家具と服の偽善者
「いらっしゃい。"家具屋のウラン"へようこそ」
(……嘘だ)
「何か入り用の家具はあるかい?」
「あ……今日引っ越して来たばかりなんです。なので、色々揃えたいなぁって思って……」
(どうして)
「だとしたら、君がフィリップだね?」
「どうして、それを?」
「村のみんなが教えてくれたのさ。事情も聞いたよ。それなら任せときな!今回は特別に、みんなただで揃えてあげるよ」
「本当ですか!」
「ああ、勿論さ。このギニア・ウランに任せときなって!」
(……この人は、こんな人じゃない)
オズルは、家具屋のウランに来ていました。
そして店主のギニア・ウランの姿を見るなり、オズルは倒れこみそうになりましたが、なんとか我慢してギニアと話していました。
(こんなことって……ありなの?)
村の人々が口々に「優しい人だ」「いい人だ」と言っていた家具屋の店主が、オズルに笑いかけているその人が、あのオズルの父親だったのです!
ギニアは表に出たかと思うと、突然隣の服屋に向かって、「おーい、ユリーシャ」と呼びかけました。
「なあに?」
そう言って現れたのは、ギニアの妻でありオズルの母親のユリーシャ・ウランでした。
オズルは卒倒しそうになりましたが、なんとか我慢します。二人ともオズルが卒倒しかけたことには気づかなかったようです。
そしてギニアはユリーシャにこう頼んだのです。
「この子に似合う服を選んでくれよ。俺たちからの引っ越し祝いってことでさ」
「そ、そんな!」
オズルが色々な意味で驚いていると、ユリーシャがオズルを見つめて、
「ちょっと待ってて、すぐにあなたに似合う服を選んでくるから」
と笑顔で言うなり、店に戻っていってしまいました。
「……いいんですか?」
オズルがおずおずとギニアに問うと、ギニアは笑顔で答えます。
「いいんだよ。むしろこんなことしかできないからさ」
オズルは笑顔で「ありがとうございます」と返しながらも、思います。
(父さんも母さんも、こんなに優しい人だとは思えない。心の中で何を思っているかは分からない。二人の心の内を魔法で読むのは……怖い)
結局、ユリーシャは紙袋にいっぱい服をくれました。そしてその服たちはどれもオズルにぴったりか少し大きいぐらいの服で、とても似合うデザインのものばかりでした。
「こんなにたくさん!ありがとうございます」
「いいのよ。これぐらいしかできないから」
そう言って笑うユリーシャの顔は、オズルの目にはどこか不自然に見えました。
(……多分、偽物の笑顔だ。仮面を被ってるんだ)
ギニアの笑顔だって、オズルには最初から作り物の笑顔に見えていたのです。
(優しい人を演じてる……演じてるだけだ)
オズルは二人の本性を、知っていました。
その後、オズルはタンスと本棚、机と椅子に棚やベッドなどを貰いました。家具を運ぶのはギニアや近所の村人が手伝ってくれました。さらにギニアは、カーテンが日に焼けて埃だらけだからと新たなカーテンをくれました。
「また何かあったら声かけてくれよ」
そう言って去っていくギニアを見送り、家の中で一人になったオズルは、へなへなとその場に崩折れてしまいました。
嫌な疲労が、オズルを襲ったのです。
オズルはその崩折れた状態のまま、眠りについてしまいました。




