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オズルとフロウの魔法使い日記  作者: 秋本そら
前進して、振り返って
36/74

言葉

「今日のお昼も美味しい!」

 オズルがお昼ご飯——ご飯と焼き魚を食べながら言いました。しかし、フロウは素っ気なく一言、

「もう聞き飽きたさ」

 とだけ言いました。

 でも本当は嬉しいのだとオズルは知っていましたから、その言葉にへこむことなく、笑顔でご飯を食べていました。

「で、魔力を操れるようにはなったか?」

「うん。感覚を掴めば簡単だったよ」

 オズルがそういうとフロウはお茶を少し飲み、少し考えて言いました。

「なら新しい魔法でもやるか。今度は動物の言葉が分かるようになる魔法なんてどうだ?」

「やる!」

 オズルは目を輝かせます。フィリーもオズルやフロウを見つめて嬉しそうにしています。ただ、ルイーザだけがつまらなさそうな表情をしているように見えたのは、気のせいでしょうか。

「ならさっさと食べちまいな。ここを片付けたらやるよ」

「うん!分かった!」

 フロウはオズルの返事にもまともに応えようとはしませんでしたが、ふと思いついたように言いました。

「でもちゃんと噛んで食べるんだよ。いいね?」

「分かってるって!」

 そう答えながらもオズルはフロウの変化に気付いていました。

(——前はこんなこと、言われなかったな)


 フロウはオズルに皿洗いを頼んで、森の中からリスと小鳥を捕まえてきました。フロウが家に帰ってきたときには、オズルも皿洗いを終えていました。フロウが魔法で皿を片付けたら、練習開始です。

「いいかい。動物の言葉を聞きたいときは、鳴き声に魔法をかけるんだ。人の言葉になれ、と念じながら魔法をかけるんだよ。動物が人の言葉で話しているのを想像するのもいいかもしれないねえ。やってみな」

「うん」

 まずは、リスから試してみることにしました。

 けたけたけた、とリスが鳴く声が聞こえます。オズルはその鳴き声に魔法をかけました。

(さっきの箱から少しだけ魔力を出して……)

 先程は箱に魔力をしまい込んだイメージをしたので今度は出すイメージをしながら、オズルは心の中で言いました。

(リスさん、なんて言っているの?リスさんの言葉が人の言葉に聞こえますように)


『ねえ、ここどこなの?どんぐりもないし、くるみもない。お腹が空いてるんだよあたしは!ここから出しておくれよ!』

 不意に、オズルの耳に甲高くて早口な言葉が聞こえました。

「あっ!リスさんの声が聞こえた!」

 オズルは嬉しそうに言いましたが、お腹が空いているというリスが少しかわいそうになり、森の中にあるどんぐりをイメージして、どんぐりを出してリスにあげました。リスは大喜びでそのどんぐりを頬張ります。その様子をオズルは嬉しそうにみています。そんなオズルにフロウが声をかけます。

「なら小鳥はどうだ?」

 その声に促され、オズルは小鳥の鳴き声にも先程と同様に魔法をかけました。

『森の中のみんなはどこなの?貴方達はだあれ?だれか私の歌を聞いてくれない?』

「僕はオズル。君の歌を聞いてもいいかい?」

『……え?なんて言っているの?』

 オズルは小鳥の言葉に応えましたが、小鳥は人間の言葉が分からないのか、聞き返してきます。

(……待って。もしも僕の声に、鳥の声に聞こえる魔法をかけられたら……)

 オズルはそう思いつき、試してみました。

『僕、君の歌が聞きたいんだ。聞いてもいい?』

『いいわよ!嬉しいわ、とっても!』

 魔法が成功したのか、今度は小鳥は大喜びしました。そして『これは恋の歌なのよ』といって、歌い出しました。それはとても可愛らしい歌でした。

 オズルはうっとりと聴き惚れました。

 オズルは試しに自分の声に、リスの声に聞こえる魔法をかけ、『きれいな歌声だね』と声をかけてみました。すると、『こいつは森で一番歌が上手いんだよ』と返してくれたではありませんか!

 歌が終わりました。オズルは自分の声に再び魔法をかけて、言いました。

『ありがとう、小鳥さん』

『こちらこそありがとう。私の歌を聞いてくれて。あ、でも私は小鳥さんじゃなくてチイって言うのよ。覚えておいてね』

『可愛い名前だね!僕はオズル。よろしくね、チイ』


「……オズル、まさか今、自分の声に魔法をかけたのか?」

 今まで何も言わなかったフロウが、驚いたように尋ねます。

 自分の声にかけた魔法を解いて、ちらりと小鳥を見ながら答えました。

「うん。小鳥さんが、僕の言葉が分からなかったみたいだから……」

 フロウは目を丸くしています。

「……あたしですら、自分の声に魔法をかけるのには時間がかかったのに……」

 フロウの声に振り返ったオズルは、次の瞬間、目を丸くしました。

 滅多に笑わないフロウが、嬉しそうに笑っていたのです。

「やっぱりオズルには、魔法使いになれる才能があったわけだ」

 そう言って、すぐにその笑顔は引っ込めてしまいましたけれど、その笑顔はずっと、オズルの中に残り続けたのでした。

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