開店準備
マディシナ村に着いてから、一週間が経ちました。
その日、オズルはヘーメルオーストに向かって歩いています。ナルに、用事があったのです。
(……交渉がちゃんと、成立しますように)
「あらフィリップ!いらっしゃい」
「こんにちは、ナルさん。……あの、お話があるんです」
「なあに?」
いつもよりも少し緊張したような顔のオズルを見たナルは、不思議そうに首を傾げます。
そんなナルに、オズルは突然頭を下げました。
「あの、僕、薬屋さんを開こうと思うんです。なので、その材料になる薬草を、ここで買わせてください」
オズルは考えました。
(フロウからもらったお金も、そのうちすぐになくなっちゃう。だから働かないと)
お金がなければ食べ物を買うことができません。雑貨を買うこともできません。
つまり、ある程度のお金がないと、生活ができないのです。
そこで思いついたのが、薬屋でした。
(フロウがこの村に来なくなったら、この村にもう薬はこない。だからきっと、困る人がいる)
オズルはそう考え、具体的に薬屋を開くためのことを考え始めました。
(値段はなるべく安くしたいから、材料をまとめ買いして安くしてもらうしかないかなあ)
いつだったか、オズルは八百屋のアルに言われたのです。
『あんまり高いと誰も買わなくなるだろう?だから、仕入れる時には、まとめて買う代わりに安くしてもらうのさ』
薬草を仕入れる場所は、一箇所しか思いつきませんでした。
そう。ヘーメルオーストです。
(ナルさんにお願いして薬草を安く売ってもらえたら、利益をつけても安く薬を売れる)
実はオズルは、小屋を出る時に魔法書や小説だけではなく、商売の方法が書かれた本をフロウに貰っていました。なので、薬屋を開くための知識はそこで得ることができました。
(家の前に机を置けば、それだけでも薬屋は開けるかも。物は試しでやってみよう)
——というわけで、オズルはナルに薬草を売ってもらうための交渉に来ていたのです。
ナルの答えは、意外にも早く出ました。
「いいわよ。断るわけないじゃない!まとめ買いしてくれるんだったら安くするけど、どのくらい買ってくれるの?」
オズルは、あまりにも呆気なくナルが答えを返して来たのでびっくりしましたが、すぐに笑顔になって言いました。
「ありがとうございます!」
オズルはナルに、商売は初めてなので初めは少なめに薬を作って売るつもりだということ、売れ行きを見ながら買う薬草の量は調整したいことを伝えました。
ナルはそれに同意し、「参考になるかどうかは分からないけど」といって、売れ行きのいい薬草をオズルに教えました。売れ行きのいい薬草の効能を村の人たちは求めていると考えたのです。
オズルは早速いくつかの薬草を買っていきました。
「あら、意外と少なめなのね」
「あまり蓄えも残っていませんし、少量でもたくさん作れる作り方なんです」
「薬の作り方は誰に教わったの?」
「母さんに。何回か作ったこともあるので、薬作りにはちょっとだけ自信があるんです」
それを聞いたナルは、にっこり笑って言いました。
「薬が出来たら教えてね。ここに来た人たちにフィリップの薬屋さんのことを宣伝するんだから」




