オズルの魔法
「ナル、今日のおすすめは?」
「今日のおすすめはエルダーフラワーよ」
「それ、買うわ!ちょうど欲しかったところなの」
フロウは、ヘーメルオーストに来ていました。
「ナルさん!今日のおすすめは……って、フロウも来てたの?」
そこに、オズルがやって来ました。
「今日のおすすめはエルダーフラワーよ。何が入り用かしら?」
ナルの声に、オズルは少し考えて言いました。
「うーん、おすすめを訊いておいて申し訳ないけど、今日はエルダーフラワーはいいや。カモミールをください」
「分かったわ」
その時、サフィーがやって来ました。
「あ、オズルお兄ちゃんとフロウおばちゃん、こんにちは!」
「あたしはおばちゃんじゃないわよ!せめてフロウさんって呼んでほしいわね」
「こんにちは、サフィーちゃん」
サフィーは左右で違う瞳を輝かせて、言いました。
「あのね、サフィーね、占い屋さんをすることにしたの!みんなのことを占ってあげるんだ」
「いいわね。お店の名前は?」
「えっとね、"アイルサフィア"っていうの。素敵でしょ?」
サフィーは嬉しそうにくるりと回ります。
「このお店の前でやるの。明日から!すごく楽しみ!」
占いはきっと、"分かる目"の力を使うのでしょう。
「素敵じゃない。宣伝はしたの?」
フロウが訊くと、サフィーははっとしたような顔で、言いました。
「してない……」
その声はとても悲しそうでした。
その時、オズルは思いつきました。
「ねえ、僕と一緒に宣伝しない?」
「えっ?どうやって……?」
不思議そうに首をかしげるサフィーに、オズルは笑いかけます。
サフィーはじっとオズルを見つめ、やがて、嬉しそうに、
「やる!早く行こう!」
と言うなりオズルの手を引いて外に出てしまいました。
サフィーが"分かる目"でオズルの考えをすくい取ったのか、オズルが魔法で考えを伝えたのか、あるいは両方か、見ていた人には分かりませんでした。
「あー!カモミールは?」
我に帰ったナルが叫ぶ声は、もう二人には届きません。ナルが呆れかえっていると、フロウが一言、
「きっとまた、買いに来るさ」
「……ええ、そうね」
二人はそう言って笑いました。
村の中心地にある広場に着くと、オズルは心の中でヒースとカールを呼びました。
『やあ、オズル!』
『何か用かな?』
「この子の声を届ける魔法を使うんだ。手伝ってくれるかい?」
『もっちろん!』
『いいよ!』
「ありがとう、二人とも」
そう言ってオズルは二人を左の手に乗せ、反対の右の手でサフィーと手を握りました。
「サフィー、伝えたいことを念じてごらん」
「うん!」
サフィーが念じた言葉が、そのままオズルの頭の中に流れ込んできます。
オズルは村中にサフィーの言葉が伝わるイメージをして、ヒースとカールを乗せたまま左手を上に上げ、言いました。
「サフィーの言葉を、この村中の人々に!」
その瞬間、オズルとヒース、そしてカールの魔力が混ざり合い、風が起こります。サフィーは驚いたように、でも楽しそうにオズルを見つめます。
「風に乗って、伝われ!」
オズルはその思いを込めて、叫びます。
——魔法を使う上で大事なのは想像力。どれだけ強く、具体的に想像できるかだ。
不意に、フロウが一番最初にオズルに教えた言葉が、オズルの頭の中で蘇りました。
今頃、村中の人たちがサフィーの言葉を聞いているでしょう。
それを想像するとオズルは愉快な気持ちになり、サフィーはとても嬉しくなるのでした。




