今に繋がる過去
オズルは二週間の間は表には出ず、療養に努めました。フィリーのお陰で薬屋の業務自体は続いており、それなりに儲けも出ていました。
オズルはフィリーが買ってきた栄養がつくもので体力を取り戻し、貧血も起こさなくなりました。
そして、店にオズルが再び立つようになってからさらに二週間が経ち、オズルは再び時を遡る魔法を練習するようになりました。
しかし、フィリーに条件をつけられました。
『時を遡る魔法は二日に一回だけ!毎日やってたら前みたいに倒れるよ!』
口調はかなりきつかったのですが、自分のことを考えてくれているのだと分かっていたオズルは、素直にうなづきました。
練習を再開してから二ヶ月後。
オズルはその日も練習をしていました。
「魔法陣よ、時を巻き返せ。
時を遡り、真実を見せよ」
練習すればするだけ、昔の過去まで遡れるようになりました。そして、遡る速さも、だんだんと速くなっていったのです。
(今までずっと、フロウはあの小屋にいた。村に住んでいるフロウを見つけられたら、きっと二十年前に戻れたってことだ)
着いた先は、昔のマディシナ村でした。
(戻れた!)
オズルが喜んでいると、今、オズルが住んでいる家から、フロウが出てきました。机と薬を出しています。薬には紙が添えられていて、「ご自由にどうぞ」と書かれていました。
『おはよう、みんな!』
『フロウ、おはよう!』
『朝から元気だなぁ』
フロウに挨拶された村人は、笑顔で返します。
しかし、どこからかごほごほと咳き込むような音がします。
一箇所からだけではありません。
あちらこちらから、その音は聞こえてくるのです。
『あら、またあの咳が……』
『一体、どうしてなんだ……』
村人たちの話はおかしな病気のことで持ちきりです。
『隣村ではこんな病気はないそうだ』
『この村だけだって言うのか?』
『そんなことって……』
村を歩いていると、色々な村人の話が耳に入ります。
『もしかしたら、フロウのせいなんじゃないか?』
『どうして?フロウは善い魔女よ?』
『あの薬。もしかしたら毒なんじゃないか?』
『まさか、そんなことはないわよ』
あちらこちらで色々な噂が囁かれる中、「フロウが病を広げたのでは」と言う噂が広がっていきます。
『フロウ、病気を広げたのはあなたなんじゃないかって噂が広まってるわよ』
『嘘。あたしは何もしてないわ』
フロウの言葉に嘘がないことぐらい、オズルはすぐに見抜けました。
(本当にフロウは何もしていなかったんだ。だけど魔女だから、疑われた)
オズルは知っていました。病の原因は小さな生き物だと言うことを。
そして、オズルは気付きました。他の村にこの病気が伝染しない理由に。
(この村は森で覆われている。その分境目が他の村同士よりも広い)
距離が広ければ、病はその分伝わりづらくなります。
(他の村で病気が流行らなかったのも、多分フロウが疑われる原因になった。他の村まで病気が流行ったら、多分フロウは疑われなかった。魔女がいる村だけで病が流行れば、魔女のせいだと思い込む人は、きっと出てくる)
そして、オズルが思った通りのことが起こったのです。
フロウの家の前に置かれた机がなぎ倒され、薬が辺りに散らばりました。
『お前のせいで病気が広まったんだ!』
『違うの!あたしは何もしていない!』
フロウの叫びも虚しく、薬が大柄な男によって踏み潰されました。
『……!』
『これは本当は毒だったんだろ?悪い魔女め』
男はそう言い捨てて去って行きました。
『——あたし、みんなの為に、これを、作ったのに……』
フロウは、涙を流していました。
フロウのその言葉を最後に、オズルは現在へと引き戻されてしまいました。




