魔法使いの危機
「……魔法でも無から有を生み出すことは不可能、魔法をつかえばそれなりに自分の魔力や体力を消耗する……だって」
オズルはその日も、本を読んでいました。
「魔道具は大きく分けると、消耗する魔力や体力を減らすものと、それらを引き出すがために益々消耗させてしまうものの二種類……かぁ」
オズルは魔法紙と笛の万年筆を取り出しました。
「……これは前者だよね……?」
オズルが予想した通り、それら二つは、消耗する魔力や体力を減らしてくれるものでした。大した魔力が無くとも、使いこなせる物なのです。
「記憶のペンダントは……どっちだろう?」
オズルはキンダーヘイルで記憶のペンダントを買ってもらっていましたが、使ったことがないのでどちらか分かりませんでした。
「えーっと、自分の体にある六芒星は傷つけてはいけない……えっ⁉︎傷つけると、魔力を失ってしまいます……だって……」
オズルは背中にあるという緑色の六芒星を思い浮かべました。それが傷ついてしまったら、魔法使いではなくなってしまう?
オズルにとってそれは、とても恐ろしいことでありました。そしてきっと、この世の中にいる全ての魔法使いや魔女が恐れていることでもありました。
誰かに六芒星を傷つけられてしまったら、もうおしまいです。
「あ、でも……もう一度魔法使いになる方法があるんだ。それは、身近な魔法使いに、少し魔力を分けてもらうこと……だって。少し分けれもらえれば、そのあとは自然と魔力を取り戻せるのか……。なんか、人の体が怪我した時みたい。怪我した時って、多少手当をすれば自然と治るもんね」
オズルはふと、考えました。
「もし僕がそんなことになったら……フロウの魔力を、分けてもらうことになるの?」
魔力は多少分けても、そのうち元に戻るのだと本には書いてありました。怪我をして血が流れ出てしまっても、多少ならばそのうち血の量が元に戻るのと同じように。
しかし、少しばかり心苦しいことでした。
しかも、それは失敗するリスクが高い魔法でした。
「もしそんなことが起こってしまったら……やだな」
「……ずっと本を読んでいたし、たまには誰かとお話ししたいな」
今日はフロウは不在ですし、ルイーザとフィリーは猫同士、いつもご飯を食べる部屋で話しています。きっと使い魔についての話でもしているんだろう、とオズルは思っていました。とにかく、今オズルは一人なのです。
オズルは立ち上がると窓を開けて、カールを呼びました。約束の言葉を口にして。
『オズル!正式な魔法使いになったんだって?おめでとう!』
カールはやって来てすぐ、そう言いました。
「おめでたいことなの?」
『そうだよ!正式な魔法使いじゃない魔法使いは、かなり厄介者扱いされるしね』
「へえ……知らなかった。ありがとう、カール」
オズルがそう言うと、カールは『で、用事はなんだい?』と尋ねてきました。
「いや、風の拾い話を聞きたかったんだ」
『そうか。まあ、一緒に話そうよ』
二人がそう言って笑いあった時でした。
『君がオズルかい?』
慌てた様子の風の精霊が、飛び込んできたのは。
「君は……風の精霊、だよね?」
『そうだよ。フロウの友達さ。そしてオズル、僕は君に伝言があるんだ。緊急性の高い伝言が』
その風の精霊は早口で話しすぎたので、一旦息を吐いて、深呼吸をして、言いました。
『フロウの六芒星が……傷ついたんだ』




