花屋のお手伝い
フロウは一度村の中にある家に戻り、荷物を置きました。そして、服装をスカートから動きやすいズボンに変え、再び外に出ます。
「アンネ!ちょっと手伝ってくれないかしら?お礼は弾むからさ」
そう声をかけてきたのは、向かいにある花屋「ルーリエ」の女主人、サリア・フルーでした。
「急に出かける用事が出来ちゃったんだよ……店番を頼んでもいいかな?」
「ええ。勿論ですよ、サリアさん」
「ありがとね。アンネは花の知識が豊富だから……ああもう行かなくっちゃ。お願いね!」
「お気を付けて!」
サリアは慌てて花屋を出て行きます。フロウはそれを笑顔で見送りました。
(——あたしが"アンネ"である時、あたしは全くの別人になっているだろうねえ)
フロウは溜息をつきました。
(多分あたしは——)
「おう、今はアンネが店番してるのかい?」
フロウの思考はそんな声で遮られました。
「あら、いらっしゃいませ」
フロウはすぐに笑顔になって言いました。
やって来たのは、無駄話が長いことで有名なおじさんでした。
「今日は妻の誕生日でねえ。うちの妻ほど美人で気がきく奴はいないだろうな。——いやアンネも気がきく美人さんだけどね」
「あら、ありがとうございます。でも奥様、素敵な方ですよね」
「そうだろう?だから妻にふさわしい花を贈りたいんだが……何か良いのはあるかね?」
「それなら……これはどうでしょう?」
フロウは店内をざっと見回し、今日の誕生花であるコデマリを見せました。
「これは今日の誕生花、コデマリという花です。花言葉は『優雅』『上品』ですので、奥様にぴったりですよ。切り花や挿し花にするのがオススメです」
「ほう」
彼はコデマリを見つめ、
「——白くて上品で綺麗な花だ。花言葉も妻にぴったりだな。よし、これにしよう!綺麗なのを頼むよ」
「かしこまりました」
フロウはそういうなり店の奥に行き、こっそり魔法で綺麗な瓶を取り出しました。そして吸水スポンジ(緑色をした、花を挿しておくあれです)を詰め、水を入れてコデマリを綺麗に挿していきます。勿忘草も少し挿して彩りを足します。そしてそれを綺麗にラッピングします。
「どうぞ。勿忘草もつけておきました。こちらも今日の誕生花で『真実の愛』なんて花言葉があるらしいですよ」
「おう、気がきくなあ。ありがとね。いくらだい?」
「百三十ルーです」
フロウはちゃっかりと勿忘草の分の値段も取っています。だって「勿忘草もつけておきました」とちゃんと言いましたからね。「勿忘草はサービスで付けておきました」とは言っていません。
しかし彼はてっきり勿忘草はサービスだと思ったようでした。
「……少し高くないかい?」
「勿忘草の分も取ってますから。それに最近、花の値段が高騰しておりまして。これでもまだ安いほうなんです」
フロウの言う通りでした。実は最近、花の値段は高騰しており、実は、本来ならばこれで百五十ルー取らなければ元が取れないのです。しかしルーリエではまとめてたくさん仕入れることによって、なんとか値段を安くしているのです。
「そうか。ならこの値段が妥当なんだね。——はい、百三十ルーだ」
「はい、たしかに受け取りました。どうぞ」
フロウは笑顔でそれを渡します。
彼は嬉しそうに受け取り「ありがとな」と言っていなくなりました。
その後もちらほらとお客様がやって来て、花を買っていきました。
そしてそのうちサリアが帰ってきました。
「ありがとうアンネ!ほらこれ、お礼だよ」
その茶封筒の中にはなんと、千ルーが入っていました。今日の売り上げよりも多い金額です。
「こんなにたくさん⁉︎……いいの?」
「もちろんよ。とてもお世話になったもの」
「ありがとう!」




