操るために
「オズル、今日はちゃんと魔法の練習ができたみたいだね」
「うん。お昼ご飯も美味しかったよ!」
「明日はまた新しい魔法をやってみるか?」
「ううん。風の精霊さんに魔力を操る練習をした方がいいって言われたから、明日はその練習をするよ」
「……そうかい。ならあたしは明日は薬づくりでもしようかね」
——こんな会話があったのが、昨日のことでした。
そして、今日。
オズルはもらった本を開き、魔力を操る方法を考えていました。
『ねえ、なんて書いてあるの?黒いもようがいっぱいだよ!』
「魔力の操り方って書いてあるよ。大きく分けて、二つだって。物に頼る方法と、自分で操る方法……だって。えーっと、魔力がうまく引き出せない時……こっちは今はいいや。魔力が抑えきれない時……うん、こっちだ」
『え?なになに?』
「こっちに僕が知りたいことが書いてあるんだよ」
『そうなの?』
「うん」
オズルはフィリーと話しながら、考えていました。
(——確かに、フィリーとお話できるのは楽しいけど、楽しいけれど、今フィリーの声が聞こえているのは、魔力が抑えきれていないから。あまり良いことじゃない)
「物に頼る方法だと、物に魔力を少し封じ込めておくとか、魔力を抑えてくれる魔道具を使うとかになるんだね。でもあんまり物には頼りたくないな」
『どうして?』
フィリーは首を傾げて、オズルを見つめています。オズルは少し考えて話し始めます。
「だって、もしも、魔力を封じ込めていた物が壊れたらどうする?魔力を抑えてくれる魔道具が無くなったら?」
『う、うーん……たいへんなことになるね』
「そうでしょ?だから、自分の力で抑えられるようになりたいんだ」
オズルがそう言うと、フィリーは納得したようでした。オズルは引き続き本を見ています。
「自分で操る方法は……ああ、これだ。——ええっと、まずは魔力が自分から出て行っているのを想像しましょう、だって」
オズルとフィリーは顔を見合わせました。
「なんか、想像が多すぎない?」
『まほうつかいにはきっと、まりょくとそうぞう力が必要なんだよ』
「だから想像が多いのかな?」
オズルは首を傾げながらも、目を閉じて自分から魔力が出て行っているのを想像しました。
(きっと目に見えないオーラのようなもので、色があるなら眼の色とおんなじかな……)
想像してから目を開くと、本当に自分の周りに緑色のオーラがあるように感じます。
オズルは再び本に目を向け、読み上げました。
「——出て行っている魔力を、自分の中に封じ込めるイメージをしましょう……か」
オズルは目を閉じ、再び想像をしました。
(緑色のオーラが僕の周りにある。それを自分の中に封じ込めるんだ……)
目を開けて、自分の周りを取り巻く緑色のオーラ——魔力を封じ込めていくイメージをしていきます。
(戻って来て……戻って来て、僕の魔力たち)
だんだんと何かが入ってくるのが分かりました。きっとそれが、魔力なのでしょう。
『がんばって、オズル!』
そう応援してくれるフィリーの声が、何かが入ってくるにつれて、だんだん聞こえなくなってきました。その代わりに聞こえてきたのは、
「にゃーにゃー!」
という猫の鳴き声でした。そう、これがフィリーの本来の声です。
猫の鳴き声が聞こえて来る頃には、何かが入ってくるのが止まっていました。操りきれなかった魔力を操ることができたのです。
「……出来た!」
オズルはほっと一息つきました。
しかし、それも束の間。
『出来たの?すごい!』
再びフィリーの声が人の言葉となって聞こえたのです。つまり、今は魔力を操りきれていないということでした。
「しまった……」
オズルは考えました。
(どうして魔力が操りきれなくなったんだろう?)
どうしたら良いか考え、オズルは気を取り直して、やり直します。そして今度は、魔力が全て戻ってきたと感じたら、今度はそれを箱の中に入れるイメージをしました。自分の中に魔力を入れておくための箱があって、その中に入れて蓋をするようなイメージです。
「……よし、これで大丈夫なはず」
今度こそは、再びフィリーの声が人の言葉に聞こえるようなことはありません。
魔力を操る方法を身につけることができたのです。




