◇松平家鉄砲組に配属された<鉄砲>初心者の俺
松平家鉄砲組とは何か
もう少し調べなければ
―馬鹿なのか
冗談で友達にアホやらハゲやら馬鹿やら言ってきたが、マジで馬鹿だと思ったのは初めてだった。
しばらくして、ちょんまげ頭の殿様みたいな人が奥から表れた。
他の人とは違う濃い緑の服を羽織その両肩には見たことがない紋章が描かれていた。
髭は少なく、目はきつい。その目には何か分からないが暗く、悪いものが渦巻いているように見えた。
「えー、では会議を始めたいと思う」
じじいみたいな声で開催の挨拶をした。パット見はじじいに見えないが。
「ここには私の名が分からん輩もおるじゃろう。ワシは結城秀康じゃ。この藩の藩主をしておる」
結城秀康?誰だそれ?
「あ~あ、有名じゃない人が俺の上司か…」
と誰にも聞かれぬよう嘆く俺。
「結城」といえば、あの人しか思い浮かばない。分かる人もいるだろうがそこには触れないでおこう…うん…
「今日、集まってもらったのは他でもない。そこにいる西尾から報告があるそうじゃ」
「うげぇぇぇぇぇぇ!!」
思わず、吐いた感じの声を出してしまった。皆が俺を冷たい目で見る。
「す、すいません…でした」
「ったく、本当ぶん殴られっぞ!!」
と切れる藩主。
「ヤンキーかあんたは!!恐えーよ」とツッコム俺。
てか何「ぶん殴られっぞ」って。現代人…嫌未来人かあんたは!!しかも、「ぶん殴る」じゃなくて「ぶん殴られっぞ」なの!?誰に!?
―おぉ、沢山ツッコンだなと感心し、だが言えない俺に少しだけ無力感を覚えた。まあ仕方ないが。
「まあ、良い。で何じゃ西尾」
すると西尾さんは立ち上がり、結城様?の隣へと向かった。
どうせ行かないだろ、俺が行く必要無いし、さっき起こられたし、まずこの時代の人間じゃ無いし、等と考えていた矢先に連れて行かれるというフラグが立ったが、俺のフラグは外れた。
立ち上がった西尾さんは何とか石とか全兵力とかを長々とその場で話始めた。
ようやく、「最後に」の一言が西尾さんの口から出た時は
「やっと終わった~。早く竹姫に会いたいな~」
等と妄想したが、そこに達するまで最後の試練があった。「最後にここにいる『安藤竜也』について話したいと思う」
今度は「はいっ?」と聞き返そうとする俺の脳みそを抑え、なるべく済まし顔で立った。足は震えていたが。
「こ奴は、山城から来た輩だそうだ。刀の使い方は剣先が見えぬ程早く、銃は50m先の的にも当てる。おまけに頭も良く、色男。正に鉄砲組に丁度よいではないか」
何か、かなり盛ってね?てか鉄砲組って何?そんな物騒組に良いの?マジでない!!てか…そもそも何で俺はここに居るんだ!?
―ツッコミご苦労様ですと自分を称えた俺。
すると西尾の言葉を聞いた藩主の結城さんは
「ふうむ…」
と唸り、家来は事の成り行きを静かに聞いていた。
そして…
長い、気まずい静けさ。
つまらないギャグでクラスが白けたようだ。
その沈黙を打ち破ったのはやはり藩主様だった。
「よし、分かったわい。こ奴を松平家鉄砲組に入ることを命ずる。名はこれより『望月宇右衛門』とする!!」
「はぁ」としか言いようが無かった。
そして、過去に来て1日目の俺を鉄砲組?に推薦する西尾と、快く承諾した藩主に本当の意味で「馬鹿」だと思った。
主人公の名前が変わった