決意
「どうだったかい、久し振りの村は」
夕食を作りながら、フロウはオズルに問いかけました。
「久しぶりというか……初めて行った村みたいだった。僕が知っている村はあの家と、窓の外に見える範囲だけの、狭い村だったから。ヘーメルオーストのことも、キンダーヘイルのことも知らなかった」
「そうかい。"見知らぬ故郷"みたいなかんじかねえ。また行くから今度は違うところにも行くか。行けば行くだけ、知らない村じゃなくなってくる」
「うん、そうだね」
そしてオズルは、小さな声で呟いたのでした。
「——見知らぬ故郷、か」
「ねえ、フロウ」
「なんだい」
出来上がった夕食を食べながら、オズルは言いました。
「僕、魔法使いになりたい」
オズルがそう言った途端、家から音という音が全て消え去りました。
横でご飯を食べていたフィリーやルイーザでさえも、食べるのをやめてしまいました。
「……後戻りは出来ないよ」
フロウは真剣な声で言いました。
「うん」
オズルも真剣な声で応えました。
じっとフロウはオズルを見つめました。オズルも真剣な目線で見つめ返して来ます。
永遠のような、一瞬のような、沈黙。
「——いいだろう。オズル、魔法を教えてやろう」
オズルがフロウの家にやってきてから、一年が経った日のことでした。




