ひよっこ魔法使い
その日、オズルは自室で魔法を使う練習をしていました。フロウはマディシナ村に出かけています。
『魔法を使う上で大事なのは想像力。どれだけ強く、具体的に想像できるかだ』
フロウの言葉を思い出しながら、オズルは何もない空間から別のところにある物を取り出す魔法の練習をしています。
今オズルは、机の上にあるランプ(勿論これはキンダーヘイルで買ったあのランプです)を空中から取り出す練習をしていました。
オズルはランプを見て、頭の中でそれを思い浮かべ、空中に手を伸ばし、ランプを掴むイメージをします。すると、机の上にあったランプが消え失せ、何もなかった空中から出てきました。
オズルは満面の笑みを浮かべ、それを見ていたフィリーは嬉しそうな鳴き声をあげます。
「ねえフィリー、視界に入っているものは、だいぶ上手く出せるようになってきたよ!次のステップに進んでみようかな?」
「にゃんにゃん!」
オズルにはそのフィリーの鳴き声が、『やってみなよ!』と言ってくれているように感じました。
「よーし!やってみよう。このランプを部屋の外に置いて……」
オズルは部屋の外にランプを置いて、自分は部屋の中に戻りました。視界の中にない物を空中から取り出す練習です。
視界の中にあるものだと、そこまで想像力がなくても空中から物を取り出すことが可能ですが、視界の外にあるものだと、物が見えない分、想像力が求められます。
魔法の練習、というよりかは、想像力を鍛える練習、と言った方がいいのかもしれません。
「よし、いくよ……」
オズルは目を閉じて、ランプをイメージします。そして、空中に手を伸ばします。そしてなにかを掴んで目を開けます。手の中にあるものは、ランプ……ではなく魔法紙です。
フィリーが少し残念そうな顔をしたように見えたのは気のせいでしょうか。
「あちゃー。途中で魔法紙をイメージしちゃったんだよね。もう一回やってみよう!」
オズルは魔法紙を机に置くと、気を取り直して、今度こそちゃんとランプをイメージします。そして、手を伸ばします。ランプを掴むイメージをしながら手を握ると……今度こそはちゃんと、ランプが現れました。
不意に、お腹がぐうと鳴りました。フィリーのお腹も小さな音でくうと鳴った気がします。
「お昼にしようか。今日はフロウが村に行っている日なんだよね。でも今日はどこにご飯を置いているか、聞いてないんだ」
オズルはランプを机の上に置きました。
その時、先程机の上に置いた魔法紙が、誰も触れていないのに広がり、文字が浮かび上がりました。オズルは横にやってきたフィリーと一緒に紙を覗き込みます。
『今日のお昼はサンドイッチ 具は卵とハム
フィリーとルイーザにはいつものスープ
教えた魔法で出して食べな 』
「……さっきよりもさらに難易度が上がったね。目で見ていないものを想像して出さなきゃいけないんだもの。あ、でも二人のスープならいつも見てるからイメージしやすいかも」
オズルはフィリーにそういうと、魔法紙を持って、いつも食事をする部屋に出ました。
そしてルイーザを呼び、まずはランプを出した時と同じように二匹の猫の分のスープを出しました。
スープをいつも通りに机の上に置くと、ルイーザはさっさとスープを食べ始めましたが、フィリーはまだオズルを見ています。
「先に食べてていいよ」
オズルがフィリーにそう言っても、フィリーは食べ始めようとしません。こちらをじっと見つめています。
「フィリー、お腹空いてるでしょ?僕もすぐに食べ始めるから、先に食べてて」
オズルがそう言うと、ようやくフィリーはスープを食べ始めました。
それを見たオズルは微笑んで、目を閉じてイメージを始めます。
(前サンドイッチだった時は、パンの耳は切り落とされていなかった。四等分に切られていて、卵は潰してあったはずだけど……。ハムは丸いままだったかなぁ……?)
そして、手を伸ばします。
皿のようなものが手にあたりました。
目を開けると、そこにはサンドイッチが。
「やった!美味しそうなサンドイッチだなぁ」
オズルのお腹が再び鳴りました。
「僕もお昼ご飯食べよっと」
オズルはそう言って、早速サンドイッチを頬張り始めたのでした。




