原点
「オズル、随分魔法が上達してるじゃないか」
森の中の小屋に戻ったフロウは、夕飯を作りながら、感心したように言いました。オズルは嬉しそうに、
「フロウに教えてもらった魔法も、本で勉強した魔法も、たくさん練習したんだもん」
「そうか。応用も利くようになってきているしな」
「フロウが言ってたでしょ?『魔法を使う上で大事なのは想像力。どれだけ強く、具体的に想像できるかだ』って。フィリーにも言われたんだよ。『まほうつかいにはきっと、まりょくとそうぞう力が必要なんだよ』って。僕、その通りだなって思ったんだ。強く想像したら、応用も利きやすかったからね」
フロウのことをきらきらとした目で見ながら、オズルは話します。
「……そうか。ほら、ご飯にするぞ」
「はーい!」
夕食を食べながら、フロウは不意に言いました。
「あ、オズル。明日の朝ごはんはオズルに作ってもらうからな」
「えっ⁉︎」
突然のフロウの言葉に、オズルはびっくりします。しかし、フロウは平然として、
「献立も任せるから、四人分、作ってみな」
と言いました。
「う、うん」
オズルが不安そうにうなづくと、フロウが思い出したように付け足しました。
「ああ、勿論魔法で作るのはなしだぞ」
「うん、分かってるよ……」
翌朝。
オズルは台所に立っていました。
「作り方も材料も、ちゃんと分かってるんだよ。だけど、実際に作るのは初めてなんだよ……」
オズルは今まで、フロウが料理を作っているところを見続けてきました。そして、レシピを魔法紙にメモしていたのです。しかし、実際に作るのは今日が初めてでした。
「……よーし、頑張るぞ」
それから三十分後。
「……うん、まあまあいけるな」
『スープもおいしいよ!』
『まあ、少ししょっぱいけどね』
机の上にはサンドイッチとスープがありました。サンドイッチの見栄えはいつもよりも少し悪く、スープも少しばかり塩が強かったのですが、初めてにしては上出来でした。
「本当に?よかったあ」
オズルは嬉しそうにそう言って、サンドイッチを頬張ります。
「あのね、失敗しないか不安だったけど、とっても楽しかったよ!」
「そうかい。じゃあまた作ってもらおうかね」
「うん!」
ご飯を食べ終わった後、フロウは魔法で何冊かの本を取り出したかと思うと、オズルに渡しました。
「あたしは使わないからやるよ」
よく見てみると、全て魔法書です。
「ありがとう!」
「ああ、あとこれも。次の満月の時に使いな」
フロウが次に取り出したのは、サファイアでした。そう、いつだったかにワップバーダで買ったサファイアです。
「ありがとう、フロウ」
そう言ってサファイアを握りしめるオズルは、その使い道を、既に知っていました。




