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オズルとフロウの魔法使い日記  作者: 秋本そら
枷と向き合って
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無茶

 オズルは薬屋を営みながら、マディシナ村に住む人たちにフロウのことを聞きました。

「あの、たまに"フロウ・アイーネ"っていう名前を聞くんです。その人は、どんな人なんですか?」

 答えはいつもすぐに返ってきました。

「あいつは悪い魔女さ。最初はいい魔女だと思わせておいて、二十年ぐらい前に薬みたいな毒を配りやがったんだ。そのせいでみんな病気にかかっちまった」

「フィリップはあいつと関わるんじゃないよ。あいつは悪い魔女だから。最近は小さな子供を攫ったらしいって噂もあるからねえ」

「悪い魔女だよ、あいつは」

 何回訊いても答えに共通するのは「あいつは悪い魔女だ」でした。


 しかし、村人の話が真実とは限りません。オズル自身、話を聞きながら思ったのです。

(フロウはそんなことするような人じゃない)

(それはただの噂じゃないか)

 でも、オズルだってフロウがそんなことをしていないとは言い切れませんでした。オズルはフロウの過去を知らないからです。

(過去に遡る魔法を、また使うしかないかなあ)


 オズルは毎日のように魔法を練習しました。

 しかし、昔に遡れば遡るだけ魔力も体力も使います。なので一日一回しか練習が出来ません。

 しかも、毎回現在に戻ってくると、オズルはへとへとで何も出来ず、立っていることすら出来ないのです。そんなオズルをいつもベッドに連れていって、飲み物を飲ませたり、出来るのであれば食べ物を食べさせたりして休ませるのが、人間に変身したフィリーでした。

『無理しないでよ、オズル』

「……大丈夫、だよ。それに……確実に、少しずつ、遠くの、過去に、戻れてる」


 ある日、日に日にやつれていくオズルが心配になって、フィリーはこんな質問をしました。

『ねえ、どうしてそんなに二十年前に戻ろうとするの?』

「だって……知りたいんだ。フロウの過去を。そこに、フロウが人間を嫌いになった理由が、あるはずなんだ」

『でも……』

「フロウは人間が好きなんだよ。本当は村が好きなんだよ。でも、嫌いでいようとしてる。その理由が、知りたいんだ」


 しかし、二ヶ月間、夜に毎日休むことなく魔法の練習をしていたせいか、村人たちにも「フィリップ、やつれてない?」「大丈夫?」と問われるようになりました。

 そしてついに、薬屋の開店中に貧血を起こして倒れてしまったのです。しかも、その時はお客さんが誰も来ておらず、誰もオズルに気づく人はいませんでした。


 数分後、出かけて来たフィリーが帰って来ました。

 倒れているオズルに気づくと、フィリーは周りに誰もいないことを確認して、それでも念のために誤認の魔法をかけ、人間に変身するなりオズルをベッドに運びました。そして、"フィリップ"の姿になると、誤認の魔法を解いて机や薬を中にしまいます。


「……ごめんね、フィリー……」

 フィリーはオズルの声を聞きつけるなり、オズルの元にかけていって、

『オズルは無理しすぎ!もう一ヶ月間過去に遡る魔法は使わないで!』

 と言って魔法の練習を禁止してしまいました。

『店もしばらくは僕がフィリップのふりをしてやるから、オズルはしばらく休養してて!いい?』

 そのフィリーの剣幕には、オズルもうなづかざるを得ませんでした。

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