"分かる目"のサフィー
薬屋を開いてからしばらく経ちましたが、常連さんが増え、さらに評判が良いためか、様々なところから薬を買いに来る人がいたため、生活して行けるほどには稼ぎが出ました。
(よかった。これで上手くいかなかったらどうしようかと思ったよ)
その日もオズルは店を開いていました。
(誰か来ないかな)
そう考えながら遠くを見ていると、その方向から、何故か転げるように駆けてくる少女の姿が見えました。
(そんなに走ったら、転ばないのかなあ)
オズルは不安になりましたが、少女はこの道を走り慣れているのか、転ぶことはありません。
「ねえおじさん!薬屋さんってどこ?」
かすかにそちらから少女のものと思われる声が聞こえました。おじさんと呼ばれた人はオズルの薬屋を指差して何かを言っています。
「ありがとう、おじさん!」
少女はそう言うなりこちらへと駆けてきて、叫びます。
「ねえ!ここがフィリップの薬屋さん?」
「そうだよ。いらっしゃいませ。どんな薬がいるのかな?」
その少女を見ていたオズルは、不意にそれに気が付いて、息を呑みました。
その少女は不思議そうに首を傾げてから、何かに気付いたようにあっと声をあげました。
「もしかして、サフィーのこと、知らなかった?」
「サフィー?
——ごめん、知らないや。最近引っ越してきたばかりで……ごめんね」
オズルはその名を聞いたことがありません。
「そうなの?じゃあ覚えてね!あたしはサフィー・フィリアンカっていうの!」
堂々と明るくサフィーは自己紹介をします。
その名を聞いたオズルは、はて、と首を傾げます。
(フィリアンカ?どこかで聞き覚えがあるような……)
そして、思い出しました。気付いたのです。
「もしかして……ナルさんの?」
「そう!お母さんはナル・フィリアンカだよ!」
言われてみれば、確かにナルやトーヤとサフィーは似ていました。その茶色の髪はナルに似ていて、髪型も同じです。顔立ちは父親のトーヤ似ですが、笑顔はナルに似ていました。
しかしどちらにも似ていない点が、一つ。
「サフィー、綺麗な目だね。しかも、オッドアイだ」
「ふふ、そうでしょ?サフィーもこの目が好きなんだ!」
サフィーは、青と緑のオッドアイだったのです。
「だってサフィーはね、"分かる目"のサフィーなんだもん。不思議な目の色をしてるからね、みんなのことが分かるんだ」
(分かる目……!)
それは、千里眼と透視能力を併せ持った人の呼び名でした。分かる目の人はオッドアイらしいという噂も、聞いたことがあります。
「あ、信じてないでしょ」
「いや、でもびっくりしちゃって。
……でも確かに、信じられないかも」
オズルが申し訳なさそうにいうと、サフィーはくすりと笑って言いました。
「じゃあ、フィリップお兄ちゃんのこと、見てみようか?お兄ちゃんの過去を当ててみせるよ」




