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大切な物に順番をつけたなら  作者: 天カスおうどんさん
1/6

1話-あたりまえの日常-

1,2話は明るい日常的なお話で伏線を張っていくだけですが、3話からあらすじの通り暗くなっていきます。早い安いうまいをモットーに書いていくのでよろしくお願いします


生きる事は殺すことだ…。

人は他の生き物の命を奪い、それを食し生きてきた。

この行為を咎める人はいないだろう、皆『生きる為には必要なこと』そう思っているからだ。

『生きるために必要』この理由で他の生物の命を奪うということは当たり前になった………


----------ーーーーーーーーーーーーーー


「歩〜起きてよー、もうとっくに授業終わってるよー帰ろうよー」

 机で寝ていると、頭上から俺を呼ぶとても愛らしい声がして意識が覚醒する。

 たまに話しかけてくれる隣の席の佐藤くんが声変わりしてこの声になった、という事でなければ俺に話しかけているのは唯一の友 西園寺 優宇だろう

起きてやっても良かったが、このまま俺が寝ていたら優宇はどんな反応をするのか気になり俺は狸寝入りをすることにした。

「歩、起きないならその寝顔Twitterに晒して有名にしちゃうからね、あ、ちゃんと顔にモザイクはかけて有名にするから安心してね」

 顔面モザイクで有名とかそれは嫌だな…そのまま転載されて怪しい広告写真に使われてしまいそうだ。

「い…1番、西園寺 優宇撮ります!……やった!うまく撮れたよ」

 パシャというカメラのシャッター音は聞こえなかった、どうやら無音カメラを使ったようだ。

「何故だ、何故無音カメラで撮ったんだよ優宇…俺は撮られる時はパシャという音と共にって決めてるんだよ…」

俺は体を起こし優宇にそう訴えた。

だって余りにも悲しいじゃないか、シャッター音なしで撮られるなんて…。そんなの持ち手しかない傘の様なものだ。

優宇は「え、あの、わ」と言いながら慌てていた。俺が突然泣きながら立ち上がった事でけっこう驚かせてしまったらしい。

「まぁ落ち着けよ優宇、今のは冗談だって」

俺は笑顔でそう言い優宇をなだめる。とりあえず今は落ち着いてもらって今度ゆっくりカメラのシャッター音の大切さについて語ってやろう。

「なんだぁ冗談か、『本当に俺じゃないんです』って叫びながら冤罪で牢獄に入れられる人みたいな顔してたから焦っちゃったよー」

 やけに具体的だな…にしても俺そんな悲壮的な顔を作り出せたのか、子役になろうかな。いや歳的にもう『子』でもないか、青役か?

「ま、俺も起きた事だし帰るか、片付けてすぐ行くから先に下駄箱んとこで待っててくれ」

「わかったー、じゃあ寒くないように歩の靴温めながら待ってるね!」

そう言うとダッシュで優宇は教室を出て下駄箱へと向かって行った。

「温めるって…いま夏なんすけど…」

やれやれとため息をつきながら俺は帰り支度を始め、机に手を入れてみたが中は空っぽだった。

「あー、そういや今日授業受けた記憶ないな…」

俺は横にかけてある鞄を取り下駄箱へ向かった――

 

×××


「ねぇあそこ、燃えてない?」

 帰り道の途中、向こうの道路を歩いてるカップルを指差しながら優宇は言った。

「ああ、もえてるな、見た感じ今が1番もえている時期だろう、俺はどうすればいい?奴らの愛を鎮火させてくればいいのか?」

「ん?歩は何を言ってるの?あそこの家が火事じゃない?って言ってるの」

 なんだそっちか

「では俺はあの家の火を鎮火させてくればいいんだな?」

「いやいやそういう訳ではないんだけどさ、気になるしちょっと見に行かない?ってこと」

「え、めちゃくちゃ嫌なんだけど気にならないし、帰ろうぜ」と言いたいところだが、この優宇という男『私、気になります!』精神が異常に強い、たとえ俺が断ったとしても「え?聞こえなかった、もう一度言って?」と急に難聴になり俺が行くと言うまでココを動かないだろう。

優宇が気になったらもうそれに付き合ってやるという選択肢しかこの世界にはないのだ。

「いいけど見たらすぐ帰るからなぁ」

 ありがとう!と優宇は可愛らしい笑顔を浮かべながら言った。まぁこの笑顔のためなら火事現場まで行くのもそう悪いものでもないだろう。


×××


「何故お前達がここにいる、お前達の家はたしかこっちの方向ではないはずだろう」

 目的の場所に着くと、むっとした様子でこちらを見る我がクラスの委員長様がいた。

肩のところで綺麗に切り揃えられた黒髪、品のある顔立ち、とても美人ではあるのだがとてもお堅い人でいかんせん俺たち無脊椎男子には合わない。

「いやあ、これはこれは委員長様、委員長様のような方がこのようなホットな場所にいるなんてこちらは驚きでございます候」

「…私は帰り道にここを通るからいるだけだ、あと二階堂、火事なんだぞ、そういうふざけた発言は慎め」

 委員長はめんどくさいといった顔で俺の方を睨んできた。

「さ、桜井さん、この家なんで燃えているか知ってる?僕達はその原因が知りたくて来たんだよ」

 俺と委員長の間の険悪な空気を察したのか優宇が委員長に話しかけた。

委員長は「まぁいいか」と言い俺を睨む事をやめ、ボソッと小さな声で質問に答えた。

「悪魔が、やったらしい…」

悪魔?随分とメルヘンな物が委員長様の口から出てきたな。この人実はサンタさんとかを未だに信じてるタイプの人なのだろうか。

「やっぱりそうなんだ!ビンゴ!」

 隣で優宇が嬉しそうにそう口にすると、委員長にギロリと睨まれ「ごめん…」と謝り静かな声で質問を続けた。

「その悪魔、見た人はいるの?」

「あぁ、その悪魔がこの家を燃やす様をそこで倒れこんでいるおばさんがみたらしい、だが今は悪魔悪魔と繰り返すだけで聴いても意味はないと思うぞ。」

 桜井の指差した方には警官に囲まれている女の人の姿があった。

「聴こうにも何も、あんなに警官が居たんじゃあ何もできないな、優宇とりあえず今日はもう帰ろう。」

そう言い俺はグイグイと優宇の背中を押すが優宇は仏像の様にまったく動かなかった。

「でもここにいたらもしかしたら悪魔に会えるかもしれないじゃないか、犯人は犯行現場に戻ってくるって言うしさ」

優宇はキラキラした瞳でズイズイと俺に顔を近づけてくる。

 クソぅ…優宇の気になります精神が作動しすぎだ。俺はこれ以上近づかれたら理性が崩壊しそうだったので少し優宇から離れた。

「あのな優宇、そんな危ないのに会ってどうするんだよ、俺たち死ぬぞ?というか俺は優宇をおとりにして逃げるから優宇だけ死ぬぞ?天国1人ぼっちは寂しいだろ?だから帰ろう。」

「えぇー…でも天国見てみたいしそれはそれで悪くないような。」

 こいつめ、まだ引き下がらないのか。まぁこうなったら仕方ない使いたくはなかったが奥の手だ…。嘘は嫌いだが、許せ…優宇…。

「おい見ろよ優宇!巨乳の姉ちゃんがいるぜ!!」

俺は左の人だかりが出来てる方向を指し大声でそう叫んだ。無論そんな巨乳の人などいない、嘘八百だ。

「え、きょ、え!巨乳!!巨乳!?」

 優宇の目の色が変わり、明らかに獲物を狙う目になっている。

優宇は可愛らしい女の子の様な顔をしているが生粋の巨乳好きだ。脳は巨乳で出来ている。

「歩!巨乳の人はどこだい!?早く僕に見せてよ!」

優宇の呼吸は荒々しくなり不敵な笑みを浮かべていた。その乳がどんな美しい曲線を描いているのか、垂れ気味なのかそれともピンッと張っているのか。まだ見ぬ巨乳を想像し相当興奮しているのだろう。

 さっきまで気になります状態だった優宇をここまで変える巨乳、こいつの方がよっぽど悪魔な気がするな。貧乳専の俺にはあまりわからないが。

「優宇!巨乳のヤツ俺たちの存在に気づいて逃げやがったぜ、早く追いかけるぞ!」

「ああ!行こう!巨乳が待ってる!」

 こうして俺たちは燃えている家の前で巨乳巨乳と叫びながら居もしない巨乳の人を追いかけ、その場を後にした――


×××


「ただいまー」

家に着くとダボダボのTシャツ一枚とパンツというあられもない姿でソファに寝転び漫画を読んでいる歌音の姿があった。

「あ、お兄ちゃんおかえり〜、遅かったね何処か行ってたの?」

歌音は漫画をパタンと閉じ、視線を俺に移した。

「まあな、今俺の高校の帰り道で流行ってるホットな場所に行ってきたんだよマイシスター」

「へーそれは良かったねえ、今度私も連れてってよ!」

歌音はツインテールをゆさゆさと揺らしながらそう返答した。揺れ具合を見るにけっこー興味あるみたいだ。

「いいぞ、まあ今度行ってももう…何もないんだけどな…。」

「なんでそんな意味深風に言うのさ…まあ良いとして、お母さんとお父さんにもちゃんと『ただいま』言うんだよ」

「あぁ、任せろ『ただいま』は俺の十八番だ」

 言いながら俺は父さんと母さんの写真の前にある鈴を鳴らした。

 チーンと悲しげな音が部屋に響く…。

「ただいま、父さん、母さん…今日も学校楽しかったよ」

 俺の父さんと母さんは俺が9、妹の歌音が5歳の時に事故で亡くなった――

 だが俺は別に両親を恨んだりはしていない、学校生活を問題なく過ごせるお金も遺してくれていたし、家族愛と言うのも充分過ぎるくらい貰ったはずだ。それに俺には歌音がいる、だから俺は1人じゃない。家族がちゃんと居てくれる、当たり前の事だけれど、この上なく嬉しいことだ。

「んじゃ、『ただいま』も済んだことだしご飯食べよ〜、ちょうどさっき作り終わったんだ〜」

そう言って歌音はソファから離れテーブルの方へと向かった。

「やったぜ、走って腹減ってんだよなあ、もう出来てるなんて感謝感謝ですマイシスター」

 写真から離れ俺も席に着くと、テーブルの上にペヤソグが湯切りした状態で置いてあった。

うん、まぁ知ってた。歌音インスタント食品大好きだからね、俺が作ってやらないと朝昼晩おやつタイムすべてインスタントだもん。

「いや歌音、お前がインスタント食品好きなのはわかるけどさ、晩御飯ぐらいせめてなんかまともなの食おうぜ?」

「お兄ちゃんは何を言ってるの?インスタントも立派なご飯なんですけど、美味しいじゃんこれ」

 まあそう言われてしまうと反論が出来ない、なにせインスタントが悪いみたいなイメージで語っているだけだからな。

「だがお兄ちゃん、お腹空いてるから出来れば白米食べたかったなぁ、とか思ったり」

「あぁ、ちゃんと炊いといたからペヤソグのふりかけかけて食べなよ」

そう言って歌音は席を立ち、戸棚から大量にストックしてある『ペヤソグふりかけ』の一つを取ってきて俺に手渡した。

 ……今度からまっすぐ帰ろう、俺はそう心に決めた――

『では、次のニュースです。本日午後未明、一家全員が惨殺されるという事件がありました』

夕食を終え、歌音とソファに座りテレビを見ていると、見知ったニュースが流れてきた。

『本日午後未明に神奈川県の住宅で一家全員が惨殺された状態で見つかったとの事です。金品は盗まれておらず、家が半壊しているという状況から警察は愉快犯、もしくはテロによるものとして捜査を進めています。』

 どうやら内容的にさっきの火事の事を報道してる訳では無いようだ。

「うわ〜、ここってけっこー家にちかいじゃん。用心にドアのチェーンかけておくかな」

そう言うと歌音は立ち上がり玄関の扉にチェーンをかけにいった。

 歌音の言う通りこの事件の場所は近い、俺の自転車スキルを駆使すれば20分あればつくだろう。火事の起こった場所に関してはもっと近い、5分もあれば余裕で着く距離だ。

「よし!危ない人が来ない様に塩撒いてくるか、歌音よ塩をくれ」

チェーンをかけ終え、戻ってきた歌音にそう言うと、はてなと首をかしげた。

「いやお兄ちゃん、それは幽霊とかの除霊の時にやるやつだから、生きてる人には効果が無いよ」

 まったくもーと言いながら歌音は楽しそうに笑っていた。

 こんなニュースを聞いてから寝るというのは気分のいいものでも無いだろう。歌音が笑ってくれたなら良かった。

 まぁ実のところ本気で悪人避けに使えるかと思って撒こうとしただけなんだがな――

登場人物紹介のために話の進みがゆっくりになりましたが書くべき事は書けたので良かったと思います。

読んでくださった方ありがとうございます。次話も読んでいただけると嬉しいです

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