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オズルとフロウの魔法使い日記  作者: 秋本そら
開き始める隙間
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使い魔 フィリー・アイーネ

 満月の日になりました。

「フィリー、満月の日が来たね」

「にゃーお」

 自室にいた二人は少しばかり緊張しているように見えました。それもそのはず、フィリーはこれからただの黒猫ではなくなりますし、オズルは儀式を自らの手で行うのが初めてなのです。

「……行こっか」

「にゃ」

 オズルは十五日前の新月の日に用意したコップを持ち、ゆっくりと水をこぼさないように部屋を出ます。フィリーがその後からついていきました。

 広い部屋にいたルイーザが小屋を出て行く二人を見ていました。そしてルイーザは『頑張ってね、二人とも』と言い、フロウがいる自室へと向かいました。

 ちょうどそれと同じ頃、小屋を出たのが分かったのか、自室で小説を読んでいたフロウは顔を上げ、空に浮かぶ満月を見ながら呟きました。

「——満月か。あたしも初めての儀式は緊張したねえ……」


 十五日前の新月の日とは違い、満月なので、森の中でもほんのり明るく、手には水に入った銀色に光る花がありましたから、オズルでも昼間のように森の中を歩くことができました。フィリーは……言うまでもなさそうです。

 泉に辿りつくと、オズルはコップを地面に置いて深呼吸をしました。

 オズルは少しばかり緊張した声で、言いました。

「儀式を始めるよ、フィリー」


 二人は儀式の方法を頭に入れていたので、儀式は無言で進んでいきました。

 オズルは銀色に光る花をコップから取り出してフィリーに差し出しました。フィリーはくんくんとそれを嗅いだかと思うとむしゃむしゃと食べてしまいました。

(——ここからだ)

 オズルは心の中でそう呟き、コップの中から今度はサファイアを取り出します。そのサファイアを両手で包み込むようにして持ち、オズルは言いました。

「この宝石は、黒猫フィリー・アイーネが、魔法使いオズル・アイーネの使い魔であることを示すものである」

 オズルはフィリーの首回りの大きさを手で測り、サファイアに魔法をかけて首輪を作りました。その首輪をフィリーにつけながら、オズルははっきりと言いました。

「この首輪は、もう二度と取ることはできない」

 その首輪は、フィリーにぴったりの大きさでした。

 オズルはほう、と一つ溜息をつきました。そして、コップに残った水の三分の二を飲み、残った三分の一に魔力を分け与えるイメージをして、魔力を込めました。そして、手にこぼしてフィリーにそれを飲ませます。

 フィリーが全ての水を飲みきった時、オズルはフィリーのことを撫でながら、言いました。


「フィリー・アイーネはオズル・アイーネの使い魔である。静かに満ちる月が、証人となるであろう」


 何も音がしない森に、オズルの声が響き渡ります。


 フィリーがオズルの使い魔になった瞬間でした。

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