精霊の忠告
「——カール!」
『久しぶりだね、オズル。元気そうだね』
風の精霊、カール・サリアでした。
「呼んでいないのに……どうして、ここに?」
『いや、あのね。オズルは魔法を自分で使おうとしていない時でも魔法を使ってしまっている時があるからね。今もそうだよ。ちょっとそれは良くないと思ったから見過ごせなくってね。ちょうどそばを通ったから寄ってみただけさ』
カールは部屋の中に入るなり少年の姿に変わりました。そしてベッドに腰掛けているオズルの隣に腰掛けると、言いました。
『あのね、自分の魔力は自分で操れるようにならないといけないんだよ。魔力に操られたらダメだ。今のオズルは、どちらかというと魔力に操られている方だよ』
持っている魔力が強すぎるからね、カールは付け足しました。オズルは戸惑ったような顔になり、困ったように聞きました。
「どうやったら、魔力を操れるの?」
『それは……自分で身につけるしかないんだ。操り方は人によって違うからね。だから僕が教えられるようなことではないんだ』
「……そっか。僕、頑張るよ」
そう言ったオズルの目には、少々恐れの色が混じっていましたが、決意の色が見えました。
その時、カールはふと思い出したように付け足しました。
『あとは、次の満月の時に魔法使いになるための儀式を受けることだね。正式な魔法使いになるのとならないのとでは、全然違うんだよ』
「そうなの?なら、明後日に儀式をフロウにしてもらおう」
笑顔になってオズルがそう言いました。少し荷が軽くなったような笑顔でした。
その時、フィリーが慌てたように、
『ぼくは?ぼくはついていっていいの?』
と問いかけました。
『うーん……使い魔になりたいと願うなら、ついて行ってもいい決まりだよ』
カールが答えると、フィリーは弾んだ声で、
『つかいまってなに?なにそれ?』
と再び尋ねます。好奇心に溢れた声で。
『簡単に言うと、魔法使いの手下みたいなものかな』
「例えば……ほら、ルイーザはフロウの使い魔だろう?」
『そっか!そうだね!ぼく、なりたいな』
二人の答えにフィリーはさらに声を弾ませます。
『きっとフィリーならなれるさ』
カールはそう言うと、手で本に風を送るようにしました。そう、さっきまでオズルが読んでいた本です。
するとどうでしょう。勝手に本のページがめくられて、あるところでぴたりと止まったのです。ページのタイトルは「使い魔について」です。
『ここに使い魔になるためにはどうしたらいいかも書いてある。あと、使い魔になることによるメリットとデメリットも』
「ありがとう、カール」
オズルが礼を言うと、カールはふと考え込んで、もう一度本に風を送るようにしました。
そのページのタイトルは「魔力を操るためには」でした。オズルははっとします。
『さっきは人それぞれだから、方法は自分にしか分からないって言ったけど……主な方法や参考になる知識が載ってる。役には立つかもよ』
「……ありがとう。参考にするね」
そう言ってオズルは、微笑んだのでした。
不意に、カールが耳を澄ませました。
『ああ、友達が呼んでる。行かなきゃ』
「今日はありがとう!」
オズルがそう言っている間にもカールは元の姿に戻り、飛び去ってしまいました。
「——約束の言葉、言えなかったな」
オズルの声が、静かな部屋に響きました。




