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ふじぱん短編集

選択紙

作者: ふじぱん

携帯電話。


一昔前までは、持っているだけで珍しがられた。


しかし、今は持っていない方が珍しがられる。


例を挙げよう。


会社勤めの際、携帯持ってません。 又は、料金滞納して通話が出来なくなってます。


などと言ってしまうと、

やれ契約して来い。


やれ料金払え(こりゃ当然か(笑))。


と言われ、当然ながら評価は携帯が使える状態になっていないというだけで下落する。


携帯を所持していない、というだけで社会人としてのマナーが無い。


そう、落胤される時代になっている。


だからこそ、彼のような男がこれから語るお話のような事になる。


あんまり長々と前置きを書くと、戻る操作をされて読まずに去られてしまう可能性があるのでこの辺にしておいて…………………え、遅い?





まあ、物語を始めよう。


彼の名前は……。


そう、仮に緒方君としよう。


彼が中小企業に就職し、少し経過してからの物語である。


「緒方くん、君さ……、 携帯どうしたの?」



緒方の上司、神谷が聞いてきた。


「すみません、今月苦しくて……」



「だから停まってるんだ……。 早く料金払って復旧しなよ」



緒方はムッとしたが、表に出さず


「はい、そうします」



と告げて仕事に戻って行った。


何故、緒方が携帯代を払っていないか……。


それには訳があった。


先月、父が入院した。


父は保険に入っておらず、医療費の負担が家族にのしかかってしまった。


仕方ないので削れる所から削って行こうという話になり、いの一番に上げられたのが、携帯代だったというわけだ。



その事情を話した所で、それは自分の都合という事で切り捨てられるのが現代の風潮。


携帯電話普及の弊害とでも言っておこうか。



やがてこの会話が後に緒方にとってマイナスになろうとは、この時は気付かなかった。




「緒方くん、ちょっと」



神谷に呼ばれた緒方は、神谷の席まで行った。



「はい、なんでしょう?」



「来週の出張な……、 木村くんに変わってもらうから」



「え?」



緒方は耳を疑った。



「連絡繋がらないんだと何かと不便だしな」



「……そうですか」



始めは些細な事であった。


やがて徐々に緒方は重要な仕事から外されていったのである。



夜……。


緒方は馴染みのバーにいた。


「おかわり……」



「緒方さん、荒れてますね」



バーテンは7杯目のマティーニを緒方の前に置いた。



「お兄ちゃん、荒れてますねぃ」



緒方にいきなり声をかけて来た男がいた。



趣味の悪い赤い薔薇の柄のアロハを着た、妙に若い男。



あまり関わりたくない怪しげな男であった。



「おや、唐九汰屋さんじゃないですか。 お久しぶりです」


バーテンは怪しげな男に向かって挨拶をしていた。


どうやらこいつも常連らしい。



「ガラクタ屋?」



緒方は聞こえたまま反芻した。


「ガラクタちゃう。 カラクタでっせ」



唐九汰屋は過剰に反応してきた。



「ボクは、唐九汰屋のオーナー兼、営業兼、仕入兼、事務兼売り子でっせ」



ようは全てじゃないかと思いつつも何か言ってしまったら関わってしまうことに成り兼ねないので、何も言わなかった。



とてもではないが変人に構っているほど余裕は今の緒方にはない。



「緒方さん」



「!」



唐九汰屋は緒方の名前を呼んだ。


何故俺の名前を知っている?


そう思い、唐九汰屋をまじまじと見つめた。



「さっきバーテンさんに呼ばれてたでしょ?」



どうでもいい疑問に聞いても無いのに答えてきた。



「何か?」



「相当な深酒になってますよ。 こういう場合得てして何かあったからこうなってる訳ですな。 ボクで宜しければお話聞いちゃいますよって」



「いえ…… 特に何も?」



関わりたくない。


緒方の感情はその一本だった。



「うぅむ……。 緒方さん……。 一人で溜め込むより話してしまった方がすっきりする。 どっかの誰かが言っていた有名な格言ですな」



それに……と唐九汰屋は付け加える。



「実際問題、緒方さんを見る限り身内や知り合いには話しにくい内容で悩んでいるようです。 ボクなぞ、今日たまたまこの場で知遇を得た赤の他人……。 今日はここで親しげに対話しておりますが、夜が開けたら他人。 緒方さんの悩みを吐き出すには恰好の物件だと思いますが?」



「………………」



一理あるな……。


と緒方は思っていた。


だが緒方の抱える悩みは他人に取って取るに足らない悩みである。


身内や知人に話せないのに赤の他人に話せる内容ではない。


緒方はそう結論付け曖昧に微笑んだ。


「身内や知人に話せないのに赤の他人に話せる内容ではない。 といった所ですかね?」



こいつ、心の中を読めるのか?


若干疑心暗鬼に陥っていた。


「いや、ボクの経験上の話ですよって……。 読心術を心得ているわけではないです」



「経験上?」



「はい……。 ボクの運営する唐九汰屋はある意味ではなんでも屋でございますから」



「なんでも?」



「探偵紛いな事から、悩み相談などなど……。 そっち方面ばかりですが、そっち方面をやっているからこそ守秘義務を生業としております。 ようは口が堅いって事ですしね」



「………一時期な」



「はい?」



「一時期、やむを得ない理由で携帯電話の料金を滞納したんだよ……」



「ほう」



「そこからかな……。 俺の人生の歯車が狂い始めたのは……」



「………………」



「個人的には些細な事のつもりだったんだがな……。 会社はそんな俺を信用の置けない者としての落胤を押しやがった……。 順風満円とは言えないが、それが起こる前はそこそこの仕事を任されていたんだがな……。 今では俗に言う窓際族の扱いというかな……。 与えられる仕事は新人でも出来る雑用もどき……。 仕事人間としてのプライドはズダズダだよ」



緒方は自虐的に笑った。


「お辛いですね」



「笑いたければ笑っていいよ。 人からしたら些細な悩みだからね」



「いえ……、とんでもありません。 選択時は何気ないつもりで選んだ選択が後に響く。 長い人生に置いてよくある事です。 よく話して下さいました」



「え?」



「緒方さん……。 あなたの勇気に経緯を評し、これを差し上げます」



唐九汰屋は小さな箱を緒方に差し出した。



「ん? これは……」



「家に帰って一人の時に開けてみて下さい。 きっと緒方さんに取ってラッキーアイテムになる物が入っております」



「ラッキーアイテム……ね」



やがて緒方の意識が朦朧となる。


マティーニ7杯も飲めば当然といえば当然か。



やがて、意識が回復したのは自宅の布団の上だった。



頭がガンガンする。動くのが怠い。


典型的な二日酔いだった。


今日は日曜日なため、会社はない。


無いから深酒していたのだけど……。


昨日の服のまま寝ていたということは風呂に入っていないということだ。



せめてシャワーでもと思い、服を脱ごうとした。


ふと違和感に気付く。


ポケットに何か入っていた。



緒方はそれを取り出した。



「これは確か……」



唐九汰屋とやらから貰ったラッキーアイテムとやら。



小さな手の平サイズの正方形型の箱。


とても軽く、箱の中身は空ではないかと思えるくらいだった。


振っても何の音もしない。


とてつもなく胡散臭い代物といえる。



緒方はなんとなく箱を開封してみた。



中には使い方と書かれている説明書と3枚の単語帳サイズの紙切れが入っていた。



緒方は摘んでその紙切れをまじまじと見る。


ただの画用紙にしか見えない。


説明書を手に取り、軽く読んでみた。



「説明書


この度は、選択紙をご購入戴きましてありがとうございます。」



いや、買ってないから。


と心の中で突っ込みを入れたがなんだか虚しくなったので、続きを読んだ。



「ご購入頂いているということは用途を知っているということで宜しいと思われますので説明を省かせて頂きます……」



いや、知らないから……。



「等と書いていたら工場長から怒りの鉄拳を喰らいましたので渋々説明させていただきます……」


職場内暴力の告発ですか?



「まあ、簡単に言いますと……名前のとおり選択紙です。ネーミングセンスないよね、うちの会社。」


選択紙?


選択肢の誤植か?


というか何いきなり馴れ馴れしくなってんの?


こんな説明書初めて見たよ……。



「まあ、当社ご自慢の選択紙……。今なら桐タンスをお付けして……な、なんと驚きの……あっ、もう購入してるんでしたね。ここのシーンはカットの方向で」



カットされていませんよ。

どこのテレフォンショッピングですか?


というか、桐タンスの方がおまけってどうよ?



「では用途説明に入ります。」


やっと本題か……。



「人生には数え切れない程の選択分岐点がございますよね? その選択肢を選び、皆様の意図していない不幸が発生しますと選択を間違えた事に対し、不平不満を垂れるのが人間の悲しい性です。 ですがやり直しが効かないのが人生。 大半の方は現状を呪いながらも懸命に模索しながら生きていく。 それが普通です」



で?



「しかぁし!!貴殿はこの選択紙を手に入れました。 」



貴殿!?


あなたいつの時代の方ですか?


「この選択紙……、自分が選び直したい選択分岐点を記入するだけで、新たな選択肢を選び直す事が出来る画期的な商品でございます。 え? そんな上手い話があるかって? ふっふふ〜ん」



ふっふふ〜ん?


何この着いていけない三流お笑いタレントが醸し出しているような自己満足的ノリ……。


選択紙とやらよりこの説明書を書いてる奴に突っ込みいれるべき?


「まあ、騙されたと思って書いてみたら? どうせ手元にあるんでしょ? いっとくけどうちはクーリング・オフなんざきかないからね。 それとさぁ、いちいちくだらない事で客センにかけてくんなよ? どうしてもかけたい方はこちらにどーぞ。177番」


……………なんかこの番号見覚えあるんだけど……。


天気予報か!!



「優しいお姉さんが一方的に話しかけてくれるから寂しくないでしょ? はい、説明終わり! さて、今夜は焼鳥でも食べるか……。 ん? まだなんか用? 生憎とボクは君に用はないよ。 しっしっしっ」



え〜と……。


とりあえず、なんというか……。


こんな破滅的な説明書初めて読んだよ。



……………………。



「つまり、この紙切れに選択し直したい分岐を書けばやり直せる……、ということ?」


つい、口に出した。


選択紙の効果を信じた訳ではない。


でも、なんとなくさらさらっと書いてみた。


不思議と試してみたくなる効果がこれにはあった。


何も起きないのは当然だし、そんな夢のようなアイテムがあるんなら、俺なら人に譲渡したり、売ったりはしない。


書き終わって数分……、何も起こらず自虐的に俺は笑った。





頭がガンガンと響く。


そうだった……。


俺は二日酔いだった。


このまま起きていても気分悪いだけだし、布団の中にでも入ってゴロゴロしておくか……。


そう思い立ち、再び布団に入る。


布団に入った瞬間……、なんとなく眠気が襲ってきたので眠気に任せて惰眠を貪ろうとした。



ピリリリリ、ピリリリリ……。


いきなり携帯が鳴り出す。


通知は母親と書かれている。



「はい?」



携帯を不機嫌そうに取ると母親が緊迫した声で以下の事を告げた。



「お父さんが事故にあって入院した……」



「また?」



「また?」



「一昨年も事故って入院したじゃん……」



「は? 何言ってるのよ、こんな時に!」



何故か怒られた……。



「鈴木総合病院だからね!」


そういって母親は電話を乱暴に切る。



鈴木総合病院って……、去年かなんかに執刀ミスが発覚してなんだかんだで閉鎖したじゃん……とか思っていると何か違和感に気付く。



今、手に持っている携帯だ。



「vod○fone」



……………。


一昨年、確かに俺はvod○foneを使っていた。



で、ナンバーポータビリィとかなんとかで番号そのままで他社に乗り換える事ができるとかいうシステムを使って△uに乗り換えたはずだった。


「あれ?」



携帯を再び確認する。


電波は三本立っており、通話いつでもできますよといわんばかりの状態になっている。


日付をみると、親父が倒れた日付になっていた。

「んな馬鹿な……」



たまたま枕元に置いていた週刊の漫画雑誌を手に取る。


今では、すっかり書く気を失せて長期休載を継続している某漫画家の漫画が連載されていた。



しかも走り書きというか、これ……。


ぶっちゃげプロット段階の絵。



よくこんなの載せたな……と作者より出版社に対して呆れた奴だった。



まさかな……。


と思いつつもテレビの電源を付けてみた。



確かに2年前に離婚したはずの芸能人の離婚会見が行われていた。



「………………本物だったか!」



机の上に単語帳サイズの紙切れが2枚乗っている。


書いた1枚はどこにいったのか、探しても見つからなかった。


「落ち着け……、落ち着けよ……」



興奮する自分の姿にふと苦笑する。



俺は病院に向かう前に携帯ショップに足を運んだ。



そして支払いを済ませ、病院に向かった。



「あんた、何してたの!」



遅い俺の到着に、母親は切れていた。



「あんた、父さんの事、心配じゃないの!?」



「いや、どうせ助かるし」



「なんでそんな事言い切れるのよ!」



忘れていた……。


ここは俺の知る過去であり、俺がもたらす情報に信憑性もクソもないんだった。



あの時も母親は取り乱しており、宥めるのが大変だったっけ……。



まあ、無事と解れば元に戻ったし、放置でいいだろう……。



ピロリン〜♪


メールの着信音……。


やばい……。


病院だった、ここ。



電源切るの忘れていた。


俺はメールを読む。



当時、付き合っていた彼女からだった。


当時?


今は現在か……。


なんか変な感じだ。



「緒方くん、今会える?」



それだけのメール……。


俺は返信した。


「いいよ、どこで会う?」



久しぶりに付き合っている状態の元カノに会える。



そう胸を弾ませ、何も考えずに返信した。



ところでこの娘とはなんで別れたんだったか……。


思い出して見た。



冷静に、記憶を辿る。



出た結論……。



このメールのシカトだったな。


当時は父親が生死をさ迷っていて、彼女どころではなかった。


やがて親父の入院費でお金が無く、この娘の誘いを断っていたら、気付けば破局したんだっけか……。



ここでも何気に分岐があったじゃないか……。



俺は元カノと別れずに済むかもしれない。



「ちょっと呼ばれた……。 ……出て来る」



そう告げると、母親はア然とした。



「な、何言ってるの……あんた?」



父親は生死の境をさ迷うが、死にはしないし……、なにより俺がいた時代は既に退院している。



俺はそういう結果を知っているからここでただ無性に医師から峠を越したという報告を待つより、生産的な行動を選択しただけである。



呆然とする母親をよそに待ち合わせ場所にルンルンと向かっていった。



待ち合わせ場所はファミレス……。


元カノ……。


確か名前は……、工藤早紀さん……。


学生の頃から付き合いだ。



「お待たせ〜」



「ごめんね、呼びだして」



「いいよ……、何?」



「この前の事なんだけど……」



この前?


なんだっけ?



「……うん」


無難な返事。


覚えてないなんて地雷を踏むような事は言わない。


慎重に……っと。



「緒方くんからしたら……、面白く無い話だよね。 私も緒方くんの気持ちも考えず軽率だった……。 反省しています」

ペコリと、早紀さんは頭を下げた。


かわいいなぁ〜……。


じゃなくて!


なんのことだ……。


思い出せ、思い出せ……。



…………。


ああ!


思い出した。

早紀さんがこの前、違う男と歩いていた所を友人が目撃して……、その友人が事もあろうにボクに告げ口をしてきたんだっけ……。



で、一方的に俺がぶち切れて、今に至るというわけだ。


結局、俺らは別れて……早紀さんは傷心のまま何故かその友人と付き合い、結婚したって風の噂で聞いたんだ。



今思えば……、友人に嵌められた形になるのかな……。


親父の事が重なっていただけに、結構重要な分岐じゃないか……。


やり直せるっていいな。


「いや……。 結局その男と早紀さんはどんな関係なの?」



「…………弟なの」



「…………………」


そういうオチかい。



よく考えたら早紀さんの弁明聞きもしなかったな。



「弟だったんか……。 言ってくれれば……」



「え、 メールで送ったよ? 話聞いてくれなかったから……」


そういえば読まずに削除したんだった。



馬鹿だね、俺……。



ピリリリリ、ピリリリリ……。


着信

「母」



……………。


峠を越した旨の連絡だろう。


だから言ったじゃないか、助かるって……。



「誰?」


「お袋から……。 出るね」


「うん」




「はい」



「………………」



「もしもし?」



「父さんが……」



「ん?」


峠越したんだろ?



「父さんがたった今……………………」



「え?」



「…………………」



プツ


ツー、ツー、ツー、ツー……。



「ちょ、母さん?」



「ど、どうしたの?」



「え? ……あ、いや……。 うん」



父さんがたった今、亡くなったわ……。

この親不孝者……。


聞き間違いかと思った。


死んだ?


父さんが?



なんで?



事故で……。


え……。


でも……。


助かったじゃないか……。


俺のいた時代では……。


医師に峠を越したって……。



なんでこっちでは死んじゃった?



そんな……。



馬鹿な………。


馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な………。



俺、最大級の親不孝者?


そんな………。


だって俺が来た時代では生きているんだぜ?



そう……。


これは何かの間違い。


そうだよ……。


間違いだ。


だって俺……。


未来から来たんだ。



だから今から起こる未来の事を知ってる……。


峠を越すのが未来の進路だろ。


なんで死んでるんだよ。


「どうしたの?」



我に帰ったのは早紀さんの声が聞こえてだった。



「親父が……たったいま……死んだって……」


それを聞いていた早紀さんは目をパチクリとさせる。



「早く病院に行きなよ」


「あ、うん……。 ごめんね……」



俺はそう言って、勘定分のお金をテーブルに置き、席を立った。



そのままタクシーを拾い、鈴木総合病院に向かう。


いつまでたっても母親から投げ掛けられた

「親不孝者」の言葉が耳から離れなかった。



ふと、事故の後……




父親の見舞いに行った時、父親から聞いた話を今頃思い出していた……。


気が狂うほど自分の身を案じている母親。

それを宥める息子……。


父さん、それ見てこんな所で死ぬわけにはいかないって……。



そう言っていた。


その時は、何言っているんだかとか思っていて取り合わなかった。



でも、本当に俺や母さんを見ていたとしたら?



病院につき、慌てて俺は中に入る。



俺が着たのを気付いた母は第一声。


「この親不孝者!親不孝者親不孝者親不孝者親不孝者親不孝者親不孝者!」



と狂ったように俺を非難する。


それを見た看護士さんが母親を宥めていた。




それからというもの……、家族はぐちゃぐちゃだった。



連絡を受け、仕事で県外にいた兄は帰省の電車の中で父の死を俺から告げられた。


その後、母から俺の取った行動を兄に告げられ、兄から呆れられて……。


母は母であんたの事絶対許さないと……


こうして俺は家族と疎遠になった。



こんな結末……、こんな結末を体験するために俺は時代を遡ってきたんじゃない。



ふと気付く……。


机に選択紙がある。


俺は迷わず、書き込んでいた。



やがて、また携帯の音で目が覚める。


着信

「母」



戻って来れた……。



すぐ電話を取る。


内容は一緒……。


俺は、すぐ病院に向かった。



「父さんは!?」



病院に着き、母さんの顔を見た。



「まだ、何も……。 ああ……どうしてこんな事に……」



結局、1番最初にいた時代と同じ時を刻んだだけだった。



何も変わらない。


時代を遡っても意味がなかった。



ただ同じ時を2回繰り返しただけ……。



無駄なことをしてしまった。



やがて最後の一枚の選択紙に気付く。



よく考えよう。


どこの分岐に戻れば……ハッピーエンドか。



俺は選択紙にある分岐書き込んだ。




FIN

まあ、なんといいますか……。

緒方さんのその後は読者様のご想像にお任せいたします。

決して飽きたから書かない訳ではないですよ。


提督立志伝生き抜きシリーズのミステリーのつもりで書いていたんですがなんか藤子A先生の笑うなんちゃらみたくなってきてしまってるのはきっとキノセイでしょう……。


ごめんなさい。若干インスファイヤされております。


感想いただけましたら幸いです。


このシリーズ、続き書くかどうかは反響次第です(汗)


え?いらない?


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― 新着の感想 ―
[一言]  どうも、アルルです。これは、以前の”リアル恋愛攻略本”よりは、多少、評価が難しいかなぁ、と思います。時空間を超えるのは、色々と制約上の問題が生じて来る為、正直ちょっと苦しいかな、と。然し、…
[一言] 選択紙、とはお上手ですね。 最近プレイした「428」や、「かまいたちの夜」といったゲームを思い出しました。 展開はスピーディーで、飽きる暇を与えてくれませんでした。 動作や心理の描写が少ない…
[一言] はじめまして。旅がらすと申します。 先日は評価をありがとうございました。とても良い励みになります(笑) こちらの感想ですが、タイトルが良いな。と思いました。読む前から、かなり内容が気になり…
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