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人と精霊

『まずは……オズル、君は"人"と"人間"の違いを知っているかい?』

 風の精霊は、そう問いかけてきました。オズルは戸惑います。

「えっ……?おんなじじゃ、ないの?」

『実は違うんだよ』

 風の精霊はニコリと笑います。

『他の動物に例えたら分かりやすいかなぁ。"人"っていうのは"犬"っていうのと同じで、"人間"っていうのは"ダックスフンド"っていうのと同じなんだ』

 その説明を聞いて、オズルは納得したようにうなづきます。

『つまりね、"人"っていうのは大きなくくりで、その"人"っていうくくりの中に"人間"や"魔法使い"がいるんだ。ここまでは分かった?』

 風の精霊は問いかけます。

「分かったよ!」

 オズルは元気に答えます。


『で、人は精霊と"友の契約"を結ぶことができる。

 "友の契約"って言うのはね、その名の通り、友達になるための契約なんだ。精霊と名前を教えあって友達になることを言うんだよ』

 風の精霊にそう教えられ、オズルは気付きます。

「僕……二人の精霊さんと"友の契約"を結んでいるよ!名前を教えてもらったんだ」

 オズルの言葉に風の精霊は驚きます。

『えっ⁉︎人間なのに?』

「そうだよ。言葉の精霊さんと、記憶の精霊さん」

『あの言葉の精霊と……?』

「うん。それがどうかしたの?」


 言葉の精霊が滅多に人を信用しないのは精霊の中では一般常識だったのですが、それを知らないオズルは言葉の精霊と"友の契約"を結んでいても、なんとも思っていないようでした。


『……まあ、それはともかく。精霊の名前を教えられた人はその精霊のことを呼び出せるようになるんだ。多分それは分かっているよね?』

「うん」

『だけどね、それはある意味その人がその精霊を支配できることになるんだ。もちろん"友の契約"だから精霊とその人は友達であって、対等な立場ではあるんだけどね。だから精霊は簡単にその名を教えたりはしないんだ。特に言葉の精霊は、滅多に人を信用しないんだ。どうしても言葉に操られてしまう精霊だからね」

「そうなんだ……!』

 オズルは驚きました。言葉の精霊と"友の契約"を結んだ時、そんなに疑ってかかられていないからです。


「他には何か、決まりごとはあるの?」

 オズルは再び首を傾げました。

『うーん。まあ当然だけど、精霊の名前は誰にも教えてはいけないよ』

 その言葉に、オズルは頷いてみせました。

 風の精霊は少し考えて、

『あとは……風の精霊を呼び出すときの決まりごとだね。他の精霊は名を呼ぶだけでいいんだけどさ、何せ僕たちはいつも風に乗って旅をしているんだ。だから風の精霊を呼ぶときだけは、名前だけじゃなくて約束の言葉も口にしなければならないとされているわけ』

「そうなの?」

『うん。精霊のことを呼ぶ人は約束の言葉を口にして、それだけ精霊のことを大切に思っている、だからその想いに応え、来て欲しいと願うんだよ。

 約束の言葉はね……

「勿忘草の友よ、友の声に気付いておくれ。

 そして来てくれないか、友の元へ。

 私は貴方を忘れはしない。

 だから貴方も覚えていて」

 っていうんだ。

 また、風の精霊と別れる時も約束の言葉を口にしなければならないとされていてね。約束の言葉を口にして、お互いに相手のことを忘れないことを誓うんだよ。

 そのときの約束の言葉は……

「またいつか会う日まで私のことを覚えていて。

 私も貴方のことを覚えておくから。

 勿忘草の花言葉に誓って」

 だよ。

 その言葉に精霊は応えて、

「私は貴方のことを覚えていよう。

 勿忘草を飾って待っていておくれ。

 その花が私を導いてくれるように」

 って言うんだ』

 オズルはうんうん、とうなづきました。そして、約束の言葉を出来るだけ魔法紙に書き取ろうと頑張っていました。それを見た風の精霊は、紙を指さします。すると、魔法紙に約束の言葉が浮かび上がります。

「ありがとう」

 オズルは微笑んで言い、風の精霊は嬉しそうに宙返りをしてみせました。

 しかし、少ししてオズルは首を傾げました。

「なんで勿忘草なの?」

 風の精霊は再びオズルはが手に持っている魔法紙を指さしました。その指の先にあったのは勿忘草の絵。そばに浮かび上がっていた勿忘草の花言葉は「私を忘れないで」でした。ここだよ、と言うかのように、絵と花言葉は青くほんのりと光っていました。

 それを見たオズルは、はっとします。

 風の精霊を見ると、精霊はうなづきます。

『お互いに相手を忘れないことを誓う約束の言葉に、この花がぴったりだったんだね。だから勿忘草を約束の言葉に使うようになったんだよ。精霊によっては、お互いに勿忘草を髪に飾る約束をする精霊もいるけどね』

 オズルはいつだったか、部屋の窓から庭を眺めていたときに、ルイーザが勿忘草を二輪摘んでいるのを見たのを思い出しました。

(それももしかしたら、風の精霊さんを呼ぶためかもしれない)

 そう考えて納得し、オズルはうなづきました。

『それに、勿忘草には記憶の精霊が住んでいるだろう?』

「うん」

 オズルはついさっき友達になった精霊、メリー・アクトのことを思い浮かべました。

『一説では記憶の精霊に助けを乞うためとも言われているんだ。まあ、決められたのは僕が生まれるずーっと前だから、分からないけどね』

「そうなんだ」


 と、そのときでした。

 風の精霊が耳をそばだてたのは。

『友達が僕を呼んでる。行かなきゃ』

「そっか。今日はありがとう!」

 オズルは、急に元の姿に戻って風に乗っていなくなった風の精霊に、笑顔で手を振ります。

 そして家の中に入ろうと魔法紙を持ち直し、あっ、と声をあげました。

 それもそのはず。そこには可愛らしい字で、

『僕はカール・サリヤ。仲良くしようね。これからよろしくね』

 と書かれていたのです。

 オズルが風の精霊、カール・サリヤと"友の契約"を結んだ瞬間でした。

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