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オズルの過去

「その子は、嘘をつきません」

 その時でした。思わぬ助け船が出たのは。

「さっき嘘をついたと言っていたけれど、それはあの二人から身を守るため、どうしようもなくてついた嘘です。その他にその子は嘘をついていません」

 凛とした声でした。

「どうしてそう言えるのよ!」

 ユリーシャの声にも、冷静にその人は答えます。

「どうして、って」

 その人は人混みを掻き分けてオズルの隣に並ぶと、指を鳴らしました。

 すると、顔立ちがたちまち変わっていきました。

 オズルと同じ緑色の目。どこかオズルに似た顔立ち。そして、頰にある緑色の六芒星。

「この子は私、ユリア・ウィリアムの息子ですもの」

 凛とした声で、ユリアらしくない声で、ユリアは言い切りました。

 その声は、子を守ろうとする、母の声でした。

 しかし皆、半信半疑でした。


「ユリアおばちゃんは、嘘をついてないわ!」

 追い討ちをかけるように、今度は幼い声が言いました。

「サフィーが"分かる目"を持ってるのは、みんな知ってるでしょ?サフィーには分かるもん!ユリアおばちゃんも、オズルお兄ちゃんも、嘘はついてないって!」

 そう、サフィーの声でした。

「これでも信じないんだったら、サフィー、その人のこと、許さないんだから!」

 その不思議なオッドアイの瞳に、涙を滲ませながら、サフィーは叫びました。


 オズルはユリアを見つめます。ユリアはオズルに微笑みかけました。

「僕の本当の名は、オズル・ウィリアムです。そして、ユリアが、僕の本当の母です」


(そうだ。お前はオズル・ウィリアムだ)

 フロウはオズルに出会ったばかりの頃、名前はないと悲しそうに言ったその声を、思い出しました。

(オズル、本当の名が分かって、良かったな)

 また、堂々と自分の本当の名を名乗ったオズルを素直に尊敬しました。

(本当の名を名乗るのは怖いだろうに。しかも、虐げられた親の前で。でも、オズルは名乗った。勇気のいることだっただろうに……)


「私は、夫であったギニアに不倫をされ、離婚しました。その時に息子のオズルはギニアに連れていかれました」

 ユリアが静かに語ります。その続きをオズルが継ぎます。

「僕は虐げられて育ちました。外に出してもらえず、学校に行けなかったので、読みはなんとかできても書きは少ししかできませんでした。名前で呼ばれることすら、ありませんでした」

 村人は呆然として尋ねます。

「本当か、ギニア……」

「……本当だ」

 もう逃れられないと思ったのか、ギニアもユリーシャも観念して、認めています。

「私の頰にある六芒星を見てわかると思いますが、私は魔女です。なので、何度も魔法でオズルを助けようとしましたが、無駄でした。何故か結界が張られていたんです。私には破ることのできない、結界が」

 ユリアの言葉に、ユリーシャが答えました。

「……隣の村の魔法使いに頼んだんだ。悪い魔女がいたずらをしてくるから、結界を張ってくれって」

「そして、こいつが十二歳の時に、追い出したんだ。……邪魔だったから」

 ギニアの顔は、歪んだ笑顔になっていました。

 オズルはうなづいて、言いました。

「十二歳の時に追い出された僕は、この村にはいられないと思いました。村の人たちは僕の存在を知らないから、両親に追い出されたと言っても、信じてもらえないと思いました。

 森の奥まで逃げ込んで、そして、一軒の家を見つけました。戸を叩いて、一晩泊めてほしいと頼みました。

 その家こそが僕の恩人である、フロウ・アイーネの家だったんです」

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