マディシナ村
「オズル、マディシナ村に行くか?」
オズルはある日突然、フロウにそう声をかけられました。
「今日はマディシナ村に行く予定の日だ。もし行くならオズルの姿も一応変えて行くことになるがね。親御さんに見つかったら大変だろ?」
「……たしかに、そうだね」
「村であたしはアンネ・フローラって名乗ってる。設定も一人息子がいる設定だ。オズルはそうだな……フィリップ・フローラとでも名乗ってあたしのことをお母さんとでも呼べば、村の人たちはフィリップをあたしの子供だと思うだろう。ついて来たいならついて来な」
突然のことにぽかんとしていたオズルですが、フロウがオズルを置いて歩き出すと、
「ああ、待って!僕も行く!」
慌ててフロウを追いかけたのでした。
フロウは追いかけて来たオズルの手を握ります。
「離すんじゃないよ。離したらオズルだけ置いてけぼりだ」
それを聞いたオズルはびっくりしてフロウの手を固く握ります。
「痛いってば。少しぐらい力の加減を考えな」
フロウはそう言い放つと、オズルの手を握っていない方の手で魔法陣を描きます。青く光る魔法陣を見つめ、言いました。
「さあ、マディシナ村へ。あの家へ」
そして次の瞬間には、あの家についていたのです。
「わあ、すごい!」
「しいっ!静かにしな」
フロウは騒ぎだしそうだったオズルを黙らせ、オズルに魔法をかけました。すると、緑色だった目や青みがかった髪は黒くなり、白い肌は少しだけ日焼けしたような健康的な小麦色になりました。
「あれ?少し日に焼けてる!」
少しばかり高くなったように感じられる声でそう言ったオズルに、フロウは一言、
「そのぐらいお手の物さ」
といいながら自分に魔法をかけて、自分の姿や声も変えてしまいました。
こうしてみて見ると、二人はどこか似ているように感じられます。
そこにいるのは、最早フロウとオズルではありません。一組の親子でした。
フロウはいつも自分にかける暗示を、心の中で唱えました。そして、オズルに言い聞かせたのです。
「いい?今ここにいるのはオズルじゃなくて、フィリップ。フィリップ・フローラだよ。わかったね?」
「うん。わかった」
「それから、私はアンネ・フローラ。フィリップの母親だよ。わかった?」
「うん」




