つながり
あっという間に三ヶ月程が経ちました。
オズルもマディシナ村に慣れてきましたし、街中で両親を見てもそこまで動転しなくもなってきました。
オズルの魔法もかなり上達してきました。フロウにはできない魔法でオズルにできる魔法も、だんだんと増えてきて、今では魔道具を作ることも可能です。過去に遡る魔法も、あと少しで目的の年代まで遡れそうです。
過去に遡る時、どうしても辛かった自分の過去を見ることになってしまうのはとても苦痛でしたが、だんだんと過去を受け入れられるようにもなってきました。
その頃、森の中の小屋では。
フロウは今、森の中でのんびりと暮らしていました。一人で本を読んだり、風の精霊ウィルから風の拾い話を聞いたり、ルイーザと森の中に散歩したりと、魔法とは離れた生活を送っていたのです。
その日も、フロウはルイーザと一緒に森の中を散歩していました。
すると突然、「あいたっ!」という叫び声がしました。その声の方を見ると、怪我をしたらしい村人が。
『どうする、フロウ?』
フロウはどうするか迷いましたが、
「もう、助けに行くしかないかねえ。ルイーザ、頼むよ」
『はいはい』
一つ溜息をつくと、そう言って姿を変え、その男に近づいていきました。そしてルイーザは、何故か少し離れた場所に走り去っていきます。
「どうかなさいましたか?」
「あ、ああ。怪我をしてしまって……」
村人は突然現れた女性に驚いたようでしたが、そう答えてくれました。
「あら、どちらを?」
「ここの、足を……」
村人の足からは血が流れています。
フロウはルイーザに心の中で言いました。
『今だよ。村人の気をそらせるんだ』
「にゃーお」
遠くから猫の鳴き声が聞こえ、村人は足から目を離しました。ルイーザが鳴いて、村人の気をそらしたのです。
それを見たフロウは、その隙に癒しの魔法で村人の怪我を治します。そして、不思議そうな声で、言いました。
「あの、怪我はどこに……?」
「だからそこに……あっ、消えた!」
足を見た村人は怪我が消えたことに驚き、首を傾げました。
「どうして怪我が消えたんだ……?」
そういう村人にフロウはおずおずと、
「多分ですけど、この辺りってあの悪い魔女の家の近くじゃないですか?その魔女に怪我をした幻覚を見せられたんじゃないですかね……?」
フロウは"悪い魔女"である自分に、あるわけのない罪をなすりつけました。
「そうか!きっとそうだ。ありがとう、お嬢さん」
「お嬢さんだなんて恥ずかしいですよ。それでは、私はつくしを摘みに戻りますね」
「つくしですか!この辺りはあんまりありませんから……いっぱい取れるといいですね。ありがとうございました」
フロウは村人とそんな会話を交わし、その場を離れました。
『お見事だったね、フロウ』
「ルイーザが手伝ってくれたからさ。でも……」
『自分で自分に"悪い魔女"のレッテルを貼ってるじゃない』
ルイーザに痛いところを突かれ、フロウは「分かってるわよ」とだけ返します。
「でも、これでいいのさ」
フロウは呟きました。
「村人はあたしが悪い魔女じゃないと言っても信じない。だから、あたしは悪い魔女を演じきるのさ」
小屋に帰ると、机の上に見覚えのないものが載っていました。
小さな小包で、表には『フロウへ』とだけ記されています。裏に返すと、『オズル・アイーネ』と書いてありました。
転送の魔法でオズルがフロウに荷物を送ってきたのです。
フロウは慌てて中身を出しました。
するとそこから出てきたのは、手紙と小さなガラス玉に紐がついたものでした。
『フロウへ
フロウ、ルイーザ、元気?僕は元気だよ。
村にもすっかり慣れてきたし、フィリーも元気。
今、時を遡る魔法を練習中なんだ!今は11年前までは遡れるようになったよ。でもまだ父さんと母さんが魔法使いだったかどうかが分からない。もう少し頑張ってみるよ。
あと、これ。同封したのは「光の玉」だよ。
僕が作った魔道具なんだ。
暗くなると勝手に光を放ってくれるよ。明るくなったら勝手に光は消えるようになってる。もちろん、念じれば、光ってる時に光を消したかったら消すこともできるし、光の明るさの調整も出来る。もしよかったら使ってほしいな。
また手紙を出すね。
オズル・アイーネ』
「……オズルはやっぱり、あたしを超えていった」
フロウは少し悔しそうに、でも嬉しそうに言いました。
「どれ、あたしも手紙を書こうかね」
ある日の夜。
オズルのもとに、一通の手紙が届きました。しかも、魔法で。
(——フロウだ!)
オズルはフロウからの手紙にすぐに気付き、開封して読み始めました。
『久しぶりだね。元気そうで何よりだ。
魔道具、ありがとう。
ありがたく使わせてもらってるよ。
使いやすくていいね。
今日はオズルが魔法使いになってから一年だ。
一年でここまで出来るようになった魔法使いを見たことがない。
これからもどんどん成長してほしい。
初心を忘れるんじゃないよ。
これからも手紙、待ってるよ。』
手紙には、勿忘草が挟まっていました。
その花にフロウの想いが詰まっている気がして、オズルはその花を包み込みます。
「忘れるわけないでしょ、フロウ」




