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団欒

 ユリアはマラムの水をコップに入れて持ってきました。

『あのねえユリア。またそのコップなの?私がこの姿のままで飲めるように、少しは考えてよね』

「別にいいじゃない?」

『うう……いいわよ』

 マラムはぶつぶつ文句を言いながら宙返りをしました。すると、銀の髪の毛に金の眼の女の人に変わったのです。

『めんどくさいわよ、いちいち水を飲むために変身しなきゃいけないなんて』

 マラムは席について、水を口にしました。

 オズルはその様子を少し面白そうに見ていました。もっとも、フロウにとっては見慣れた光景なのか、つまらなそうな顔をしていましたが。


「あ、そうだ。僕の本名はオズル・アイーネと言います。もとはこの村に住んでいたんですけど、色々あって今はフロウの家に住んでいます。よろしくお願いします」

 ふと気付いたようにオズルが本名を名乗ります。フロウが思いついたように付け足します。

「もしかしたら風の精霊から聞いているかもしれないけどねえ、この子には精霊が見えるんだ。すでに何人かと友の契約を結んでいるらしい」

「名前を聞いてぴんと来たわ。風の精霊から聞いたもの。そう、あなたがオズルなのね」

 ユリアは興味津々と言った感じで言いました。

 その声には何故か、悲しそうな声が混ざっていました。フロウは気付いたようですが、オズルは気付かなかったようです。

「どうしてかしらね。魔法使いと人間の混血だったりするのかしら」

 ユリアがそう言葉を続けますが、オズルは首を振って、

「僕、両親については何も知らなくて」

 とだけ言いました。

 重苦しい空気がその場を支配していました。


「あら、ごめんなさい。クッキー食べる?オズルは、生姜は苦手?」

 ユリアが話題を変えてくれたおかげか、その途端に雰囲気ががらりと変わりました。

「あ、いえ。生姜は体が温まるので好きです」

 オズルは嬉しそうにそういうと、生姜入りクッキーを口にしました。

「あっ!すっごく美味しいです!」

 そう笑顔で言うオズルを見て、ユリアもフロウもマラムも、みんなが笑顔になりました。

 その後は四人で、楽しくお茶会を楽しみました。


「ありがとう、ユリア!とても楽しかったわ」

「こちらこそ、アンネ。フィリップも、また来てね」

「ありがとうございます」

 帰るフロウとオズルを、ユリアは店の表に出て見送っていました。

 フロウとオズルは綺麗な卓上ランプと記憶のペンダントをもって、帰りました。

 そう、結局記憶のペンダントも買うことになったのです。というのも、オズルが欲しいと言ったのです。

「少しずつ、自分の過去と向き合えるようになりたいんだ」

 そう言ったオズルの表情は、決意と恐れが入り混じっていました。


「そろそろあの村に戻ろうか。まだ話し合いが終わってないからね」

「うん。でも僕、早くこの村に住みたいな」

 そう会話する二人は、最後まで親子を演じきりました。そして、フロウの魔法陣で家に帰ったのです。

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