表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オズルとフロウの魔法使い日記  作者: 秋本そら
枷と向き合って
59/74

ユリアの憂鬱

 所変わって、ここは、キンダーヘイル。

 ユリアが店番をしています。


「……今日はお客さんが来ないわね」

 ユリアはぼそりと呟きました。

「お茶でもしようかしら」

 ユリアがそう言って席を立った時でした。

 その人物が現れたのは。


「よう、ユリア。久しぶりだな」

 ユリアは突然現れた元夫に驚き、憎しみを込めた目で見つめました。

「そんなおっかない顔すんなって」

 おどけたように言う元夫に、ユリアは低い声で尋ねます。

「……あの子は、元気なの?」

「あの子?……ああ、あいつか」

 ユリアが"あの子"と呼び、元夫が"あいつ"と呼んだ人物は、二人の間に生まれた一人息子でした。

 そう。ユリアが引き取りたかったのに無理やり夫——元夫に連れていかれてしまい、ユリアが守りのまじないをかけたのに、あの事件——森で隣村の人に襲撃された事件です——のせいでその呪いが解けてしまったという、あの一人息子です。

「あいつはな……家から追い出したぞ」

「——!」


「どうして!どうしてそんなことをするの!」

「だって、いたとしても邪魔なだけだったしな」

 ユリアはなんてことないようにそんなことを言う元夫が、どうしても許せません。

「ならあなたが引き取らなければよかっただけよ!」

「お前があいつの様子を魔法なりなんなりで知って、でもどうしようも出来なくて苦しんでるのを見たかったんだよ」

 元夫はいやらしく笑います。

「家に結界まで張ってもらってさ、いやらしいことするわね、昔から。あの子を産んだ時は私、あなたのことを信頼してたのに。なのに蓋を開けてみれば根が腐りきった嫌な男じゃない」

「そうだ。それか何か?」

「そのくせして街に出ると善人ぶってさ。あんたみたいなやつが一番最後には嫌われるやつなのよ」

「まあ、落ち着けよ。ある意味俺はお前にチャンスを与えに来たんだぜ?」

 元夫の言葉に、ユリアはかちんとしました。

「……どういう意味よ?」

「今まで結界の中にいたあいつには、お前は何にもできなかっただろ?でも、今俺は追い出したって言ったんだ。つまり、今あいつは結界の外にいるんだ。お前が魔法で呼び寄せようが何しようが自由だぞ?」

 面白がるような口調で話す元夫に、ユリアは怒りを抑えきれません。

「どうしてここに連れて来なかったのよ?」

「お前もあいつも絶望させたかったんだよ」

 元夫はおかしくてたまらないというように笑います。

「ま、これで帰るさ。ああ、これだけ買っていこう。ランプが壊れててね」

 ランプを買って帰ろうとする元夫を、ユリアは突っぱねます。

「あなたにランプは売らないわ。早く帰って!」

「ほーう。じゃあ噂を流してやろうか?俺にランプを売らなかったって。意地悪な女店主だって噂をな」

 意地の悪い笑いを見せられると、ユリアはもう何も出来ません。

「いいわよ、売るわ。千ルーよ」

「……高いな」

「物価が上がってるのよ。仕方ないでしょう?」

 ランプが千ルーなのも、物価が上がっているのも、嘘でした。

 ランプは本当は五百ルーです。しかし、元夫に正規の値段でランプを売る気にはなれなかったのです。

「ほいよ、千ルーだ」

 しかし元夫はそんなことを知る由もありません。千ルーを払ってさっさと行こうとしました。しかし、

「あ、言い忘れてた」

 不意に元夫は振り返ります。

「あいつを追い出したのは、二年前だ」

「えっ!何を言っているの?ねえ!」

 ユリアは元夫にもう少しちゃんとした話を聞こうとしましたが、元夫は手をひらひらと振り、聞こえないふりをして行ってしまいました。


「……酷いわ。あの子は……今頃何をしているのかしら。ちゃんと、生きているのかしら。あの子は私の大切な、一人息子なのに……!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ