向き合う理由
夕方になりました。
眠っていたオズルは、急に目を覚まして起き上がるなり、息を切らしました。その顔には、暑くない季節のはずなのに、汗が。
「……夢か」
オズルは昔の夢を見ていたのです。おそらく、両親である二人に会ってしまったために。
「……嫌な、夢だったなあ」
でも、オズルはどうしても過去と向き合わなければなりませんでした。何故なら——
「でもやっぱり、二人は魔法使いじゃないと思うんだよなあ」
——そう。自分が生まれつきの魔法使いだったのに両親が魔法使いではなかった、その理由が知りたいからです。
オズルは何度か記憶の魔法を使ったことがありました。元々は自分の過去と向き合うために、今は両親のことを知るために。
自分の過去と向き合うため、オズルはキンダーヘイルで買ってもらった記憶のペンダントを使いました。
そのペンダントのおかげで、様々な事を思い出すことができました。しかし、それと同時に両親から受けた傷を思い出して、心が苦しくなったりもしました。オズルは過去を思い出しただけ。向き合いきれていないのです。
まだ傷は癒えていません。癒えることは無いのかもしれません……。
しかし、オズルの両親であるギニアとユリーシャが魔法使いかどうか……それは、分からなかったのです。記憶の精霊のメリー・アクトに力を借りたり、魔道具の記憶のペンダントを使ってみたりもしたのですが、うまくいきませんでした。オズルの記憶には残っていなかったのです。残っていなかったと言うよりかは、そもそも知らなかったと言うべきかもしれませんが……。
(僕が知らないだけで魔法使いなのかなぁ)
その答えを知ろうとするならば、方法は二つ。
一つ目は本人、つまりギニアとユリーシャに魔法使いかどうかを訊くことでした。
しかし、オズルにはそんなことはできそうにもありません。そんなことを尋ねたら不審な目で見られることは間違いないでしょう。
二つ目は、時を遡る魔法を使うことでした。
実は、時を遡る魔法は非常にレベルが高く、他の魔法使いよりも優れた方であるフロウでさえも、使うことができない魔法でした。
しかし、フロウは昔、オズルにこんなことを言ったことがありました。
『オズルなら、時を遡る魔法でさえ使えるかもしれないねえ。オズルにはそれぐらい、飛び抜けた才能があるよ』
そして、オズルが小屋を出る前にフロウに貰った魔法書の中に、時を遡る魔法の使い方も書いてありました。
なので、オズルは決めていました。
時を遡る魔法を身に付けよう、と。
それは、再び自分の過去と向き合うことを意味していました。
ある意味自分の枷となっている過去と向き合うことを……。
「ああ、もうこんな時間!晩ご飯を作りたいけど、何もない……」
カーテンを開けて、紫色に染まる黄昏時の空を見ながらオズルは頭を抱えましたが、荷物の中からフロウに持たされた幾らかのお金を取り出すと、外に出てフィリーを呼びました。
「とりあえず、パンとミルクを買いに行こう。他の食べ物とか雑貨は明日でいいよね」
「にゃー」
オズルはフィリーを連れ、出かけていきました。




