独学
オズルは早速、自室で魔法書を読み始めました。
「前よりも難しそうな魔法が増えたなぁ」
思わずオズルは呟きます。
それもそのはず、魔法陣を描いて瞬間移動をする魔法に、魔道具や精霊の力を借りてかける魔法、フロウが得意とする自然と魔力の融合など、前よりもレベルの高い魔法の使い方が書かれた本ばかりだったのです。
「うーん……とにかく、練習してみよう。分からなかったらフロウに聞きにいけばいいじゃないか」
オズルは自分にそう語りかけ、魔法の練習を始めました。
「魔法陣……か」
オズルは瞬間移動の魔法を練習し始めました。
しかし、オズルには魔法陣の描き方が分からず、前の本に戻って描き方を探したりと、ばたばたとしていました。
「……昨日村から帰ってきた時、フロウはどんな順番で描いてたっけ?」
魔法陣は二重丸の中に六芒星を描いたような形をしています。
紙の上に書いて高度な魔法を用いるために魔法陣を使う場合は、魔法陣のあちらこちらに呪文などを書かなければなりませんが、空中に魔法陣を描く魔法(今回の瞬間移動の魔法もこの中に入ります)の際は呪文を書く必要はない、ということになっています。
単純な模様なのですが、オズルは書き順を気にし始めてしまい、なかなか進みません。大きな円から、小さな円から、六芒星から、などというような書き順は特には決まっていないのですが……。
「そうだ、フロウは大きな円から描いてた」
オズルはフロウが魔法陣を描くときの描き方を真似ることにしたようです。
オズルは魔法陣を描き始めました。
まずは、大きな円。その中に、一回り小さな円。その中に、六芒星が一つ。
オズルが描いた円は少し歪んでいたり、六芒星もバランスがいいとは言えませんでしたが、その魔法陣は、ちゃんと使えるよ、と言うかのように、緑色の光を放ち始めました。描く人によって、魔法陣の色が変わるようです。
オズルは瞬間移動の先を家の庭にしようと考えて、庭をイメージしながら魔法陣に手をかざし、言いました。
「いざ、家の外へ。あの庭へ」
『暇だねえ。フロウは本を読み始めちゃうし、オズルは魔法の練習中だし、フィリーは昼寝をしちゃうし。話し相手が誰も——』
「わっ、ルイーザ!庭にいたの?」
ルイーザの独り言を、オズルが見事に遮りました。なんとオズルは、瞬間移動の魔法を一発で成功させたのです。
突然現れたオズルに驚くことなく、ルイーザはオズルに話しかけます。
『あら、オズル。魔法の練習は順調?』
「うん。瞬間移動の魔法を練習してたんだ。初めてだったんだけど、上手く行ったみたい」
オズルが一発で瞬間移動の魔法を成功させたと聞き、ルイーザは目を丸くしました。
『えっ?フロウでさえ何度も失敗したのに……』
「うそ、あんなに魔法を操れるフロウが?」
今度はオズルが目を丸くする番です。
いつも見事に魔法を操り、尊敬しているフロウが魔法に失敗をするところなど、オズルには想像できませんでした。
しかし、ルイーザはあっさりと言います。
『本当よ。短距離なのに何度も失敗して、変なところに移動しちゃったり、移動が出来なかったりね』
「えー……なんか、信じられないなあ」
オズルは首をひねります。
『ああ、オズル。そういえば、瞬間移動の魔法は距離が遠くなればなるほど難易度が上がるわよ』
「うん。そんなことが本にも書いてあった気がする。少しずつ距離を伸ばして頑張るよ」
『その意気よ、オズル』
ルイーザに応援されて、オズルはうなづきます。
「よーし、今度は泉まで行ってみようかな」
「……ああ、失敗した……」
オズルは泉に行こうとして、マディシナ村の中にある"アンネ・フローラ"の家の中に来てしまいました。
幸いにも、ついた部屋は窓が一つもない部屋で、外から誰かに見られることもありませんでした。
「やり直そう。あの家からここに来れたんだもの。ここからあの家に帰れるはず」
オズルは呟くと、再び魔法陣を描きます。回数を重ねることに、魔法陣も綺麗に描かれるようになっていきます。
手をかざして、家の自室を思い浮かべて、一言。
「いざ、僕の家へ。あの部屋へ」
「……あ、よかったあ。今度は上手くいった」
オズルは今度は魔法を成功させました。
「けど……やっぱり体力も魔力も使うんだね。疲れてきちゃった……」
自室のベッドにごろんと横たわったオズルは、そのまま寝てしまいました。
『あら。風邪ひくじゃない』
窓の外からその様子を見たルイーザは、魔法を使ってオズルに布団をかけてあげました。




