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-Prologue-
私が毎朝乗っている電車に、毎朝ヒーローが乗ってくる。
そのヒーローは私が乗る駅の二つ先の駅から乗ってくる。
そして私と同じ車両に乗る。
だけど、私とヒーローの距離は近くはない。
私が乗るドアの一つ隣のドアから乗ってくるから。
だから、遠くもない。
私はそのヒーローにかれこれもう一年くらい片想いをしている。
高校に入学してすぐ、毎朝同じ電車に乗ってくる彼の姿が
気になるようになった。
いつも同じ電車、同じ車両、同じドアから乗ってくる人。
そして私はいつも少し離れた所から見つめていた。
私が彼の事を“ヒーロー”と呼び始めたのは、
同じ電車に乗るようになって半年くらい経った頃、
私と同じ駅で降りるヒーローと
たまたま帰りも一緒になってホームで電車を待っていた時。
ホームにいた小さな男の子が母親がちょっと目を離した隙に
線路に落ちてしまった事があった。
そして彼は、駅員が駆けつけるよりも早く、
線路に下りて男の子を抱きかかえ、ホームに上がってきた。
私はそれ以来、彼の事を“ヒーロー”と呼んでいる。
名前も学年もどこの学校かさえわからない“ヒーロー”・・・。




