手紙
その日、フロウはオズルからきた手紙を読んでいました。その手紙には大体こんなことが書いてありました。
魔法で十二年前に遡ったこと。その時にユリアを魔法に巻き込んでしまったこと。
自分の本当の母親はユリアであったこと。
時を遡る魔法にユリアを巻き込んでしまったのは、その日、ユリアが我が子の元へ自分を導く魔法を使っていたためであったこと。
ユリアが我が子につけた名前も"オズル"だったので、フロウが自分ににその名をつけたことが驚きであったこと。
今までユリアが我が子の元へ自分を導く魔法が使えなかったのは、家に他の魔法使いによる結界があったため。また、二年前に自分がその家から追い出されたことを知らなかったためであること。
いつかフロウにもマディシナ村に来てほしいこと。もしかしたらフロウは本当は、村に行きたいと思っているのではないかということ、などなど。
『確かに。なんであの子に"オズル"って名前をつけたんだい?』
ルイーザがいかにも興味津々、という感じで訊くと、フロウは「なあに」と言って笑いました。
「なんとなく思いついたんだよ。この子は"オズル"だって」
そして、フロウが本当は村に来たがっているのでは、と書いたところで、二人は顔を見合わせて、
「ああ、ばれてるなぁ」
『ばれてるわね』
と言って苦笑いしました。
「戻れるならいつか村に戻りたいさ。でもねえ」
フロウの表情が曇ります。
「ほとんどの人が、あたしのことをいまだに憎んでるのさ。多分これからも、ずっとそう。戻りたくても、戻れない」
その数日後、オズルはフロウからの手紙を受けとりました。
そこにはこんなことが書いてありました。
オズルの本当の母親が分かって嬉しいこと。
オズルという名をつけたのはたまたまだということ。
村には戻る気は無いということ。村は嫌いだということ。でも、村は好きだということ。それをいつの間にか見抜かれていて驚いたこと、などなど。
オズルは村に来たばかりの頃、最初のお客さんにフロウは"悪い魔女"だと言われたことを思い出しました。フロウの過去は、二年間一緒に過ごしてきたのに、なんとなく噂でしか知りません。
「フロウの過去に、何があったんだろう」
オズルはフロウと二年間、一緒に過ごしているうちに、気付いていました。
フロウは人間が嫌いで、でも好きであろうことに。そうでもなければわざわざ"アンネ・フローラ"になって村に行くようなことはしないだろうということに。
とても"アンネ・フローラ"のときのフロウの振る舞いが演技には見えないことに。つまり、フロウは本当は村で過ごす時間が大好きだということに。
しかし過去に何かがあったがために、人間を信じてはいけないと自分に言い聞かせている部分があるということに。
(どうしてフロウが"悪い魔女"と呼ばれるようになったのか、ちゃんと知りたい。そして出来るなら……)
オズルは密かに決心しました。




