魔法使いの誕生日
(——生まれつきの魔法使いだったのか)
フロウは驚きながらも納得していました。
(たしかに……生まれつきでなくてあんなに強い魔力を持つ者など、滅多にいないからな)
しかしオズルは、納得がいきませんでした。
(どうして?父さんも母さんも、魔法使いじゃない。何もないところから何かを取り出すようなこともなかった。魔法を使っているところなんて見たことない)
フィリーは状況がつかめないのか、首を傾げています。
オズルの動揺を感じ取ったフロウは、言いました。
「取り敢えず落ち着きな。オズル、お前の背中には緑色の六芒星がある。オズルは生まれつきの魔法使いだ。あたしも詳しいことはよく分からないけど。だとしても、やることは一つだけだ」
オズルは一旦色々考えるのをやめて、言いました。
「……正式な魔法使いになるための儀式、だね」
「そうだよ。オズルとあたしはそれをやるだけ」
フロウのその言葉を聞いて、オズルは深呼吸をしました。
「——うん、そうだね」
と言いました。オズルは動揺を抑えることが出来たようです。
フィリーも「よく分からないけど大丈夫なのかな」と思ったのか、心なしか表情が和らいで見えました。
フロウは泉の水で手を洗うと、濡れたままの手でオズルの背にある六芒星に触れます。
オズルは自然と、目を閉じていました。
フィリーがそれを静かに見ています。
フロウが、厳かに告げました。
「この者は、今日から魔法使いとなる者である。静かに満ちる月が、証人となるであろう」
フロウの声が、森の中に響きわたるのを、オズルは感じていました。そして、月の光の粒が染み渡っていくのを、感じていたのです。
目を閉じていたので何も見えませんでしたが、オズルはたしかに、そう感じていました。
「——オズル。今日からお前は、正式な魔法使いだ」
フロウの声に、オズルは目を開けて、呟くように言いました。
「——はい」
不思議なほど自然に、その言葉が出て来ました。
新たな魔法使い、オズル・アイーネの誕生の瞬間でした。




