で怪我を治してやりました。
「ありがとう!」
男の子は笑顔になると、何処かへと駆けていきました。
(さっきナルにした話だけど)
フロウは考えます。
(魔法使いだけの話じゃない。人間だってそうだ)
辺りを見回すと多くの人がいて、その一人一人が別人なのです。全く同じ人などいないのです。
(何も出来ない人など、いるわけがないのさ。みんなが助け合って生きている)
そんなことを考えているうちに、フロウは家に着いていました。
ルイーザから留守の間の話を聞いたり魔道具を受け取ったりしたら、店番を交代します。
フロウは辺りを見回しました。
大切な人々が住む、大好きな村を。




