03 その猫、お持ち帰り
猫好きな俺は、その猫を放っておけなくて、家に連れて帰ることにした。その猫を抱き上げると、抵抗もなくすんなりと俺の腕の中に納まった。よくよく見ると、野良猫だろうか、耳は少し欠けていて痩せていた。しかし、人に馴れている…。
「…。お前、野良か??」
猫が返事をするはずないのに、俺はその猫に聞いていた。
「にゃ~」
「…。返事したのか??」
「にゃ~」
「…えっ…返事なのか?……それとも、鳴いただけ…??」
「……うにゃ~」
「……。とりあえず、俺の家においで??」
「うにゃっ」
「……。」
返事をしてくれたとしても、俺には猫の言葉がわかるはずもなく、意味がない…。が、この猫が可愛いということはわかった。
俺はアパートで独り暮らしをしているため、他の人にばれなきゃ、とりあえずは・・・いいよな・・・。
家に着き、俺も猫も濡れていたからタオルで拭く。…が……寒い……。シャワーでも浴びるか…。どうせなら、この猫も洗うか…??
「…お前も風呂に入るか?」
俺はまた、猫に聞いていた…。
「うにゃっ」
「…よしっ。入るか。」
「うにゃっ」
もし、嫌だったら暴れるよな…?そうなったら、風呂から出せばいいもんな…?
そう考えた俺は、猫も一緒に風呂に入れて洗うことにした。
猫にお湯をかけ、お湯を張った洗面台に入れると・・・
「うにゃ~~ん♪」
暴れる事はなく、気持ち良さそうに鳴いた。猫にしては珍しいよな…。ほとんどの猫は水が苦手なはず…。やっぱり、この猫は家猫か…?…家猫だったら、飼い主に悪いよな…。明日、この猫をいた場所に戻そう…。そう思いながら、猫を洗い、喉をなでると、ゴロゴロ♪と気持ち良さそうに鳴いていた。
猫を綺麗してから、俺も素早くシャワーを浴びた。部屋に戻ると、猫はベッドの上ですぴすぴと寝ていた。
「……。可愛いなぁ。……って、俺の寝るスペースがない……。」
「…すぴ~…すぴ~…」
猫は起きそうにもない…。まだ、晩飯を食べていなかったことを思い出し、冷蔵庫を開け、適当に野菜と肉を炒め、味噌汁も作り、食べる。俺が晩飯を食べていると、猫が起きてきて俺の周りをうろうろし始めた。
「…。お前もなんか食べたいのか?」
「うにゃっ」
「…。少し待ってろよ~」
俺は冷蔵庫の中にササミがあったことを思い出し、少しササミを茹でてあげることにした。
「ほれっ。ササミと水だぞ~」
「うにゃ~~ん♪」
嬉しそうに鳴いた後、猫は食べ始めた。俺も中断していた晩飯を食べ始める。
「うまいか?」
「うにゃっ」
猫は食べ終わると俺の膝の上に乗り、また寝始めた。
「…すぴ~…すぴ~…」
・・・動けない…。俺は気持ち良さそうに寝ている猫を退かしたい。が、寝ている姿が可愛すぎて起こせない・・・。
とりあえず、動けない俺は、テーブルの上を片付け、文化祭の仕事をすることにした。
文化祭の資料をパソコンでタイピングする。
「…にゃう…?」
「おっ…。起きたか?」
「…にゃう~~…?…すぴ~…」
起きたと思ったらまた寝た…。今のは寝言か…??可愛いすぎんだろっ。
結局、起こすことが出来ず、約1時間この状態だった。
「……にゃ~…」
「今度こそ起きたか?」
「うにゃっ。…にゃうっ。」
起きた猫は、俺がタイピングしているパソコンに猫パンチを繰り出す。勿論、猫が文章を打てるはずもなく・・・意味不明な文字の羅列が出来上がっていく。
「!!??おまっ!!?!」
俺はある程度進めると保存する癖があったから、なんとか平気だった…。
猫がパソコンに夢中になっている間に、食器類を片付けることにした。
俺が食器を持って歩きだすと、猫が俺の足元にすり寄ってきた。俺が移動すると一緒についてくる。その姿が可愛くて、俺はついついにやけてしまう。
「はぁ。お前は明日、家に帰るんだぞ??」
「……うにゃ…」
なんだか、元気のない声で返事をされた。
「……。お前にはご主人様が居るんだろ?」
「うにゃ~~……」
猫は元気のない声で返事?をしながら、俺にすり寄ってくる。それはまるで“ご主人様はいないよ……”と言っているかのようだった。
それから、食器を片付けた俺は寝ることにした。
「ほら、寝るぞ?」
俺がベッドに入りそう言うと…
「うにゃ~~ん♪」
猫は嬉しそうな声で鳴いた後、俺のベッドに入り、俺の横で丸まって寝始めた。
可愛いその姿に俺は微笑み、猫を少し撫でてやる。
「…。おやすみ。」
猫にそう言って、俺も夢の世界へと行くことにした。
昨日の今日で投稿しました!
今回の話の中で、優希と猫の会話のようなシーンがありますが、、、私自身が好きなシーンでもあります。皆さまにとっても好きなシーンになると嬉しいです。
優希はこの猫をもといた場所にかえすのでしょうか?
まだまだ未熟で文章力のない佐藤ですが、お付き合いください。
それでは、また。
佐藤 鈴(=^・・^=)みゃー