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オズルとフロウの魔法使い日記  作者: 秋本そら
その後のマディシナ村
72/74

オズルの魔法

「ナル、今日のおすすめは?」

「今日のおすすめはエルダーフラワーよ」

「それ、買うわ!ちょうど欲しかったところなの」

 フロウは、ヘーメルオーストに来ていました。

「ナルさん!今日のおすすめは……って、フロウも来てたの?」

 そこに、オズルがやって来ました。

「今日のおすすめはエルダーフラワーよ。何が入り用かしら?」

 ナルの声に、オズルは少し考えて言いました。

「うーん、おすすめを訊いておいて申し訳ないけど、今日はエルダーフラワーはいいや。カモミールをください」

「分かったわ」


 その時、サフィーがやって来ました。

「あ、オズルお兄ちゃんとフロウおばちゃん、こんにちは!」

「あたしはおばちゃんじゃないわよ!せめてフロウさんって呼んでほしいわね」

「こんにちは、サフィーちゃん」

 サフィーは左右で違う瞳を輝かせて、言いました。

「あのね、サフィーね、占い屋さんをすることにしたの!みんなのことを占ってあげるんだ」

「いいわね。お店の名前は?」

「えっとね、"アイルサフィア"っていうの。素敵でしょ?」

 サフィーは嬉しそうにくるりと回ります。

「このお店の前でやるの。明日から!すごく楽しみ!」

 占いはきっと、"分かる目"の力を使うのでしょう。

「素敵じゃない。宣伝はしたの?」

 フロウが訊くと、サフィーははっとしたような顔で、言いました。

「してない……」

 その声はとても悲しそうでした。

 その時、オズルは思いつきました。

「ねえ、僕と一緒に宣伝しない?」

「えっ?どうやって……?」

 不思議そうに首をかしげるサフィーに、オズルは笑いかけます。

 サフィーはじっとオズルを見つめ、やがて、嬉しそうに、

「やる!早く行こう!」

 と言うなりオズルの手を引いて外に出てしまいました。

 サフィーが"分かる目"でオズルの考えをすくい取ったのか、オズルが魔法で考えを伝えたのか、あるいは両方か、見ていた人には分かりませんでした。

「あー!カモミールは?」

 我に帰ったナルが叫ぶ声は、もう二人には届きません。ナルが呆れかえっていると、フロウが一言、

「きっとまた、買いに来るさ」

「……ええ、そうね」

 二人はそう言って笑いました。


 村の中心地にある広場に着くと、オズルは心の中でヒースとカールを呼びました。

『やあ、オズル!』

『何か用かな?』

「この子の声を届ける魔法を使うんだ。手伝ってくれるかい?」

『もっちろん!』

『いいよ!』

「ありがとう、二人とも」

 そう言ってオズルは二人を左の手に乗せ、反対の右の手でサフィーと手を握りました。

「サフィー、伝えたいことを念じてごらん」

「うん!」

 サフィーが念じた言葉が、そのままオズルの頭の中に流れ込んできます。

 オズルは村中にサフィーの言葉が伝わるイメージをして、ヒースとカールを乗せたまま左手を上に上げ、言いました。

「サフィーの言葉を、この村中の人々に!」

 その瞬間、オズルとヒース、そしてカールの魔力が混ざり合い、風が起こります。サフィーは驚いたように、でも楽しそうにオズルを見つめます。

「風に乗って、伝われ!」

 オズルはその思いを込めて、叫びます。


 ——魔法を使う上で大事なのは想像力。どれだけ強く、具体的に想像できるかだ。


 不意に、フロウが一番最初にオズルに教えた言葉が、オズルの頭の中で蘇りました。


 今頃、村中の人たちがサフィーの言葉を聞いているでしょう。

 それを想像するとオズルは愉快な気持ちになり、サフィーはとても嬉しくなるのでした。

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