魔法の座学
昼食を食べ終わったオズルは、フロウに貰った本を読んでいました。
『魔法に関する知識や簡単な魔法が載っている。読まないよりかはいいだろう』
あたしにはもうこの本はいらないから、とフロウは素っ気なくそう言って、その本をくれたのです。
「ねえフィリー、魔法には何種類かあるんだって!」
「にゃ?」
フィリーは「本当に?」と言うかのように鳴きました。オズルもそう言ったように感じたのか、「本当だってば」と言いながら、本を読んでいます。
「自分の魔力を使う魔法、精霊の魔力を使う魔法、魔道具の力を借りる魔法、精霊と魔法使いの魔力の融合……だって。あ、植物と魔力の融合、なんてのもあるよ。フロウが作ってる薬とかもここに入るのかな?」
オズルがフィリーにそう問いかけると、フィリーは「分かんないよ」と言うかのように、「にゃーお」と鳴きました。
「いろんな魔法があるんだね。僕、知らなかったよ。あ、他にも色んなことが書いてあるよ」
そう言って本を再び覗き込んだオズルを見たのでしょうか、フィリーも本を覗き込んでいます。字が読めないはずなのに。フィリーも本を読んでみたいのでしょうか。
「魔法使いになるには、だって!魔法使いの血を受け継いで……つまりは生まれつき魔法使いだった時は、体のどこかに、瞳の色と同じ色の、六芒星の痣があります……か」
オズルはふと考えました。
「フロウにも、どこかに六芒星があるのかな?」
もしフロウが生まれつき魔法使いだったとして、手や顔などの目立ったところに六芒星があるわけではないのを、オズルは知っていました。同居して一年が経っているのですから、当然かもしれません。考えても分かるわけがないと思ったのか、途中で考えるのをやめて、再び本を読み始めました。
「生まれつきの魔法使いではない場合は……魔法使いの師に六芒星の痣をつけてもらう必要がある……だって。僕は多分、こっちだよね。お父さんもお母さんも、魔法使いじゃないもん」
嫌な過去を思い出したのか、オズルは少しだけ顔を歪めました。しかし、フィリーに突然手を舐められ、くすくすと笑いだします。
「ちょっとくすぐったいよ、フィリー。さて、続きを読もうか」
「どちらにしろ、魔法使いになるための儀式が必要なんだって。行うのは満月の夜……次の満月っていつだっけ?」
オズルはまだ、正式な魔法使いではありません。と言うのも、まだ魔法使いになるための儀式をしていないのでした。
フィリーがオズルの問いに答えます。
『満月はあさってだよ』
「そっか。ありがとう、フィリー。
……って、あれ?」
オズルは目を丸くしました。
「フィリー、今、人の言葉を喋った?」
そう。フィリーの言葉が理解できるのです。
今までのように想像するのではありません。フィリーの鳴き声が人の言葉で聞こえてくるのです。
しかし、フィリーはきょとんとしています。
『え?ぼく、いつもどおりだよ?』
「え?じゃあ、なんでフィリーの言葉が分かるんだろう?」
二人は揃って首を傾げました。
『あのねえ。それはね、オズルが自分で気付かないうちに魔法を使ってるからだよ?』
その時、窓から飛び込んできたのは——。




